特集「建築防災に関する教育・取り組み」(その1)

月刊「建築防災」
No.360 2008/1月号
特集「建築防災に関する教育・取り組み」(その1)
 
※執筆者名の後の( )内の数字はその記事のページ数を表す
 
◆防災随想
◇防火材料等の偽装性能評価事件/杉山義孝((財)日本建築防災協会 専務理事)(2ページ)

 
◆特集「建築防災に関する教育・取り組み(その1)」
◇はじめに/坂本 功(「建築防災」編集委員長 慶応義塾大学理工学部建築学科教授)(1ページ)

 建築に関する防災を積極的に進めるためには、専門家による研究や行政・実務の人の努力が必要であることはもちろんであるが、これらに加えて、一般の人々の防災に対する理解や、あるいは積極的な参加が非常に効果的である。
 
◇幼少期からはじめる防災教育/石川孝重(日本女子大学住居学科教授・学園活動評価・戦略室室長)(6ページ)
 近年、地震による被害が多発している。日本がおかれている状況を考えれば、耐震性の高い建物の建設や、既存建物の耐震補強など、ハードの対処はもちろん大切であるが、市民一人ひとりが地震から身を守る環境づくりを心がけることはさらに望ましい状況であり、その効果は大きい。
 
◇地域と連携した防災マップづくり/鬼原寿美子(市川市立行徳小学校)(4ページ)
 創立135年、児童数900人弱の大規模校である。学校の東側は高層ビルが連立した新興住宅街、西側は江戸川が流れ,寺社が20余にも及び、昔の寺町通りの面影を残し、戸建て住宅が多い。このような環境におかれた子ども達の心配は、登下校時に大地震が起きたら、どう対処したらよいかと言うことだ。そこで、子どもと大人の視点から学区調査をし、防災マップを作成することで、登下校時の安全確保と災害時における避難場所への安全なルートの決定ということを考えて取り組んだ。
 
◇高知市における防災教育の経過と実践/山本 聡(高知市健康福祉部福祉事務所生活福祉課長補佐(旧高知市総務部防災対策課防災対策担当係長))(5ページ)
 防災教育は、2つの使命を持っていると言われている。一つは「自然を知る」ということで、これは科学技術の継承・発展となっていく。もう一つは「命を守る」ということで、命のはかなさや尊さについて、いろいろな立場に立つことによって、困難な問題を協力し解決するなど、防災文化の継承・発展となっていくということである。この2つの使命を持つ防災教育は、南海地震対策を推進していくための最も有効な手段であると考えている。以下、手さぐりで始めた本市防災教育の経過と実践を記する。
 
◇高知県における防災教育ウェブサイトの開発/高知県危機管理部 地震・防災課(4ページ)
 南海地震は、南海トラフを震源として、およそ100年から150年を周期として発生しており、次の南海地震は30年以内に50%程度、50年以内に80%から90%の確率で発生すると言われています。(基準日2007年1月1日、地震調査研究推進本部)
 この南海地震によって、高知県では死者9,600人以上、建物の全壊・半壊16万棟以上と、非常に大きな被害が発生すると想定しています。
 
◇耐震化を進めるための防災教材の開発と教育の実践/福和伸夫(名古屋大学環境学研究科)(7ページ)
 切迫する大地震を前に耐震化の推進が喫緊の課題となっている。このため、中央防災会議は、2005年に地震防災戦略を策定し、10年間での被害半減を公約した。その根幹は、耐震化率90%の達成にあり、それを実現するためには国民の意識改革が基本となる。これを受けて、2006年に災害被害を軽減する国民運動の推進に関する専門調査会が設置され、2006年末に、「正しい知識を魅力的な形でわかりやすく提供(良いコンテンツを開発)」を重要課題の一つとする基本方針を策定した。さらに、文部科学省も、2007年に防災教育支援に関する懇談会を設置し、2008年8月に「「生きる力」を育む防災教育を支援する」と題する中間とりまとめを行い、この中で、「学びの素材・場の提供」を行うことを提言した。このように、近年、耐震化を進めるための効果的な防災教材の開発が強く望まれるようになってきた。
 
