特集「平成23年東北地方太平洋沖地震報告」

月刊「建築防災」
No. 404 2011/10月号
特集「平成23年東北地方太平洋沖地震報告」
※執筆者名の後の( )内の数字はその記事のページ数を表す。
◆防災随想
◇「耐震安全性」を考える/森高 英夫(株式会社安井建築設計事務所構造部)(1ページ)

 筆者は1995年の阪神淡路大震災を経験し、構造設計者として様々な教訓を得た。特に「耐震安全性とは何か」ということに深く考えさせられた。というのも、震災直後、筆者が担当した集合住宅の住民の方々と対話して、耐震設計の基本方針である“大地震時に構造体が損傷しても崩壊しなければよし”とする人命確保の基準だけでは成熟した現代社会のニーズに応えられないと強く感じたからであった1)。建物の被害を最小限に抑えて、震災直後からの生活や事業を維持・継続したり、個人や社会の資産を守ったりすることも重要であり、社会的な議論を通じて「耐震安全性」の中身を詳細に設定していく必要があると思った。
 
◆特集「平成23年東北地方太平洋沖地震報告」
◇ 東日本大震災の被害概要 ― 東北地方の被害 ―/田中 礼治(東北工業大学ライフデザイン学部安心安全生活デザイン学科客員教授)(12ページ)

 2011年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震は東北地方をはじめ、多くの地域に多大な被害をもたらした。亡くなられた方々の御冥福ならびに被害を受けた皆さんの早急な復興をお祈り申し上げる。東北地方太平洋沖地震は東北地方の青森県、岩手県、宮城県、福島県に多大な被害をおよぼした。今回の地震被害の特徴は地震動被害と津波被害の2種からなることである。この地震による津波は、869年の貞観地震(じょうがんじしん)の津波と同程度の大きさであると言われている。何と、約1140年ぶりの大津波ということになる。貞観地震の記録は少なく、現在生きている我々にとっては、まさに未知の世界が現実化したことになる。現状の被害と貞観地震のそれと比べてもあまり意味がない。その理由は、1140年間永々と積み重ねて来た我が国の歴史が問われているからに他ならない。今回の国難的現象をいかに克服し復興するかは、まず我が国の技術的歴史の反省から入るのが妥当である。地震後、このような反省なく前向きな復興計画だけが多く走り始めている。いかがなものかと思わざるを得ない。砂上の楼閣的計画は、これからの1000年に禍根を残すことになるのではないかと心配だ。地震後、相当な日数が経つ。ここでもう一度地震を振り返り、落ち着いてこれからの1000年を考えてみようではないか。表1は5月7日現在の死者数、行方不明者数である。宮城県が最も多く、岩手県と続く。死者数・行方不明者数が多い理由は、津波である。写真1は仙台市荒浜地区での津波前後の状況を示したものである。津波後はほとんど残っていない。死者数・行方不明者数が多くなった原因が分かる。写真1を見ると何も残っていないように見えるが、写真1を詳細に見てみると鉄筋コンクリートの建物はしっかりと残っている。貞観地震の時には見られなかったこの事実こそが歴史の蓄積を物語っている。今回の大災害を見て、自信を失いかけている多くの方々がいるかもしれない。また、これから何を信じて生きていけばいいのかと迷っている人もいるかもしれない。写真1はこのような方々に自信と方向性を与えてくれていると考えている。
 
◇東日本大震災における地震動と建物被害/源栄 正人(東北大学大学院教授)(6ページ)
 筆者は1995年の阪神淡路大震災を経験し、構造設計者として様々な教訓を得た。特に「耐震安全性とは何か」ということに深く考えさせられた。というのも、震災直後、筆者が担当した集合住宅の住民の方々と対話して、耐震設計の基本方針である“大地震時に構造体が損傷しても崩壊しなければよし”とする人命確保の基準だけでは成熟した現代社会のニーズに応えられないと強く感じたからであった1)。建物の被害を最小限に抑えて、震災直後からの生活や事業を維持・継続したり、個人や社会の資産を守ったりすることも重要であり、社会的な議論を通じて「耐震安全性」の中身を詳細に設定していく必要があると思った。
 
