特集「建築物における日常災害」

月刊「建築防災」
No. 382 2009/11月号
特集「建築物における日常災害」
 
※執筆者名の後の( )内の数字はその記事のページ数を表す。
 
◆防災随想
◇2秒の決断/福林 徹((株)森村設計)(1ページ)

 
◆特集「建築物における日常災害」
◇日常災害による人命被害の実態-その歴史と現況/直井英雄(東京理科大学)(4ページ)

 日常災害に関する記事は、本誌にも過去何回かとりあげられているが、特集としてこのように大々的に扱われるのは久しぶりである。この特集のなかでの本稿の役目は、以下に述べられる対策技術各論に共通の背景となる実態を、総論として述べることにあると考える。そこで本稿では、過去の記事と若干重複することにはなるが、公的統計資料にもとづき、現在までの被害実態の推移を展望することとしたい。
 
◇居室・廊下・通路における日常災害と対策技術/横山 裕(東京工業大学)(6ページ)
 住居や事務所、学校、病院などの居室・廊下・通路における日常災害には様々なものがあるが、最も身近でかつ場合によっては死亡などの大きな被害につながりかねないものの1つとして、床ですべって(つっかかって)転倒し、頭部をはじめとする身体部位を床などにぶつけてしまうといった事故が挙げられる。このような事故の発生頻度や被害の大きさには、床のすべりや身体部位をぶつけた時のかたさなどが大きく影響する。もちろん、事故の多くはこれら建築側の要因だけが原因で発生するわけではないが、我々建築関係者は、事故の発生頻度や被害を少しでも小さくするために、その時々の最新の技術に基づいて、できる限り適度なすべりを有しかつ転倒して身体部位をぶつけても障害が発生しにくい床を設計、選択するよう、絶えず細心の注意を払う必要があろう。
 
◇暖かい浴室で入浴中の事故を防ぐ/小太刀一光(東京ガス(株)リビング企画部)(5ページ)
 厚生労働省の人口動態統計(2006年)によると、住宅内の不慮の事故死は年間に12,152人にのぼり、これは交通事故による死者数(6,352人 警察統計)の倍近くの数字になっている。また、家庭内事故死者数の3/4以上が65歳以上の高齢者で、今後、高齢化の進展に伴いこの数字はさらに増加していくことが予想される。(図1)
 
◇階段内における日常災害と対策技術/布田 健((独)建築研究所建築生産研究グループ)(5ページ)
 厚生労働省が出している人口動態統計をもとに死亡者の数から住宅・建築に関わる災害の現状を見ると、日本全体で大体年間9,000人程度が住宅・建築に関係して死亡しており、その約8割は日常災害である。日常災害とは、すべった、転んだ、落ちた、溺れたといった、いわゆる事故と呼ばれるものを言う。ここでは、設計要件が安全性に大きな影響を与える「階段」について取り上げ、その要因や対策等について、最近行われたいくつかの実験の紹介とともに説明する。
 
◇建具・ドアにおける日常災害と対策技術/田中眞二(積水ハウス(株)住生活研究所)(4ページ)
 建具・ドアは、日常頻繁に使用する部位であり、事故の発生する確率は高い。老化により身体機能が低下した高齢者のみならず、とりわけ幼児で問題になりやすい。本稿では、建具・ドアに関する幼児の事故実態について、一般に公開されているデータに基づいて概要を述べる。また、高齢者をも含めたいわゆるユニバーサルデザインとしての建具・ドアの設計寸法などについての基準を紹介し、最近提案されている製品などを取り上げて対策技術を紹介する。
 
◇バルコニー・柵における日常災害と対策技術/佐野友紀(早稲田大学人間科学学術院)(3ページ)
 バルコニーや窓などの開口部は建築内外の接続部であり、屋内から外部を体感するための重要な場所である。日常災害の観点からは2階以上の高所に設けられたバルコニーや柵のある窓などの開口部が、人間の墜落、落下物の面で問題となる。ここで「墜落」とは日常災害で用いられる用語で、人間が高い位置から落下することをいう。人間の墜落に関しては、窓などの開口部では床から窓枠下までの窓台の高さ、バルコニーや窓に設置された柵では床から柵の上端までの高さが問題となる。ここでは、人間の特性を考慮したバルコニー・柵における日常災害防止の考え方をまとめる。
 
◇人間の行動特性と日常災害/吉村英祐(大阪工業大学建築学科)(5ページ)
 2009年9月15日現在の日本の人口は、65歳以上の高齢者が前年より80万人増の2,898万人(男性1,239万人、女性1,659万人)、総人口に占める高齢者の割合が22.7%(男性19.9%、女性25.4%)、14歳以下が前年より15万人減の1,703万人と推計されている(2009年9月20日総務省発表)。また、2006年12月にハートビル法と交通バリアフリー法を統合したバリアフリー新法が施行されるなど、障がい者が社会で活躍するための面的な環境整備も進みつつある。
 
◇建物事故予防ナレッジベースについて/高見真二(国土技術政策総合研究所)、小野久美子(国土技術政策総合研究所)(4ページ)
 社会の高齢化を反映し、廊下で転ぶ、階段から転落するなど、日常生活における建物内での事故が多発している。統計から推計したところ、それらによる死者数は、今後交通事故の死者数にも匹敵していく結果が得られている。こうした事故は、利用者の不注意で生じるケースもあるものの、建物の設計・管理側の事故発生に対する認識不足による場合もあり、事例を分析すると、利用者、設計者、管理者それぞれが事故事例を通じて危険性を把握し、一定の配慮をすれば、多くの事故を予防できたと言える。
 
 
 

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