(特集「大型震動台E-ディフェンスにおける木造住宅の振動実験」)

月刊「建築防災」
No.344 2006/9月号
特集「大型震動台E-ディフェンスにおける木造住宅の振動実験」
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識75」
 
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◆防災随想
防災対策のユーザへの周知/沖塩 荘一郎(東京理科大学)(1ページ)

 
◆特集「大型震動台E-ディフェンスにおける木造住宅の振動実験」
◇実大三次元震動破壊実験施設の概要と活用計画/中村いずみ、佐藤正義((独)防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター(3ページ)

 1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震では、建物、高速道路、港湾施設等、数多くの構造物に多大な被害が生じるとともに、これらの被害により6,000名を超える人命が失われました。このため、なぜ構造物にこのような多大な被害が生じたのか、また、被害を防ぐためにはどうすればよいのかを再検討する必要に迫られ、有識者による議論を経て、これまでの実験施設では不可能であった実物大の構造物を破壊に至らせるまでの地震動を再現できる震動実験施設が建設される運びとなりました。。
 
◇E-ディフェンスにおける木造住宅の振動実験/坂本 功((独)防災科学技術研究所/慶応義塾大学教授)、箕輪親宏・中村いずみ・清水秀丸((独)防災科学技術研究所)、鈴木祥之(京都大学防災研究所教授)(6ページ)
 平成14年度より平成18年度までの5ヶ年計画で、大都市圏における大地震時の人的・物的被害の軽減を目的とした研究プロジェクト「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」(以下大大特)が、文部科学省主導で実施されています。この中で、震動台を活用し既存構造物の耐震性向上を図る研究が実施されていますが、対象構造物の一つとして木造建物が選定されています。木造建物実験では、主に1981年の建築基準法改正前に建てられた木造住宅の大地震時における挙動と破壊過程を明らかにし、耐震診断法、耐震補強法の有効性を検証することを目的としています。平成16年度までの3ヶ年は準備研究として中規模振動台を用いた振動実験や地震観測、解析シミュレーションの開発を実施しました。平成17年度には、防災科学技術研究所が所有する実大三次元震動破壊実験施設(以下E-ディフェンス)を使用し、実大木造建物実験を実施しました。本稿では、大大特木造建物実験の全体概要と、平成17年度にE-ディフェンスで実施した実験の内容と成果について述べます。
 
◇E-ディフェンスにおける倒壊実験用の既存木造住宅の耐震診断と耐震補強/五十田 博(信州大学工学部)、河合直人((独)建築研究所)、佐久間 順三((有)設計工房佐久間)(7ページ)
 木造住宅の耐震診断法は平成16年7月に改訂され、スクリーニングを目的とした比較的容易な一般診断法から、補強の要否の最終判断及び補強後の耐震判定を様々な建物や補強方法を対象に実施できるように作成された精密診断法まで、充実した内容となった。ここでは、2棟の実大実験に供した建物を対象に、様々な耐震診断法を適用した結果を示すとともに、施工した補強方法を紹介する。また、耐震診断と実験結果を比較検討することにより、現行の耐震診断法の精度について一考する。さらに、耐震診断を実施するに際し、問題となった事項や、補強計画や補強診断の過程で、考慮したこと、障害となった事項などを所感として併せて紹介することにしたい。本稿が耐震診断、耐震補強の実務現場での参考となれば幸いである。
 
◇E-ディフェンスにおける既存木造住宅の倒壊実験/槌本敬大(国土交通省国土技術政策総合研究所)、河合直人・中川貴文((独)建築研究所)、杉本健一・鈴木憲太郎・青木謙治((独)森林総合研究所)(7ページ)
 我が国に建つ古い木造住宅の多くは耐震性能が不充分な場合が多く、その補強による耐震性の向上が国民の生命・財産を守るうえで最重要課題であることは周知されている。また、既存の木造住宅といっても様々な構法、構造仕様があり、耐震性の評価が難しいばかりでなく、構成部材の生物劣化などの経年変化を起こしている場合も少なくない。これに対して、同様の構法、構造仕様を有する複数の木造住宅の構造実験や劣化状況調査などを行うことが、既存木造住宅の構造性能を把握する上で、有効な手段であると考えた。
 
