特集「日本から海外へ 建築防災に関する教育・取り組み」

月刊「建築防災」
No.363 2008/4月号
特集「日本から海外へ 建築防災に関する教育・取り組み」
 
※執筆者名の後の( )内の数字はその記事のページ数を表す
 
◆防災随想
◇高齢者社会の住宅・生活環境と維持保全/中島修一(ダイケンエンジニアリング(株)常務取締役)(1ページ)

 
◆特集「日本から海外へ 建築防災に関する教育・取り組み」
◇総論 - 海外の防災教育/岡 健二(政策研究大学院大学教授)(6ページ)

 近年の科学技術の進展にもかかわらず、主に途上国で地震や洪水などによる大災害が頻発し、多数の被災者を出すとともに、多大な社会的経済的損失をもたらしている。なかでも地震はその発生を事前に予測することができず、事前の避難が困難であることに加え、途上国の大多数の住宅が耐震性の低い日干しレンガ(一般にアドベと呼ばれる)造、レンガ造、石造であり、これらの伝統的な工法による住宅が多数倒壊するため、地震による被害はむしろ増加傾向にある。21世紀に入ってからもインド、パキスタン、イラン、インドネシアなどで大規模な地震災害が発生した。
 
◇途上国で考えた地震防災/片山恒雄(東京電機大学未来科学部建築学科)(5ページ)
 途上国における地震防災と私のつながりに関するきわめて私的な文章である。何がきっかけで、この問題に取り組むようになったか。国連の「国際防災の10年(IDNDR)」はどのようにスタートし、IDNDRの活動を支援するために国際地震工学会のもとにつくられた「世界地震安全推進機構(WSSI)」は、何をやってきたか。WSSIのハイレベルミーティングの成功と失敗、東大生産技術研究所に設立されたINCEDEの活動など、身の回りで起こったことを中心にまとめた。
 
◇トルコ共和国での地震被害抑制プロジェクト/楠 浩一(横浜国立大学大学院)(4ページ)
 トルコ共和国は、人口およそ7,200万人、国土は日本のおよそ2倍の極めて親日的な国である。一説には、日露戦争に極東の小国である日本が勝利したため、親しみを覚えた人が多いといわれている。その為、「トウゴウ」という名を子供につけた人も多かったといわれている。また、1890年に当時のトルコ皇帝がエルトゥールル号で日本に派遣した特使一行が和歌山県の串本沖で暴風に巻き込まれ遭難した。暴風の中での地元民の救助作業により69名が救助されたが、580余名は殉職された。この悲劇を機に、串本とトルコの友好は始まり、現在では串本市に慰霊碑(写真1)が建立されている。
 
◇インドネシアにおける地震防災のための地盤調査技術支援活動/清野純史(京都大学大学院工学研究科)(5ページ)
 2004年12月26日のスマトラ沖地震(Mw=9.0)は、インドネシアを中心に津波被害を始めとする未曾有の大災害を引き起こしたが、その約3ヵ月後の2005年3月23日には、前回の震源の南東方向のスマトラ沖で再度Mw=8.7の大地震が発生した(図11))。この地震は、津波被害もさることながら、震源断層の上にあたるニアス島において、橋梁、港湾施設および建物・家屋に地震動や地盤の液状化に起因する甚大な被害が生じた2)、3)。その際、現地州政府から(社)土木学会に対し、被災した社会基盤施設の診断や補修、応急復旧や復興のための技術的支援の要請があり、これを受けて、(社)土木学会(JSCE: Japan Society of Civil Engineers)は2005年4月に支援チームを被災地に派遣し、現地の行政官庁と連携し、支援・助言活動を行った3)。しかし、数ヶ月たっても復興の目途は立たず、インドネシア工学会(PII)や州政府から引き続き復興支援の要請を受けた。
 
