特集「 風 」

月刊「建築防災」
No.367 2008/8月号
特集「 風 」
 
※執筆者名の後の( )内の数字はその記事のページ数を表す
 
◆防災随想
◇防災と想像力/中埜良昭(東京大学生産技術研究所)(1ページ)

 
◆特集「 風 」
◇耐風設計の要点/田村幸雄(東京工芸大学)(4ページ)

 2004年の台風16号および台風18号により、兵庫県播磨科学公園都市に在る大規模な構造物の2重折版屋根が2度にわたって飛散した。屋根飛散の原因は、上折版が日射によって伸縮し、その影響で、下折版をタイトフレームに取り付けるボルトが、事前に破断してしまっていたことによる。つまり、大規模屋根の金属製葺材が下部構造材に緊結されておらず、単に被さっていただけであったのである。他の構法による大規模金属屋根においても、緊結部が熱伸縮の影響で破損していたと思われる事例がかなりある。これらの事例は構造設計や施工のあり方に大きな警鐘を発している。以下、建築物を耐風設計する上での要点について述べる。
 
◇鋼板製屋根構法標準(SSR)における耐風圧性能の評価/喜々津仁密(独立行政法人建築研究所)(5ページ)
 鋼板製屋根構法標準(以下「SSR」という)は1977年の発刊以降、鋼板製屋根の設計施工に活用されてきたが、今日までの構工法開発成果の反映、標準的な試験・評価方法の導入及び近年の建築基準法令の改正内容に応じた設計法の見直し等が行われ、15年ぶりに2007年版1)として出版されたところである。鋼板製屋根はその構法の性格上、耐風圧性能を高め、それを適切に評価することが構造安全性を確保する上で重要であり、風工学の分野においても最も関心のある建築構法の1つと言える。そこで本稿では、SSR 2007年版に新たに追加された試験法に基づく耐風圧性能の評価内容について概説する。
 
◇最近の風による建築物被害事例/西村宏昭((財)日本建築総合試験所)(6ページ)
 台風による建築物の被害は、かつては甚大であったが、気象観測と情報伝達手段の発達、および構造と建築材料の技術革新によって、近年ではずいぶん減少しているように見える。しかし、強風被害による建築物の損害総額は著しく増えている。注目しなければならないのは、1960年代から1980年代の、いわゆるわが国の高度経済成長期に巨大台風が襲来していないことによって、あたかも強風被害が克服されたかのように誤解されていることである。しかし、2004年の史上最多の上陸台風によって強風被害が顕在化し始めており、強風被害は決して過去の出来事だけではない。室戸台風級の巨大台風に備えてより安全な建築物を備蓄する必要がある。ここでは、最近の風による建築物の被害事例から得られた教訓について述べる。
 
◇ビル風の現状/中村 修((株)風工学研究所)(4ページ)
 現在、高層建物を建設する場合、必ずと言っていいほどビル風が問題となる。建設者にとっては厄介なものだし、近隣住民にとっては心配なことである。この種の問題が提起されてからかなりの歳月がたち、多くの経験の基に予測手法の進歩や風環境の評価指標の確立がなされてきた。とは言え、簡単に問題が解決しているとは言えない。ここでは、現在、ビル風により発生している問題、高層建物建設によるビル風の影響度合の判断のための評価指標、そしてそれらに対する防風対策について実例を含め紹介することとする。
 
◇大屋根の耐風設計事例 東京競馬場スタンド大屋根の設計/藤森 智、佐藤和広((株)松田平田設計 構造設計部)(7ページ)
 東京競馬場スタンドは全長が約350mの長大な建築物であり、観覧席を覆う約45mの跳ね出し大屋根が大きな特徴である。片持ち屋根は風荷重が地震荷重と同等もしくはそれ以上となる可能性があるため、強風時の屋根のたわみおよび振動現象が耐風設計上、重要となる。
 
◇建築用の風洞実験の現状/近藤宏二(鹿島建設(株)技術研究所)(5ページ)
 建築物の設計では、構造骨組や外装材の耐風設計、風揺れによる居住性、風環境、風切り音など風に関わる様々な検討が必要である。これらの諸問題に対して、安全かつ快適な建築物を実現するためには、その現象を把握し、必要に応じて対策を講じる必要がある。その手法として、一般的に用いられるのが風洞実験である。風洞実験では、風圧、風力、振動、風速、音など様々な測定が行われるが、ここではその代表的な手法について紹介する。
 
◇数値流体解析の現状 風荷重の評価/田村哲郎(東京工業大学大学院総合理工学研究科教授)(7ページ)
 数値流体解析とは、Computational Fluid Dynamics(CFD)とよばれ、流体力学の基礎方程式に対し、コンピュータを用いて風の流れあるいは風によって作用する力を近似計算により算定する技術のことである。これまで建築分野だけでなく、航空、機械、気象、土木などで広く使われ、各分野で様々な計算上の課題が解決されてきた。建築分野においては、主に構造問題、環境問題に適用されてきたが、一般に風の流れに比べ、風の力に関する予測が難しい傾向があること、および安全性に関わる問題においては要求精度が高いということから、実用化という視点からは、現時点では、ビル風の環境評価など、一部の環境問題に限られている。しかし近年、以下の点での解析精度の上昇に伴い、自然風と同様な乱流状態にある流れの中に置かれた比較的複雑な形状を有する建築構造物に作用する風圧力・風力、およびその結果生じる振動の応答を予測するための技術的な基盤が整い、数値流体解析は、建築耐風設計などの構造問題においても活用される段階に到達しつつある。
 
◇屋外環境分野のCFD解析の近年の動向/持田 灯、遠藤芳信(東北大学)(9ページ)
 CFDを用いた屋外環境解析の分野では、近年、モデルの開発・改良などの基礎研究が継続される一方で、人体スケールから建物・街区スケール、都市・地域スケールに至る様々なスケールの現象への応用も進んでいる。本稿では、いくつかの解析事例を示しながら最近の研究動向を述べるとともに、現状のシミュレーション技術の到達点と残された課題、さらに、今後の可能性等についての筆者らの考えを述べる。
 
 
 

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