特集「途上国の庶民住宅に係る耐震性向上プロジェクト」

月刊「建築防災」
No. 380 2009/9月号
特集「途上国の庶民住宅に係る耐震性向上プロジェクト」
 
※執筆者名の後の( )内の数字はその記事のページ数を表す。
 
◆防災随想
◇偉人の業績/石川勇治((株)山下設計構造設計部)(1ページ)

 
◆特集「途上国の庶民住宅に係る耐震性向上プロジェクト」
◇開発途上国の庶民住宅の地震被害軽減のための国際共同研究(全体概要)/楢府龍雄((財)建築行政情報センター 建築行政研究所研究第1部長(元 建築研究所 国際協力審議役))、今井 弘(NPO法人SNS国際防災支援センター 理事(元 建築研究所 専門研究員))(8ページ)

 開発途上国では、大規模地震の度に甚大な被害を被ってきており、特に人的な被害が著しい。このことは、過去10年間の被害を示した図1(被害額)と図2(死者数)から明らかである。そしてその被害の主要な原因は、庶民住宅の倒壊である。
 
◇途上国支援と自分でやる防災/横井俊明((独)建築研究所 国際地震工学センター)(4ページ)
1.開発途上国への技術協力について
 これについては、例えば、人材育成に的を絞っても大まかに2つの方法が考えられます。一つは、まともに研究や教育のできない本国の劣悪な環境から潜在的に優秀な人材を日本なり欧米なりへ招聘して良好な環境で勉強して貰う方法です。内戦等で教育体制自体が崩壊しているような国々は別として優秀な人は全世界に居ますので、この方法は、学位取得者数とか帰国後指導者になった人数で見ると大きな実績を上げていると言えます。
 
◇実践的な耐震工法のための実験的研究/花里利一(三重大学工学部)、箕輪親宏(防災科学技術研究所)(6ページ)
 建築研究所が2006年度から2008年度まで実施したプロジェクトである「地震防災に関するネットワーク型共同研究」に参加し、レンガ組積造の振動台による損傷実験を行った。このプロジェクト研究にはトルコ、パキスタン、ネパール、インドネシアの研究者も関係した。実験の試験体として選んだのは、2005年10月8日にパキスタン北東部で、2006年5月26日にジャワ島中部で地震があったことから、パキスタンに見られるレンガ住宅を想定したモデル(1枚イギリス積レンガ住宅モデル)、インドネシアに見られるレンガ住宅を想定したモデル(枠組半枚積レンガ住宅モデル)の実験を行うこととした。
 
◇耐震技術の社会への定着方策/岡﨑健二(政策研究大学院大学教授)(7ページ)
 住宅の耐震性向上を実現するには、建築基準行政以外に、住宅の所有者に直接働きかけ、啓発活動や耐震改修の動機づけや、住宅建築に係る技術者の知識や技能の向上を図ることが不可欠である。このためには、政策による誘導やNGO等によるコミュニティベースの防災活動などが有効である。
 
◇建設現場の実情を踏まえた耐震性向上方策の提案/楢府龍雄((財)建築行政情報センター 建築行政研究所研究第1部長(元 建築研究所 国際協力審議役))、今井 弘(NPO法人SNS国際防災支援センター 理事(元 建築研究所 専門研究員))(7ページ)
 今回の国際共同研究「地震防災に関するネットワーク型共同研究」では、地域の材料、職人により建設される庶民住宅を対象にしている。こうした住宅は、工学技術者の関与がほとんど無く、地震に対して大変脆弱である(1)。写真1は、2006年ジャワ島中部地震で最も被害が甚大であった地区の写真であるが、このように建物が倒壊しているのに家具は倒れていない事例が多く見られる。こうしたことから、開発途上国ではあまり強くない地震動により多くの建物が倒壊していることが想定される(2)。一方、今回の共同研究で実施した振動台実験において、無補強のレンガ造、枠組み組積造について、現地のレンガを用いて、現地の一般的な調合のモルタルを用いるなど、実態を再現するように努めた試験体を製作して振動台実験を実施したが、いずれも震度6弱程度の振動まで、全くクラックを生じない結果となり、相当程度の耐震性を示した(3)。こうしたことから、実際の建物が極めて脆弱となっている原因を探ることが今後の被害軽減のために必要であると考えられる。
 
