(特集「20世紀の建築防災-災害と技術(5)」)

月刊「建築防災」
No.262 1999/11月号(特集「20世紀の建築防災-災害と技術(5)」)

◆ 防災随想 火災への備え/折原武男(東京消防庁予防部)(1ページ)

◆ 特集「20世紀の建築防災-災害と技術(5)」

◇ 空襲火災/長谷見雄二(早稲田大学教授)(6ページ)
 本稿では、空襲火災の実態そのものの理解というよりは、来るべき21世紀の火災安全研究や対策のあり方がどのようであるべきかを考えるという関心から、現代の防火対策や研究体制を方向づけた要因としての空襲を見なおしてみたい。誤解を招かないように断っておくが、ここで空襲を相対化すべきだと述べているのは、空襲という経験を忘れようということではない。そうではなく、空襲から半世紀以上を経てその経験者が高齢化し減少して核家族で育った若い世代にはその記憶が継承されにくくなっている今日、火災安全の分野で将来に向けた研究や技術開発などの方向を見誤らないためには、意識の下に潜んでしまっている空襲の影響をもう一回意識の上に浮上させて、その影響は一体どのようなものであるのかを分析する必要があるということである。

 水防及び震災対策としての墨田区の雨水利用/村瀬誠(墨田区環境保全課)(6ページ)
 平成12年7月21日、新宿区のマンションにおいて、都市型洪水で地下倉庫が水没し、様子を見にエレベーターで地下に降りた住人が水死するという痛ましい自己が起きた。これより、約3週間程前の6月29日にも、福岡市内、博多駅東の地下ビル街において、都市型洪水によって地下街が水没し、一人の女性が逃げ遅れて、水死するという信じられない事故が起きた。

◇ 集合住宅と調整池の重ね合わせによる水防対策/渡辺直幸(都市基盤整備公団)(7ページ)
 国土の多くが山地である我が国は、資産・人口の多くが沖積平野に集中している。それ故、良好な都市を形成する上で、川を治めること(治水)は必須条件の一つであった。
 高度成長以前は都市近郊においても雑木林、田畑が数多く存在していた。これらは自然のダムとして降雨水の河川への流出をコントロールしてきた。しかし、高度成長による都市化の進展により、従前は雑木林等であった場所も、アスファルトやコンクリートで覆われてしまい、地表面の保水・遊水能力は著しく低下し、一方で流出量は増加することとなった。
 また、都市化の進展は河川改修をより一層困難にし、各地で集中豪雨等による被害を増加させることとなった。都市部での地価は一時期に比べかなり落ちてきたとはいえ、現在でも道路、河川等公共事業の単独での用地確保は困難であり、他事業と連携した用地の立体的・複合的活用が必要となっている。実際に事業主体相互の利害が一致しやすい事業では、土地の複合利用を図った事例を多く見かけるようになった。
 本稿では、この様な事業の先駆けとして、河川事業、公園事業及び住宅建設事業が一体となり、都市部における水防対策と住宅建設等行った(多目的遊水地事業を活用し、調節池(河川区域)内に日本で初めて建設された集合住宅)「哲学堂公園ハイツ」のプロジェクトを紹介し、住宅建設側からの視点も合めて様々な角度から検証を行うものである。

◇ 情報通信系建物における水防対策/佐藤紀男(NTT建築総合研究所)(5ページ)
 近年、水害の被害額が増加傾向を示している。 その背景としては、単に社会資本が増加したというばかりではなく、災害に対して気弱な土地条件の場所での都市化等の進展により、水害を受ける構造物や施設が増大していることがあげられる。従来から、河川氾濫を防止するための堤防強化、河川幅員の拡大などにより、水害を減少させるための措置が取られてきたが、地表面は土からアスファルト、コンクリートなどに変わり、地中浸透率が低下したため、雨水等は地表面を流下したり滞留しやすくなっている。また、山地では森林の伐採や切土等で水の浸透性が低下し、吸収されない雨水が都市部に流れ込むと共に、2次災害も以前より増加傾向にある。 この傾向が続く限り、洪水等の規模はさほど大きくなくとも、被害そのものは増加し続けることが十分予測できる。情報通信をはじめとするライフラインに被害を与えた場合は、我が国の社会・経済基盤を脅かすこととなるので、その保全は今や国家的な課題ともなっている。 また、ライフラインの多くが地下施設であることを考えると水害対策が防災の根幹をなすものとして、その重要性は大きくクローズアップされてきている。 以下に、NTTにおける水防対策などについて紹介する。

◆耐震診断・改修コーナー
◇解体予定校舎を使った現場実験/近藤龍哉、周建東、広沢雅也(工学院大学)(8ページ) 埼玉県浦和市に在った取り壊される学校校舎を使って、柱や柱梁接合部の捩りせん断による破壊実験を行った。1995年兵庫県南部地震では柱梁接合部に生じたせん断破壊が原因となってかなりのRC造、SRC造中高層建物が取り壊された。この接合部のせん断破壊に対して柱と梁の偏心接合の影響が大きいことが指摘され、またそれと同時に柱と梁の偏心接合は柱の捩り破壊をもたらすことが兵庫県南部地震や1997年の鹿児島県北西部地震による地震被害などにより示されている。今回の実大破壊実験はこれらの検証に役立てるために行ったもので、実建物で行ったのは捩り応力を拘束する床スラブの存在やコンクリートの引張り抵抗が影響する破壊モードの検討には実大寸法が望ましいことなどの長所を考慮したものである。実験の結果、捩りモーメントの作用により、柱や柱梁接合部のせん断耐力が著しく低下すると共に、耐力時の限界変形も非常に小さいことが確認された。 既存建物や新築建物では梁を柱の一方の面に一致させその結果、柱と梁の軸心がずれている設計例が非常に多いことが明らかにされている。このように、柱と梁が偏心接合されている既存建物の耐震診断や新築建物の耐震設計にはその影響を考慮しなければならない。

◆建築防火材料コーナー
◇塗料/中尾義一((社)日本塗料工業会)(4ページ)
 建設省認定防火材料として認定されている塗料は現在基材同等第0001号のみで、製造会社29社、11品目、273商品(平成11年3月末現在)あり個別認定商品はない。
これらの認定塗料は建築基準法で定めた箇所に使用した同法規定の不燃材料及び準不燃材料等の基材に表面仕上げとして塗装されたとき、各々の基材と同等の防火材料として認められるものである。 この条件は法令等に準拠し、建築物の内部に使用する場合に適用される。

◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
◇(財)長野県建築住宅センター/畔上栄一(5ページ)
当法人は、定期報告制度の正しい知識の普及とその事務を担う目的で昭和47年6月「(財)長野県建築安全協会」として設立されました。全国に先駆けての設立で、中央機関もなく調査検査料金の基準も示されていない状況での旗揚げでありました。その後、住宅性能保証制度の受託を初め、多様化する県住宅行政の付託に応えるため、安全対策、建築物等の研究啓発、住宅対策、住情報の提供、街づくり対策の各事業を取り入れ「(財)長野県建築住宅センター」に改組して今日に至っております。また、平成12年度から指定確認検査機関としての業務が開始できるよう準備を進めており、さらに、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく指定住宅性能評価機関の立ち上げを控え、当法人組織の一層の充実が急がれております。


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