(特集「20世紀の建築防災-災害と技術(4)」)

月刊「建築防災」

No.261 1999/10月号(特集「20世紀の建築防災-災害と技術(4)」)

◆ 防災随想 耐震補強を建築的に/浅野美次((株)日建設計)(1ページ)

◆ 特集「20世紀の建築防災-災害と技術(4)」

◇ 大規模木造建築の火災/長谷見雄二(早稲田大学教授)(9ページ)
  -風化する大規模木造建築火災の記憶-
   木造建築は、建築基準法で延べ床面積が最大3000㎡に制限されたうえ、地域や用途によっては更に厳しい条件が求められている。木造建築には  規模以外にも種々の規制が設けられているが、その背景には、建築基準法が施行された1950年当時、漸く復興が軌道に乗り始めていた空襲の惨  
禍や頻発が続いていた都市火災・大規模木造建築の火災などがあったものと思われる。起こったのが戦争中だったためか余り知られていないが、日
本近代で単体の建物火災としては最大の205人の犠牲者を出した北海道倶知安町布袋座(映画館)火災が起こったのは基準法制定の僅か7年前の
1943年のことだったのである。
   建築基準法が施行されてほぼ半世紀の今日では、基準法制定前に建てられた大規模木造建築の多くは姿を消し、法令上、木造で可能な範囲であっ  ても、大規模建築物は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造とするのが常套化している。このため、大規模木造建築で本格的な火災が起きるのは今日では稀  になっているばかりでなく、かつて多発した大規模木造建築の火災も忘れられつつあるようである。しかし、建築基準法制定後に限っても、多数の犠牲  者を出した聖母の園養老院火災(1955年、死者99人)や有馬温泉池之坊満月城火災(1968年、死者30人)などは一面では大規模木造建築火災  だったのだし、新潟大火(1955)や瀬戸内大火(1958)、酒田大火(1976)が木造大規模建築の火災で始まっているように、大規模木造建築の火  災が市街地大火に発展する重要な要因となった事例も少なくない。
  ところで、1998年から2000年にかけて建築基準法の性能規定化に向けた法令改正が進められているが、準耐火建築物を含む一般木造建築の   規模制限はそのまま残されている。木造建築の防火規制は、1980年代後期以来、綬和が続けられてきたが、その基本的な考え方は、木造の火災   性状が耐火構造のそれに近づくようにすることであったのだから、こうした法令の動向を前に、大規模木造建築と鉄筋コンクリート建築との間で、火災   危険の様態において本質的にどのような違いがあるのかが、あらためて関心を集めたりしている。木造建築の規模制限を巡る議論には、1970年代後  期以降の木造建築の防火対策技術の研究開発に裏付けられたどちらかといえば工学技術的規制綬和論と、過去の木造建築火災や大火の経験を背  景とする緩和慎重論の2つの立場があるように考えられるが、大規模建築火災の経験の方は、今日的な視点から見直される機会が乏しいまま、上述  のように風化し始めているきらいがある。しかし、現実の火災を見ると、思いもよらない経過で出火したり火災拡大して著しい被害に結びついている場   合が少なくない。このような要素は、当面、工学技術で十分に予測することができず、事例の分析が最も有効な対策を誘導すると思われる。本稿で    は、木造建築の防火対策を、事例から考察する手掛かりとして、主として昭和初期から1970年代に絞って、大規模木造建築火災の事例を取り上げ、  大規模木造建築の火災の特質を考察してみたい。

◇伊勢湾台風の被害とその残したもの/牧野稔(東和大学教授)(6ページ)
 昭和34年(1959年)9月26日夕刻、潮岬付近に上陸した台風15号は、稀にみる発達したもので、全国的に被害をもたらしたが、特に伊勢湾を中心
とする高潮の被害は著しく、名古屋市周辺で1881名の命を奪い、伊勢湾台風と呼ばれることになった。
大きい被害を招いた要因は、名古屋港の後背地となった旧干拓地が市街地化していくとき、国土計画・都市計画に防災の視点からの働きかけがな
く、無秩序に行われたことにある。これに懲りて、名古屋市は高潮被災地を災害危険地区に指定して、再び惨禍を招かないように工夫をした。しかし、い わゆるゼロメートル地帯として、高潮に対して本質的に脆弱点を有する地域が、東京湾岸をはじめ、依然残されていることも事実である。その後、気象衛 星の進歩はめざましく、予警報も改善され、防潮堤の構築も進められて、防災力は強化されてきているが、昭和36年の第2室戸台風以来、いわゆる超大 型の強烈な台風の来襲がなく、やや静穏な台風の時期が長く続いている。この傾向が今後も続くものとして、油断をしていると、大都市の脆弱点への関 心が薄れているので、再び目を覆う惨禍を招くのではと恐れる。伊勢湾台風の悲劇は、長く記憶されるべきであろう。