◇簡易でローコストの免震技術開発/楢府龍雄((財)建築行政情報センター 建築行政研究所研究第1部長(元 建築研究所 国際協力審議役))、石山祐二(北海道大学 名誉教授)、山口修由(建築研究所 主任研究員)、阿部秋男((株)東京ソイルリサーチ つくば研究室長)、今井 弘(NPO法人SNS国際防災支援センター 理事(元 建築研究所 専門研究員))(7ページ)
 地震による振動の建物への伝達の軽減を実現する免震技術は、地震被害を大幅に少なくすることができる技術である。しかしながら、免震装置のコストが高い、高度な設計、高い施工精度が要求されるなどために、日本のような先進国においても限られた建築物に活用されるに留まっている。こうした中、被害軽減の必要性が切実な開発途上国において活用できるような、簡易でローコストの免震技術を開発する取り組みを行った。
 
◇中部ジャワ復興支援と、JICA耐震性向上プロジェクト/亀村幸泰、白川和司(在インドネシア JICA専門家)(6ページ)
 2006年5月27日にジョグジャカルタでマグニチュード6.3の地震が発生し、激甚な被害を発生させた。倒壊した住宅は大半が耐震性の低いレンガ積造であった。これを契機に、「建築物耐震性向上のための建築行政執行能力向上プロジェクト(JICA)」が開始された。本プロジェクトは、ジョグジャカルタにおける住宅復興の状況をレビューし、インドネシア全国の建築許可制度の改善及び執行能力向上を行い、一般住宅の耐震性を強化しようというものである。
 
◇建築基準の普及を通じた住宅の地震安全対策(HESI)/安藤尚一(国連地域開発センター(UNCRD)防災計画兵庫事務所長)(4ページ)
 国連地域開発センター(UNCRD)では1995年の阪神・淡路大震災や最近の世界各地での地震被害の経験から、世界各地で学校や住宅の耐震化を進めている。災害は先進国、開発途上国のどちらでも起こり多くの人命と経済的な損失を生んでいる。しかし、災害を防止する備えが十分でないため、損失の程度は開発途上国においてより深刻である。自然災害による死者の実に95%が開発途上国におけるものであり、災害に起因する経済的な損失をGDP比率で見ると、開発途上国は先進国と比べて20倍の数値を示している。
 
◆災害報告
◇2009年4月6日イタリア・ラクイラ地震による建築物の被害調査/青木孝義(名古屋市立大学准教授)、岸本一蔵(大阪大学准教授)、迫田丈志(東北大学助手)、高橋典之(東京大学生産技術研究所助教)、松井智哉(豊橋技術科学大学助教)(18ページ)

 2009年4月6日3時32分(現地時間)頃、イタリア・アブルッツォ州ラクイラ(L’Aquila:人口69,368人のイタリア共和国アブルッツォ州ラクイラ県のコムーネの1つで、ラクイラ県の県都かつアブルッツォ州の州都)で発生したマグニチュード6.3(USGS)の地震およびその直後の最大余震(4月6日4時37分に発生したマグニチュード5.1)により、290人以上の死者、1000人以上の負傷者、1万から1万5000棟の建物が被害を受けたとされている。アペニン山脈に沿って北西-南東方向に活断層が複数存在し、本震は正断層型、震源の深さは10kmである。今回被災したイタリア中部アブルッツォ州では、1915年にAvezzano地震を経験、イタリア国内でも地震危険度の比較的高い地域であり、2009年3月から有感地震が続いていた。
 
◆シリーズ「五重塔②」
◇五重塔の強風時の挙動/大熊武司(神奈川大学工学研究所)(4ページ)

 文化財建造物である五重塔は伝統木造建築物における高層建築物であり、台風の影響を受けやすい。実際、構造上の被災としても、歴史的記録のほか、四天王寺五重塔の倒壊(1934年)、最勝院五重塔および備中国国分寺五重塔(1991年)等の被災が挙げられる。しかしながらこれまで、五重塔の強風時の挙動についての検討はほとんどなされておらず、防災・減災の観点から風力の性状や風応答の性状の把握が強く望まれるところである。本稿は、この観点から筆者らが行った風洞実験による風力特性およびこれを用いた応答解析による風応答性状についての研究成果1)、2)の要点を紹介する。
 
 
 

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