(特集「耐震改修事例」)

月刊「建築防災」
No.335 2005/12月号
特集「耐震改修事例」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識66」
 
※執筆者名の後の( )内の数字はその記事のページ数を表す
 
◆防災随想
◇地震災害と国際貢献/中埜 良昭(東京大学生産技術研究所)(1ページ)

 
◆特集「耐震改修事例」
◇はじめに/村上 雅也(早稲田大学理工学総合研究センター教授)(1ページ)

 今回、「耐震改修促進法」が改正された機会に耐震改修の事例を掲載しました。耐震改修の事例は百貨店として三越、伊勢丹、学校建築物として立教大学、東京大学、神奈川大学、京都大学、公共建築物として静岡県庁、目黒区総合庁舎、複合施設として日本生命日比谷ビルを取り上げています。工法は一般的なものから、外付け工法、免震工法、制震工法等多岐に及んでいます。また用途が持つ制約条件と対応策にも言及しております。
 
◇三越における耐震改修の考え方・耐震改修事例について/白鳥 高((株)三越本社管財担当課長)(5ページ)
 平成7年1月の「阪神大震災」を契機に、同年12月に「耐震改修促進法」が制定されたことを受け、弊社においては、自社所有建物の内、耐震調査・診断が必要とされた建物に関し、法制定直後から設計事務所、施工会社などの専門機関に調査・診断を依頼した。
 
◇(株)伊勢丹本店新館の耐震改修/佐藤行雄、竹本法一((株)伊勢丹ビルマネジメントサービス)、村井義則、田中道治、榎  司(清水建設(株)設計本部)(5ページ)
 最近規模の大きい地震が多発しており、揺れる度にこの建物は大丈夫かなと心配する今日このごろである。平成7年に起きた阪神淡路大震災の被害で市庁舎の中間階が潰れたり、高速道路が横倒しになった映像が脳裏に焼き付いている。ごく近い将来発生するのではないかと予知される関東大震災クラスの地震が発生したら、自分の生活している住宅や会社の建物があのような被害を受けるのではないかと誰でも不安に感じるのは当然の事であり、当社経営陣も同じような不安を感じていた。店舗が倒壊・崩壊することになれば、営業基盤を失うことになり会社存続の危機になることも大いにあり得ることである。その後、平成7年12月に被害の調査・分析の結果「耐震改修促進法」が制定されたのを期に、当社も耐震対策の実施に踏み切った。動機としては、不特定多数のお客様に来店を頂く建物が倒壊・崩壊し、お客様や従業員の生命を奪うようなことは絶対に避けたい。
 
◇立教大学レンガ造建物 耐震改修/中島 潔(立教大学管財部施設課)(6ページ)
 立教大学の池袋キャンパスには、礼拝堂、図書館、本館など赤レンガ造建物7棟が群として現存している。これらの建物は1918(大正7)年「立教学校」設立の地の中央区明石町外国人居留区より、見渡す限りの畑地に農家が点在する池袋へ郊外移転が図られた際に建設されたものである。
 
◇東京大学 赤門総合研究棟の耐震改修/松村 幸保((株)佐藤総合計画 技術・構造)(4ページ)
 緑に溢れる広々とした街路と装飾的なファサードを持つ東大本郷キャンパスは、非日本的な美しさを醸し出している。キャンパスを入ってすぐ右側にある既存経済学部校舎は、1960年代の大学拡張時期に建設された校舎のひとつです。特に外観は、水平の庇が積層しコンクリートの打ち放しの柱梁が均等に繰り返された立面が、キャンパスの中では異質の存在であった。日々新しい「知」が構築されていく大学施設も、創造的活動の場として変化を遂げていく。このような状況下において、大学施設は、恒常化した変化に対応していくフレキシビリティが要求され、耐震補強を契機に内装含めた全面改修が計画された。改修にあたり「継承」=歴史の評価と再編、「継続」=未来への連続性をキーワードに設計を行った。以下に補強選定経緯とその補強内容を紹介する。
 
◇神奈川大学横浜キャンパス再開発/高橋志保彦、島崎 和司(神奈川大学工学部建築学科)(5ページ)
 平成7年(1995年)1月の阪神・淡路大震災は、当時の藤本理事長にとって研究者・建築構造技術者として大きな衝撃であった。地震時に実際の建物がどのように壊れるかを、動的加力実験により解明しようとする研究1)2)を神奈川大学で実施し、ある程度被害の予想はあったが、これほど多くの構造物が被害を受けるとは想定していなかった。このような地震が、神奈川大学の近くで生じることを想定すると、多くの学生を預かる大学として、直ちに建物が安全であるかどうかの確認を行う必要性を感じた。そこで、その年3月に、横浜市設計協同組合(以降YSKと記す)に横浜キャンパスの耐震診断を依頼した。耐震改修促進法が施行される半年以上前のことであった。
 