◇地震動による木造住宅の倒壊シミュレーション/三宅辰哉((株)日本システム設計)、腰原幹雄・槌本敬大(東京大学生産技術研究所、国土交通省国土技術政策総合研究所)、五十田 博、箕輪親宏(信州大学工学部、(独)防災科学技術研究所(6ページ)
 平成17年11月にEディフェンスにおける既存木造住宅の倒壊実験(以下「H17震動台実験」)が実施され、引き続いて本年度も倒壊実験が実施される予定である。本実験と関連して、地震動による木造住宅の三次元倒壊解析手法に関する研究が平成14年度から行われている1)~6)。本解析手法開発の主要な最終目的は多数現存する不十分な耐震性能を有する既存木造住宅について、個々に解析による倒壊挙動を写実的な三次元アニメーションとして示すことで、住宅所有者等に適切な耐震設計・仕様の重要性の理解を促し、耐震改修促進を図ることである。この他、木造住宅の倒壊に渡る地震応答を精度良く予測できれば、倒壊を防止するために真に必要な仕様の特定が可能になり、耐震診断技術の高度化等が期待できる。
 
◇木造免震住宅の想定外入力実験/三宅辰哉・花井 勉((株)日本システム設計)、平野 茂((株)一条工務店)、五十田 博(信州大学工学部)、箕輪親宏((独)防災科学技術研究所)(5ページ)
 1983年に実用免震建物第1号棟が建設され、我国の免震建物の実用化がその端緒についた。その後の11年間は免震建物の年間着工数は5棟程度以下であったが、1995年の兵庫南部地震において免震建物の防災性能の高さが改めて認識されたことにより、1996年以降の年間着工数は150~200棟程度に増加した。さらに、2000年には戸建免震住宅の一般認定制度の運用が開始されたことにより年間着工数が急増し、2002年度の年間着工数は850棟程度に達している。2004年には新潟中越地震が発生して地震被害の重大さに関する認識が新たにされ、また東海・東南海・南海地震の発生確率の高さが指摘されていることもあって、2003年以降も免震建物の着工数は増加傾向にあると推測される。
 
◇E-ディフェンスにおける伝統構法(町家)の振動実験/鈴木祥之(京都大学防災研究所教授)、坂本 功((独)防災科学技術研究所/慶應義塾大学教授)、清水秀丸・箕輪親宏・中村いずみ((独)防災科学技術研究所)(6ページ)
 既存不適格建物とは、建設された当初の法令には適合していたが、その後の改正によって現在の法令で定める基準を満足出来ない建物を指します。このような建物は、我が国の地域を問わず多く残っており、老朽化の問題と合わせて地震時の被害が懸念されています。既存不適格建物の多くは木造建物であり、その中でも、1950年の建築基準法制定以前に建てられた木造を伝統構法と称します。伝統構法木造建物の特徴は、接合部に金物を多用しないこと、壁は土塗り壁が多いこと、柱脚は礎石の上に置いただけの束建て形式となっていることなどが挙げられます。著者らは、建築年代の古い木造住宅の保存・再生に関する研究を耐震性能の観点から実施してきました1)。一連の研究成果を文献2)にまとめ、伝統構法木造の耐震補強や耐震設計手法の提案を行っています。今回、2005年度文部科学省「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」の一環として、(独)防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センターの実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)を用いて実験を行う機会を得ることができました。本報では、その実験内容と結果について簡潔に報告します。
 
◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識75」
◇打放しコンクリートの維持保全(その1)/佐藤紀男(佐藤建築事務所)(3ページ)

 鉄筋コンクリート造建築物の外壁は、コンクリート躯体の保護および美観上の理由から、タイル張りあるいはモルタル塗り、塗装などの仕上げが施されている場合が多い。
 一方、コンクリート素地を仕上げとした「打放しコンクリート」は、その素材の持つ質感、ある程度の自由度、経済性などから、設計者や建物ユーザなどに根強い人気がある。
 しかし、型枠内に打設されたコンクリートは、型枠解体とともにそのままの状態で現れるため、設計時点での納まりや十分な施工管理が重要となる。
 
◆ニュース
◇「確率論的地震動予測地図」を活用した地震保険料率の算出/(損害保険料率算出機構1)総務企画部広報グループ)(4ページ)

 地震は火災や自動車事故とくらべ発生頻度が非常に低い反面、ひとたび大きな地震が発生すると、巨額の損害が生じます。このため損害の予測が難しく、保険としては成り立ちにくいものとされていました。しかし、1964年(昭和39年)の新潟地震を契機に、被災者の生活安定を図る手段が必要との観点から、保険審議会での検討が行われました。その結果、1966年(昭和41年)に、国が再保険を引き受ける方式の下で、地震保険制度が創設されました。
 地震保険は、地震・噴火またはこれらによる津波によって、家屋や家財に生じた焼失、損壊または流失等による損害を補償します(これらの損害は火災保険では補償されません)。契約件数は阪神淡路大震災以降伸び続け、今年3月末現在で1,025万件に達しています。
 
 
 

*情報交流制度にお申し込みいただいた方には、当協会の月刊誌である「建築防災」をお配りしています。

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