◇津波高さメモリアルポールの建設と防災教育――スマトラ沖地震・津波大災害から3年を経て――/家村浩和(近畿職業能力開発大学校・校長)(5ページ)
 2004年12月26日にインドネシア、スマトラ島沖において、マグニチュード9.0の巨大地震が発生した。津波被害はインド洋全域に及んだが、同島の北端にあるバンダアチェ市においては、地震と津波の両者による災害が発生した。この被害モードは、太平洋岸の巨大地震による東海、南海地方のそれに酷似する。著者は2005年2月に、スマトラ島バンダアチェ市の地震・津波被害の調査に従事するとともに、その後この3年間の間に、計10回にわたって同市を訪問し、津波メモリアルポールの建設プロジェクトを進めるとともに、防災教育を指導してきた。本文はその報告である。
 
◇児童・生徒を対象とした地震防災教育活動/国崎信江(危機管理教育研究所 代表 危機管理アドバイザー)(4ページ)
 防災の大切さを伝える仕事をしていると、話の結末は「防災教育の必要性」を訴えて終わりになることが多い。建物の耐震性を高めることが最も人的・物的被害軽減に寄与すると理解していても、実際に実行してもらうには、財政・技術・導入方法・効果の明確さはもちろんのこと、責任者にその必要性を感じてもらえるか、防災の意識があるかどうかにゆだねられるところが非常に大きい。その必要性に気づいてもらうことや、意識を向上させるためのキーが「防災教育」となる。
 
◇情報通信技術を活用した開発途上国への防災支援/阪本真由美(京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻)(5ページ)
 情報通信技術(IT:Information Technology)の発達により、世界中どこにいても、情報通信網にアクセスすれば最新の情報を得ることができる。開発途上国に対する支援においても、ビデオ会議システムを活用した遠隔講義やインターネットを活用した研修事業(WBT: Web Based Training)などITを活用した事業が増えつつある。本稿では、これらITを活用して、開発途上国の防災実務者を対象に実施されている人材育成事業を紹介するとともに、その課題とそれを踏まえた今後の展望について、独立法人国際協力機構(JICA: Japan International Cooperation Agency)が実施している遠隔技術協力事業(JICA-Net)及び世界銀行研究所(WBI: The World Bank Institute)が実施しているWBTの事例から検討してみる。
 
◇アジア防災センター(ADRC)の防災教育/鈴木弘二(アジア防災センター所長)(4ページ)
 アジア防災センター(Asian Disaster Reduction Center: ADRC)は、アジア地域における国際防災協力を推進する地域機関として、兵庫県神戸市に1998年7月に設立された。アジア地域のメンバー国27カ国(インド、インドネシア、ウズベキスタン、カザフスタン、カンボジア、シンガポール、スリランカ、タイ、韓国、タジキスタン、中国、日本、ネパール、パプアニューギニア、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、モンゴル、ラオス、ロシア連邦、アルメニア、キルギス、パキスタン、ブータン、イエメン)、アドバイザー国5カ国(オーストラリア、スイス、フランス、ニュージーランド、アメリカ)、オブザーバー1機関(アジア災害予防センター)により構成され、メンバー国とのネットワークを構築するとともに、国連機関、国際的な機関等と積極的に連携してアジア地域の災害被害軽減に資するための活動を実施している。
 
◇国連地域開発センター(UNCRD)の防災教育/安藤尚一(国際連合地域開発センター(UNCRD)防災計画兵庫事務所長)(6ページ)
 国際連合地域開発センター(UNCRD)では、防災計画は地域開発の重要な要素であるとして、1985年から防災分野の活動に積極的に取り組んでいる。災害の軽減と管理は、ハードウェア(物理的耐災化)とソフトウェア(計画・組織・制度の対応)とが一体となって遂行されるべきものである。近年、ハードウェアに関する研究とその応用はめざましい進展を見たが、それらを社会に定着させ、効果的に運用するためのソフトウェアは立ち遅れが見られる。特に途上国においては、そのことが経済力の低さとともに、先進国からの高度なハードウェアの技術移転が進まない大きな原因となり、災害の常襲を余儀なくされ、さらに開発が遅れる要因となっている。そこで、UNCRDでは途上国におけるこうした悪循環を断絶するために、ハードとソフトの間に望ましいフィードバックの関係を創り出し、両者を統合した総合的な防災対策を確立していくことを基本方針としている。
 
 
 

*情報交流制度にお申し込みいただいた方には、当協会の月刊誌である「建築防災」をお配りしています。

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