(特集「20世紀の建築防災-災害と技術(2)」)

月刊「建築防災」

No.258 1999/8月号(特集「20世紀の建築防災-災害と技術(2)」)

◆ 防災随想 地震災害と戦争のアナロジー/辻英一(1ページ)

◆ 特集「20世紀の建築防災-災害と技術(2)」

 ◇ デパート火災の変遷/吉田克之(12ページ)
  わが国には百貨店、スーパーマーケット、連続式店舗、専門店街、ショッピングセンター、ディスカウントストア、コンビニエンスストアなど実に多様な呼び名の物販店舗がある。これらの呼称は建物の規模や販売形式によって使い分けられているが、かならずしも同じ切り口で分類されてはいないようだ。中には百貨店のように「物品販売業(物品加工修理業を含む。)であって、これを営むための店舗のうちに、同一の店舗で床面積の合計が1,500平方メートル(都の特別区及び地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市の区域内においては、3,000平方メートル)以上のものを含むものをいう。」(百貨店法より)と定められているものもある。これについてはさらに日本百貨店協会が「百貨店」のことを「百貨店業」を営む業者で、「日本百貨店協会の理事会において入会を承認したものである」としている。とはいうものの、実際にはこういった定義とは無関係に名乗っている「自称百貨店」などもあるのだろう。
 これら個々の呼称や定義はともかくとして、火災事例を取り上げて歴史を振り返ったり、その実態を分析するときには百貨店でも専門店街でも、あるいはスーパーでもコンビニでも変わりはない。この記事の題を「百貨店火災の…」とせずにあいまいな「デパート火災の…」としたのは、法律や販売形式にこだわらずに「百貨店的」なすべての建物の火災を対象としたかったからである。

 ◇白木屋の火災/高野公男(10ページ)
  昭和7年、東京・日本橋、百貨店白木屋で発生した火災は、東京市民を震駿させ、我が国の火災史上初めての高層建築火災、また社会史にも残る今世紀最大級の災害となった。1995年に出版された小松左京・堺屋太一監修『増補版・20世紀全記録(クロニック)』(講談社)の1932年12月の項には、<客席6200、超ビッグな劇場・ニューヨークの「ラジオシテイ」誕生〉の記事とともに、この白木屋の火災が次のように大きく取り上げられている。
<白木屋、全焼、7階建ての高層建築に放水とどかず>
「12.16午前9時すぎ、帝都五大百貨店のひとつ、東京・日本橋の白木屋呉服店4階の玩具売場から火災が発生、火は3時間にわたって燃え続け、3982坪を全焼、死者14人、重傷者百十数人を出す惨事となった。出火原因は装飾用豆電球のスパークで、警視庁でははしご車3台、ポンプ車3台を動員して消火に努めたが、7階建ての高層建築のため放水がとどかず、困難を極めた。正午過ぎにはようやく鎮火したが、4階以上はほほ全焼、被害総
額は700万円にのぼる。なお、すそを気にして逃げおくれた女性が出たことから、女性のズロース着用が普及することになる。」
白木屋火災は多くの教訓、エピソードを残し、その後の高層建築防災のエポックとなった火災である。この火災を再現し、その経緯や教訓、その後の対応等を検証してみることは、今日の建築防災を考える上でも有意義なことと考えられる。なお、白木屋火災については多くの資料が残されている。当時の報道記事のほか、建築分野では日本建築学会が火災後の調査をもとに『建築雑誌』昭和8年3月号に「白木屋百貨店の火災」としてまとめたものをはじめ、各種の調査・研究論考などがある。また、束京消防庁が昭和55年に編纂した『東京の消防百年の歩』でも、多くのぺージを割きその概要を解説している。本稿では、これらの資料を援用し白木屋火災の再現を試みるとともに、この火災の現代的な意義について考察を加えるものである。

 ◇東京都における防災都市づくりの軌跡と系譜-江東防災拠点を中心にして-/江平昭夫(6ページ)
平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は約6,400名近くの方々が亡くなるという近年にない悲惨な都市災害となりました(死者数は8年12月25日現在)。災害に脆弱な木造住宅市街地を広範囲に抱える東京都は従来から災害に強い都市づくりを目指して様々な施策を講じてきました。
本稿は、東京都における防災面から見た都市計画の歩みを概観するとともに、その中で都民の関心を集めた江東再開発構想とその具体的なケースとして白髭東地区防災市街地再開発事業の概要を紹介し、さらに現在東京都が取り組んでいる防災都市づくりについて記述してみたいと思います。

 ◇ 文化財建造物の防災100年/清水真一(6ページ)
文化財保護の歴史は、明治30年(1897)の古社寺保存法の制定以来一世紀を迎えた。この間、数多くの文化財建造物が火災、風水、地震等の災害を被り、致命的なダメージを受けたものも少なくない。
世代を越えて伝えるべき文化財建造物にとって、災害は繰り返しやってくる存在であり、災害から学びながらその都度防災対策の充実が図られてきた。国指定建造物の代表的な災害例を取り上げながら、文化財保護行政における防災100年の歩みを振り返ってみる。

◆ 建築防火材料コーナー

 ◇ デッキプレートとコンクリートとの合成スラブ/合成スラブ工業会(7ページ)
「デッキプレートとコンクリートとの合成スラブ」は、特殊な形状やエンボス(突起)等の合成機構を有したデッキプレートが、コンクリートと一体となっていわば引張鉄筋の働きをするため鉄筋が不要で、優れた耐力を発揮する床構法です。デッキプレートがコンクリート打込み時には型枠としての役割を果たし、通常は型枠支保工無しで施工し、工事の合理化、工期短縮、木材資源の節約にも寄与する合理的、経済的な建築の床構法です。
合成スラブは、耐火被覆のいらない合成スラブ構造として、1986(昭和61)年建設大臣の通則的耐火構造の指定を受けて以来、その優れた特長が評価され、現在では、鉄骨造の床工法の定番として、超高層を含めて大小規模を問わず広範な用途の、主として鉄骨造の建築物で採用されています。最近では、RC・SRC造の建物にも数多く使用されてきています。

◆ 定期調査報告関係地域法人紹介コーナー

 ◇ (財)宮崎県建築住宅センター(4ページ)
当センターは、県民に対する建築・住宅に関する知識の普及、及び建築に従事する技術者に対し技術情報の提供を行うとともに、公共住の管理その他建築・住宅に関する業務を推進することにより、県民の福祉の向上に寄与することを目的として設立されました。
設立から25周年を迎えましたが、その間、業務範囲も拡大し、業務内容も多様化してまいりました。更に、今回の建築基準法改正に伴う制度導入など新しい要求に応えられるよう、将来に向けての組織及び業務の充実を図りたいと考えています。


その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
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