特集「建築物の強震観測」

月刊「建築防災」
No.352 2007/5月号
特集「建築物の強震観測」
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識83」
 
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◆防災随想
◇耐震改修を促進するための提案/岡崎健二(政策研究大学院大学教授)(2ページ)

 
◆特集「建築物の強震観測」
◇建築物の強震観測の現状と今後の展望/大川 出(独立行政法人建築研究所)(6ページ)

 わが国では、1950年代前半に強震計が開発され、最初は主として建築物を対象として強震観測が進められた。
 その後、大都市圏ではあまり地震被害が発生しなかったことや、強震動予測や、表層地盤による地震動増幅など入力評価関連の研究へ関心が移ったことなどから、建築物における強震観測は、最近まであまり活発ではなかった。1995年兵庫県南部地震を契機として、2004年新潟県中越地震など、建築物被害と強震観測との関係が大きな関心を集めるようになった。また、性能評価に基づく構造設計という観点からも、建築物の地震応答データの重要性がいままで以上に認識されている。
 地盤上の観測に比べて手薄の観がある建築物の強震観測について現状と問題点を踏まえ、今後のあるべき姿を考えてみる。
 
◇公共建物における強震観測/鹿嶋俊英(独立行政法人建築研究所)(6ページ)
 強震観測は、大きな地震時の地盤や建物の揺れを観測しようとする試みである。日本における強震観測の歴史は50年以上に及ぶ。
 建築研究所は日本の強震観測の黎明期から強震観測に携わり、全国規模の観測ネットワークを整備してきた。観測の主眼は建物であり、主に国や地方自治体の庁舎に強震計を設置している。本稿では建築研究所の強震観測について概要を述べ、最近の研究成果から地震防災に関連する話題を紹介し、今後の課題について考える。なお、建築研究所の強震観測については「建築防災」2004年12月号でも紹介しており1)、本報と併せて参照していただければ幸いである。
 
◇UR都市機構住宅における強震観測/木村 匡(独立行政法人都市再生機構)(4ページ)
 UR都市機構(旧、公団)では、UR賃貸住宅(旧、公団住宅)を中心に、計21地区に強震計を設置し、長期的に強震観測を行っている。これは、いつ・どこで発生するか分からない大地震に備え、地震時に建築物がどのように揺れるのかデータを集積し、今後の設計に生かしていくとともに、居住者等に対し、必要に応じた注意喚起等を行うことを目的としている。
 ここでは、その概要と主な観測結果を報告する。
 
◇NTTグループ建物の強震観測/土肥 博((株)NTTファシリティーズ 研究開発本部)(4ページ)
 昨今、東海・東南海・南海地震、首都圏直下地震の切迫が指摘され、国・自治体の防災・減災対策や企業の事業継続(BC)の観点から、情報通信の役割は益々重要になっている。NTTグループでは、地震時の通信の途絶防止、早期復旧を図るため、ネットワークの多重化、通信用建物・鉄塔および収容される装置類の耐震対策を実施している。これらの対策には地震荷重の設定が重要であり、強震観測による地震動の分析・評価を長期間にわたって行っている。
 本報では、NTTグループが展開している低・中・高層の耐震、制震、免震建物等を対象とした強震観測と、それらによる観測記録例及びその耐震設計・耐震試験への活用について紹介する。
 
◇名古屋地区における強震観測の高度化と活用/福和伸夫(名古屋大学大学院環境学研究科教授)(7ページ)
 耐震設計の基本は、敵(地震動)の姿を知った上で、己の実力(耐震性能)が敵を上回るようにすることにある。すなわち、敵の姿を明らかにし、己の実力を知ることが耐震研究の根幹である。
 兵庫県南部地震後12年が経つが、いまだこの地震での建物被害を十分には説明できていない。また、この間、性能規定型の耐震基準が導入されたり、耐震強度偽装問題が発覚したが、現状、建築物の耐震性能を正しく評価できていないため、社会に対して十分な説明ができていない。
 
◇建物の強震観測に関するアンケート調査/小山 信(独立行政法人建築研究所)(4ページ)
 独立行政法人建築研究所では、設計用入力地震動の合理化に資する地震記録蓄積を目的として、61地点の公共建物に地震計を設置して観測を継続している(詳しくは、「公共建物における強震観測」参照)。しかしながら近年急速に展開された地盤上の観測網に比べると充分な体制とは言い難く、一層の観測網の充実を図ることが望まれる。さらに現時点で日本の建物の強震観測に関する情報を網羅的に収集整理したデータベースは存在しておらず、将来戦略を構築するためにも日本における建物での強震観測体制の現状について把握することが必要と考え、建物での強震観測を実施している機関の抽出と観測状況に関する情報収集を目指してアンケート調査を実施した。本稿では、その結果を紹介する。
 
◇低コスト地震計と戸建て住宅の地震動観測/飯場正紀(独立行政法人建築研究所)(5ページ)
 建物の地震時挙動の解明には、建物の地震時の揺れを捉える必要がある。建物で観測された記録に基づいて、建物の揺れの様子が明確になるとともに、不具合の発見等に利用できるようになれば、建築技術者・消費者の観測に対する関心も高くなる。ここでは、地震計をより普及させるための1つの方法である、低コスト化を目指した地震計に着目し、低コスト地震計の現状や観測例を紹介する。
 
◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識83」
◇特殊建築物等定期調査業務(基準)に関する消防法令に定められている事項について(その2)/小林一三((財)日本消防設備安全センター 業務部調査役)(10ページ)

 多人数を収容する一定の用途、構造の防火対象物の管理権原者に対して消防法令により義務付けられている火災予防上必要な事項について火災の予防に関する専門的知識を有する者(防火対象物点検資格者)による技術的な観点からの定期に点検をさせ、その結果を消防機関に報告するとともに、防火対象物の利用者に分かるように点検済である旨等の表示をするものである。これは、管理権原者の責任において行わなければならない防火管理業務等の管理体制を防火対象物点検資格者に火災予防に関する専門的な観点から補強させることによる防火対象物の基準適合状況を継続的に維持させ、火災の危険性を排除し、人命安全の確保を図ることとするものである。
 
◆ニュース
◇地震保険と地震保険料控除制度について/小原喜昭((社)日本損害保険協会)(2ページ)

 地震保険は、地震、噴火、またはこれらによる津波を直接・間接の原因とする火災、損壊、埋没、流出によって建物や家財が被った損害を補償します。火災保険では、地震による損壊、地震で発生した火災による損害に対しては保険金が支払われませんので、これらの危険に備えるためには、地震保険を契約する必要があります。
 地震保険は、「地震による被災者の生活の安定に寄与すること」を目的とし、「地震保険に関する法律」に基づいて政府と損害保険会社が共同で運営している公共性の高い保険です。後述のとおり、地震保険の契約金額などに一定の決まりがあるのは、住宅の再建を直接的な目的とはせず、被災者の生活の安定に寄与することを目的としているからです。
 
◆行政ニュース
 
 
 

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