◇長崎屋尼崎店火災/室崎益輝(神戸大学都市安全研究センター教授)(5ページ)
 平成2年3月に尼崎市で発生した「長崎屋火災」は、法規に従うだけでは十分な安全性が得られないことを教えるとともに、初期対応のあり方、考察  点検のあり方、維持管理のあり方、原因調査のあり方など、防災におけるソフトを原点から問い直すものであった。そこで本稿では、改めて長崎屋火災  の投げ掛けた問題点を探るとともに、その教訓がいかに生かされているかについて考察する。

◇福井地震とその被害/坂本功(東京大学教授)(5ページ)
  阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震が発生した直後、その犠牲者の数が、福井地震の約3千900人を越えるまでは、マスコミの報道で 
も、この福井地震とその被害がしばしば引き合いに出されていた。しかし、その数が逆転したあとは、福井地震のことは、ほとんど話題にされなくなっ
た。
しかし、この福井地震は、64年間にわたる昭和の間に起きた地震としては、最も多数の犠牲者を出した地震である。昨年は、この福井地震からちょう ど50年すなわち半世紀が経ったということで、福井市で「世界震災都市会議」が開かれた。本稿では、20世紀のまさにほぼ真ん中で起こったこの地震 と震災について、当時の報告書(1)などを手がかりとして、解説することにしたい。

◆耐震診断・改修コーナー
「連続繊維補強材を用いた鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計・施工指針」のとりまとめについて/松崎育宏(東京理科大学教授)(4ページ)
 本指針では、炭素繊維やアラミド繊維等を材料とした連続繊維シートを、エポキシ樹脂等の含浸樹脂により鉄筋コンクリート部材あるいは鉄骨鉄筋コン 
クリート部材の表面に貼り付けることにより、部材を補強する工法についてまとめている。特に、既存の鉄筋コンクリート造および鉄骨鉄筋コンクリート造 独立柱を連続繊維補強材で閉鎖型に巻き付ける工法については改修設計・施工の方法を示し、既存建築物の耐震改修にあたっての新たな補強工法と して利用できるようにしている。また、袖壁・腰壁等が付いた柱や耐震壁等といった部材についての連続繊維補強材による補強については、これまでの 研究成果を踏まえ、設計・施工にあたっての基本的技術と留意すべき事項をまとめている。また、本工法においては施工が重要であるとし、実用にあた っての施工指針が詳細にまとめられている。さらに、工法の理解のために、関連技術および施工例が示されている。

◆建築防火材料コーナー
◇木片セメント板/富永勝美(日本木片セメント板協会)(5ページ)
  木片セメント板は、比較的短い木片を薬品処理し、セメントと混合したのち圧縮成型したものであり、製品のかさ比重により普通木片セメント板と硬質 
木片セメント板に区分される。
  木片セメント板は、いずれも準不燃材料(普通木片セメント板:準不燃第2011号、硬質木片セメント板:準不燃第2012号)であり、構成材料のセメン  ト/木片比は、2.5~3.5の範囲にある。
  なお、平成10年11月20日付で従来のJIS A 5417「木片セメント板」とJIS A 5404「木毛セメント板」が新たにJIS A 5404「木質系セメン  ト板」に統合された。

◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
◇(財)新潟県建築住宅センター(6ページ)
 新潟県と言うと、皆さんはすぐ雪国をイメージされることと思います。確かに山間地は豪雪地もありますが、当センターは県都新潟市にあり雪の少ない 
街です。新潟県のご指導もとで、建築物等の安全性の確保と防災対策に関わる諸施策の推進、適正な維持管理の重要性についての啓発活動を行うこ 
とを目的として、昭和49年8月24日付で県知事の許可を受けて、財団法人新潟県建築防災センターとして発足しました。
 主要業務は、建築基準法第12条の規定による定期報告制度の推進と定着を図ることであり、発足と同時にその業務を開始しました。
 毎年続けている事業内容は次のとおりです。
  ①建築防災に関連する指導啓発活動
  ②建築基準法第12条の規定に基づく定期調査・検査報告制度の推進
  ③建築物等の所有者又は管理者に対する定期調査・検査報告に基づく防災指導
  ④建築物等の定期調査・検査資格者の指導育成
  ⑤関係行政庁及び関係団体との連絡調整

◆協会だより
◇建築物等の防災技術評価事業における評価終了技術/(財)日本建築防災協会(4ページ)
   ・「エスカレーターを車椅子利用者の火災時避難経路とする技術」
   ・「シミズCBS工法」
   ・「摩擦制御型PCaPC造耐震ブレース(PCaブレース)による耐震補強工法」
   ・「TYFO工法(GFRPによる既存鉄筋コンクリート柱の耐震補強工法)」
   ・「プレキャスト増設壁工法(PCa増設壁工法)」
   ・「かみ合わせ鋼板巻き工法」
   ・「鉄骨ブレース接着工法」
   ・「炭素繊維貼付による既存梁部材のせん断補強(CRS-BM工法)設計施工指針」
   ・「アクリペアシステム(CFRPによる既存鉄筋コンクリート造柱及び鉄骨鉄筋コンクリート造柱の耐震補強工法)」
   ・「CRS-CL工法(CFRP巻き付けによる既存鉄筋コンクリート柱の耐震補強工法)」(一部変更)


その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
mail:kenbokyo@kenchiku-bosai.or.jp

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