◇中・高校生の耐震診断授業/田中礼治(東北工業大学工学部建築学科教授)(5ページ)
 宮城県の中・高校生の若者に地震防災教育(以下、防災教育)が必要かと質問すると、ほぼ全員の生徒が必要だと回答する。大人にも同じ質問をすると、ほぼ全員が必要だと考えていることが分かる。同様のことを、東京で行ってみても宮城県と近似した比率になる。このことは、近年日本で多発している地震と無関係ではないと思っている。いずれにしても、防災教育の必要性は全国民に認識されていると考えてよかろう。このような必要性を背景に、筆者らは主に宮城県内を中心に東北地方並びに東京の中・高校生の若者を対象に防災教育を行っている。
 
◇地域に拡がれ耐震補強! 専門高校生による耐震診断ボランティア活動/菊池貞介(千葉県立市川工業高等学校建築科主任・教諭)(5ページ)
 本校の建築科の生徒たちは、1年生のはじめから木構造を学習している。3年生にもなると木造2階建住宅の全国設計コンクールや大学主催の設計競技会に挑戦し、卒業設計ではプライドをかけて図面を書き込む生徒もいて頼もしい。そんな中、八島信良氏から一通のお手紙をいただき、平成15年、生徒たちが主体となった耐震診断ボランティア活動が始まった。以来、八島先生の熱意と地域の皆さんに育まれ、集団検診型の「町内まるごと耐震診断」や技術者のネットワークづくりを目指す公開実験とシンポジウムの開催など、専門の学習を活かした地域貢献活動を行っている。
 
◇防災教育の広がりと深まり/諏訪清二(兵庫県立舞子高等学校環境防災科 科長・教諭)(5ページ)
 防災教育は、狭義には、災害時に自分の命を守る力を身につけていくことを目標としている。“Survivorとなるための防災教育”である。“Survivor”とは「生き残る人」という意味であって、日本語訳の「被災者」とはニュアンスが異なる。災害のダメージを被った人という意味だけではなく、主体的な備えと臨機応変の判断力で災害を生き残っていく人をイメージしている。そして“Survivor”となるための防災教育が、防災教育の核であることは間違いない。今、全国で行われている防災教育のほとんどは、まず自分が生き残ることを目標としている。では、生き残ることができればそれでいいのだろうか。
 
◇防災・社会貢献ユニットのチャレンジ/舩木伸江(神戸学院大学)(4ページ)
 神戸学院大学 防災・社会貢献ユニットでは、学生自身が持つ知識や経験に加え、授業で習った内容を元に新しい防災教育の教材開発を行っている。本稿では、学校教育の中で防災教育を実施するうえでの問題を軽減することを目的に、本ユニットがチャレンジしているオリジナル教材のコンセプトを紹介する。また、教材作成や防災教育出前授業の実践が与える学生への影響についての考察を行う。
 
◇大学における防災教育 ―千葉科学大学の場合―/船倉武夫、小川信行、嶋村宗正、上北 彰、井上 安敏(千葉科学大学危機管理学部 防災システム学科)(8ページ)
 千葉科学大学は、全国初の危機管理学部を持つ大学として2004年に設立された。
 そのきっかけは、岡山市内に本部を持つ学校法人加計学園の理事長加計晃太郎が2001年9.11世界同時テロ、アメリカのフィンドリー大学危機管理学部卒業生の活躍を聞き及び、危機管理に対する社会ニーズへ応えたいという思いである。当時、消防研究所(現消防研究センター)理事長であった平野敏右を訪ね、学長就任を要請したのは2002年のことであった。
 
◇政策研究大学院大学の「防災政策」修士プログラム/岡 健二(政策研究大学院大学教授)(6ページ)
 国立大学法人政策研究大学院大学(以下、「政策研究院」)は、政策に関する高度の研究と教育を通して,国内及び国際的に貢献することを目的としており,主に公務員や研究者などの社会人を対象とする新しいタイプの大学院大学である。政策研究院では、海外の留学生を主な対象とし、防災政策に関する専門家の育成を目的として、防災政策プログラム(修士課程)を、独立行政法人建築研究所、独立行政法人土木研究所、及び独立行政法人国際協力機構(JICA)との連携により実施している。プログラムは、地震防災、津波防災、水災害リスクマネジメントの3つのコースに分かれている。本稿では、この防災政策プログラムの内容を紹介する。
 
 
 

*情報交流制度にお申し込みいただいた方には、当協会の月刊誌である「建築防災」をお配りしています。

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