◇東北地方太平洋沖地震による液状化現象/若松 加寿江(関東学院大学工学部社会環境システム学科)(8ページ)
 東北地方太平洋沖地震では、地震直後、津波による被害および原子力発電所の被害が大きく報じられた。しかし、日時の経過と共に、液状化による被害が特に関東地方で深刻であることが明らかになってきた。そこで、本稿では、本地震による液状化の発生および被害の特徴を、これまでの地震による液状化と比較しながら報告する。
 
◇平成23年東北地方太平洋沖地震における非構造部材の被害について/名取 発(東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科准教授)(8ページ) 
 平成23年東北地方太平洋沖地震においては、東北地方を中心に津波による甚大な被害を受けたが、地震動そのものによって被害を受けた建物も東北から関東の広範囲に存在する。その中で、内外装材や開口部等の「非構造部材」についても、軽微な被害を含めると被害は広範囲に及んでいる。本稿は、3月11日の地震発生後、関東及び東北において行った非構造部材の被害調査と、3月15日に富士宮を震源として起こった地震の調査を元に、明らかとなった被害の傾向を紹介するものである。非構造部材の被害は、地震後数日以内に撤去や復旧が始まる事が多いため、地震直後に各地の被害を全て把握することは困難であった。従って、今回調査した一連の建物被害は、ある程度時間が経過したものが多く、撤去や復旧がはじまっていたため、正確な状況把握とはなっていないものもある。また、今回の地震は余震も多く、本震での破損なのか、その後の余震によるものなのかも、区別ができない場合が多いことをお断りしておく。  
 
◇東日本大震災における地震火災の特徴-未曾有の大震災における火災被害を俯瞰する-/関沢 愛(東京理科大学大学院教授)(7ページ)
 3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下では「東日本大震災」と称す)では、津波や原発による被害の想像を絶する凄まじさ、厳しさの陰に隠れてあまり目立たないかも知れないが、火災の面から見ても、大規模かつ広範囲の被害をもたらしている(写真1)。また、発生要因も大変多様であり、絶対的な尺度でみれば、今回の地震火災被害は、その規模と多様さからみて、阪神・淡路大震災に匹敵する規模と言ってよいだろう。これらの火災被害の調査と解明は喫緊の課題であり、また、それに基づく知見の今後の防災対策への反映は非常に重要な意味を持っている。  たとえば、震災当日、夜間のTV中継で航空自衛隊の上空撮影による気仙沼市の市街地火災映像が火災規模の広範囲さを示していたのは記憶に新しい。映像からは、気仙沼湾内の石油タンク等の破壊によると思われる漏洩油に何らかの原因により着火した数多くの火種状のものが岸壁沿いの家屋や山林に辿り着いて着火し、次々に集落内や市街地側へと延焼していた様子が伺われた。このほかにも、炎上する家屋や瓦礫が津波に流される様子や、船や車が延焼するというショッキングな映像も度々流された。海岸に面したコンビナート地域ではLPGガスタンクの炎上や石油精製施設での火災も生じている。さらに、このような津波に起因する火災だけでなく、震度5弱から5強を記録した東京においても、震災当日に32件の地震火災(通常火災とは区別されているもの)が発生しており、建物被害が少ない割には多くの従来型地震火災が発生していることも今回の地震の特徴である。そこで、本報告では東日本大震災における地震火災の全体像を把握するために、本地震で際立った特徴を示す「津波型火災」と従来からある「従来型火災」に分けてそれぞれについて注目すべき点について触れたいと思う。
 
 
◆行政ニュース
◇大規模地震に対応した消防用設備等のあり方に関する検討会報告書の概要(総務省消防庁予防課)(4ページ)

 
 
 
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