◇京都大学の耐震改修事例について/上坂 壽治(京都大学施設・環境部施設整備課長)(5ページ)
 東山の山々の木々が色付く季節になると京都市内の吉田キャンパスでは、11月祭がキャンパスを熱くする。京都ほど四季とまちと住人が一体となった都市はないと言ってもそう間違いではないだろう。まちの中央を流れる鴨川やまちを囲む山々の自然がはっきりとした四季をつづる。鴨川の東、京都の自然と歴史と文化に育まれて発展してきたのが京都大学の吉田キャンパスである。
 
◇静岡県庁舎の耐震改修事例/佐野 孝(静岡県総務部庁舎管理室)(6ページ)
 昭和51年に東海地震説が発表されて以来、静岡県では、東海地震対策を県政の重要課題の一つとして、建築物の耐震化など、各種施策に積極的に取り組んできている。なかでも災害対策活動の重要な役割を担う県庁舎の耐震化は極めて重要であり、地震発生後も建物機能を損なうことなく使用できるものでなければならないことから、本県ではこれまで、本館(昭和12年建設)、東館(昭和45年同)及び西館(昭和49年同)の耐震改修をそれぞれ強度型補強工法、制振工法及び免震工法を用いて行った。その概要を紹介する。
 
◇民間企業本社ビルから公共建築物へ(コンバージョン)【目黒区総合庁舎の耐震改修】/津田和征、藤田英二((株)安井建築設計事務所 構造部)(7ページ)
 旧千代田生命本社ビルは、1966年(昭和41年)に村野藤吾設計により竣工した民間企業の本社ビルである。アルキャストを大量に使用して構成した日本で最初の例として知られており、目黒区内の秀景の一つとして「めぐろ風景55」に選ばれたその景観は区民にも慣れ親しまれていた。もともとこの敷地はアメリカンスクール目黒キャンパスとして利用されていたが、昭和38年に調布に移転するに際し、千代田生命が取得し本社ビルを建設したものである。
 
◇日本生命日比谷ビルの耐震改修/飯塚 久幸((株)大林組 東京建築事業部ビルケアセンターリニューアル計画部)、達冨 浩((株)大林組 設計本部設計部)(4ページ)
 日本生命日比谷ビルは、1959年に日本生命の創業70周年を記念して建設されたもので、オフィス街として日比谷公園に面し、帝国ホテル・東京宝塚劇場に接する華やかな街角に立地する、日本生命事務所とニッセイ劇場との複合ビルです。
 
◆災害報告
◇2005年パキスタン地震における建築物被害概要/犬飼 瑞郎(国土交通省国土技術政策総合研究所 総合技術政策研究センター 評価システム研究室長)(11ページ)

 2005年10月8日8時50分(現地時間)、パキスタン(正式名称は、パキスタンイスラム共和国)北部の山間部を震源とするマグニチュード7.5の地震が発生した。被害状況は、2005年11月3日の現地新聞報道によると、死者 73,276人、負傷 69,260人である。2005年11月12日版アジア開発銀行及び世界銀行発表の被害及びニーズ調査報告書(1)によると、被災者総数は400万人、家を失った人は280万人に達している。
 
◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識66」
◇木造建築物における木部の維持保全/中島 正夫(関東学院大学工学部建築学科)(7ページ)

 木造建築物の構造、仕上げには、丸太などの素材や角材・割材などの製材のほか、近年多用されるようになった集成材など、各種の木質材料が使われる。これらの木質材料には様々な劣化現象が生じるが、とりわけ腐朽、蟻害は深刻である。これらを放置しておけば建物の構造安全性の低下を招くばかりでなく、場合によっては人命に関わる問題に直結することがある。このような事態に至る前に木質材料部分(木部)の維持保全を適切に実施することが求められるが、ここでは一般の建物管理者や建築実務者が現場で簡易に実施できるいわば「1次診断」的方法について概要を述べる。
 
◆行政ニュース
◇防火対象物の使用・変更等の届出の整備、避難管理等に係る規定の整備及び防火安全技術講習制度の導入等について火災予防条例の一部を改正/東京消防庁予防部予防課(2ページ)

 都内の雑居ビルなどでは、テナント変更やリニューアル工事が頻繁に行われていますが、これらの中には、工事の計画段階において防火安全上のチェックが行われず、消防の立入検査で始めて違反が確認されるケースが多く存在します。
 
 
 

*情報交流制度にお申し込みいただいた方には、当協会の月刊誌である「建築防災」をお配りしています。

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一般財団法人 日本建築防災協会 建築防災編集係
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