特集「木質ハイブリッド構造」

月刊「建築防災」
No.329 2005/6月号
特集「木質ハイブリッド構造」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識60」
 
※執筆者名の後の( )内の数字はその記事のページ数を表す
◆防災随想 
◇地震に強いエレベータはできないか/濱田信義(濱田防災計画研究室)(1ページ)

 
◆特集「木質ハイブリッド構造」
◇木質ハイブリッド構造の可能性/坂本 功(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授)(1ページ)

 今回の特集「木質ハイブリッド構造」は、直接的には、国土交通省国土技術政策総合研究所と独立行政法人建築研究所が中心となって進めてきた「木質複合建築構造技術の開発」の5年間の成果が、平成15年度にまとまったのをうけて企画されたものである。わたしは、その研究調整委員会の委員長をつとめたので、このまえがき的な文章を書くことになった。ただし、そのプロジェクトの内容については、組織やプロジェクトの進め方の変更なども含めて、別の項で紹介されることになっているので、ここでは、このプロジェクトの背景や木質ハイブリッド構造の将来について、わたしなりに書いてみたい。
 
◇研究開発プロジェクトの概要/河合直人( (独)建築研究所構造研究グループ )(5ページ)
 平成11年度からスタートした研究プロジェクト「木質複合建築構造技術の開発」では、木材と他の材料を複合して用いた木質ハイブリッド構造により、中層建築物への木材利用を可能とするための様々な技術開発が行われ、その結果、木材を活用した4階建て、5階建ての建築物が、現行法規の枠内で建設可能であることが示された。ここでは、プロジェクトの概要として、目的と検討体制、防火及び構造の各分野で行われた研究内容、及び成果の概要について述べる。
 
◇木質ハイブリッド構造の地震時挙動/五十田 博(信州大学工学部 )(4ページ)
 木質ハイブリッド構造の構造形式を整理して図1に示した。木質ハイブリッド部材から構成される構造、立面的木質ハイブリッド構造、平面的木質ハイブリッド構造(上段)、さらにそれらを組み合わせた構造(下段)に分類される。
 木質ハイブリッド部材から構成される構造では、各部材や部材同士の接合部の許容応力度、降伏点、耐力など、設計に用いる特性値がわかれば、構造設計は可能と考えられる。ただし、特性値の評価については注意が必要であり、特に接着剤を併用する場合や、これまで建築用材料として用いたことのない材料との併用の場合には、耐久性、耐候性、耐火性、さらには、クリープ変形やクリープ限界などに対しての配慮を要する。 
 
◇防火性能の確保方策 /遊佐秀逸(ベターリビング筑波建築試験センター)(13ページ)
 「木質複合建築構造技術の開発」プロジェクトにおいて、防火部門の主要な研究目標は、木質複合構造の5階建建築物が建築可能となるような構造方法、及び性能に基づく評価法の開発、木質複合構造の普及に関して、将来の法令改正等に役立つ資料の整備となっている。このうち、を現時点で実現するための研究成果を中心に紹介する。ここで採った手法は、現在の建築基準法に規定する耐火建築物を木質系建築物で実現することを目標に、いわゆるルートAの試験及び評価による大臣認定取得を目指したものである。
 
◇建設事例(エムビル)/桐野康則(桐野建築構造設計)(4ページ)
 木質ハイブリッド構造の建設例として現在金沢で建設中のエムビルを紹介する。柱と梁に一時間耐火の大臣認定を取得した木質ハイブリッド部材を用いている。木造のビルを建てたいという施主・設計者の願いと、木質ハイブリッドの建物を実際に建設することによって実験だけではわからない点を解明したいという研究者の願い、また木質ハイブリッドを世間一般に広く知ってもらいたいという木材メーカーの願いが一つの建物になろうとしている。 
 
◇ツーバイフォー(枠組壁)工法による耐火建築物/沼川次郎(日本ツーバイフォー建築協会)(5ページ)
 各地でツーバイフォー(枠組壁)工法による木造耐火建築物が誕生しています。
 建築基準法第2条第七号ならびに同法施行令第107条の規定にもとづく耐火構造の国土交通大臣認定を日本ツーバイフォー建築協会とカナダ林産業審議会が取得。この認定により、耐火構造が要求される防火地域における100m2を超えるあるいは3階建て以上の建築物、地域にかかわらない共同住宅を含む4階建の住宅、3階建以上の特殊建築物(商業施設、ホテル等)、さらには建築基準法と併せ関係法令で耐火建築物とすることが求められている高齢者施設や保育所等の木造での建設が可能となった。また、低層階をRC造等とし上層階(4層まで)を枠組壁工法とした5~6階建複合建築への道も開かれた。
 密集市街地整備の観点からも、高い耐震性と耐火性能を備えた木造耐火建築物での展開が期待されるところである。
 
◇欧米の動向と建築事例/雨宮陸男(国際木質文化研究所)(5ページ)
 欧米の木質ハイブリッド構造は、人間性の回復と自然への回帰運動が高まってきた1960年代後半から活発になってきた。構造用集成材やLVL(構造用単板積層材)等、エンジニアリングウッドの開発によって、木質材料に対する信頼性が確立され、鉄やコンクリートなどの工業化材料と同等の選択肢に置かれるようになった。これによって、それまで競合していた鉄やコンクリートと複合・混合した革新的な木質ハイブリッド構造をデザインすることが可能になり、スポーツ施設や多目的施設、商業用施設等、大空間が要求される建築物が建設されるようになった。近年では、環境問題と資源保護を背景に、これまで木造に懐疑的だった建築家達も木質ハイブリッド構造に触発されたかのように、木質系の建築物に積極的に取り組むようになっている。
 
◇定期調査報告制度に関する改正について (6ページ)
 
◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識60」
◇建築物の劣化現象と調査機器(その4)/佐藤紀男(佐藤建築事務所)(5ページ)

 従来から、防水工事は専門工事業者による「責任施工」という方式が一般的で、引き渡し時には年数を記入した保証書を提出している。
 この保証書は材料・工法あるいは重大な過失があった場合に適用されるべきものですが、防水に関連する全ての事項に拡大解釈され、利用されるケースもある。
 その背景としては、多くの専門業者がそれぞれ分担された作業を行っているため、業者間(例えば、左官と防水)の接点で不具合が発生した場合には、その責任の所在が不明確なため、取りあえず保証書を頼りに防水業者に問題が持ち込まれるためと推測される。 
 
◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
◇愛知県内の定期報告について/井上暢夫 (愛知県建築住宅センター 首席調査役)(3ページ)

 当センターは昭和48年12月に、愛知県、名古屋市をはじめ県下の特定行政庁と建築関係団体の協力のもと公益団体として設立された。
平成15年度に創立30周年を経て現在、設立目的である建築物等の安全及び住宅の質の向上に関する各種の事業を実施することにより、県民の生命及び財産の保護を図るとともに、居住水準の向上を推進し、もって県民福祉の向上に資することを目的として活動している。
 
 
 

*情報交流制度にお申し込みいただいた方には、当協会の月刊誌である「建築防災」をお配りしています。

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一般財団法人 日本建築防災協会 建築防災編集係
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