特集「阪神・淡路大震災が変えたもの-10年をふり返る-」 

月刊「建築防災」
No.324 2005/1月号
特集「阪神・淡路大震災が変えたもの-10年をふり返る-」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識55」
 
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◆防災随想 
◇新潟県中越地震災害に思う―IT技術と地震対策―/岡田恒男(日本建築防災協会理事長)(1ページ)

 
◆特集「阪神・淡路大震災が変えたもの-10年をふり返る-」
◇「阪神・淡路大震災が変えたもの-10年をふり返る-」の特集にあたって/坂本 功(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授)(1ページ)

 
◇既存建築物の耐震診断と耐震改修の実績と課題/杉山義孝(日本建築防災協会専務理事 既存建築物診断・改修等推進全国ネットワーク委員会 事務局長)(4ページ)
 1995年の兵庫県南部地震による被害状況を目の当たりにし、またその後起こったいくつかの地震、さらに本年10月に発生した新潟県中越地震などを経験して、耐震性能の低い建築物が倒壊・大破することが現実として人々に強く意識されるようになってきている。地震被害の中で人の生命、財産に係るものの被害のほとんどが建築住宅の倒壊・大破によって起こっているからである。既存建築物の耐震診断基準・改修設計指針は1970年代後半に開発され(1990年改訂)、1981年の新耐震設計法以前の基準で設計された建築物の増築の際や避難施設として使われる公共建築物等の耐震性能の確認などに使われ、普及しつつあった。そして兵庫県南部地震をきっかけに既存建築物の耐震改修の推進が重要であることが一層強く認識された。耐震診断基準・改修設計指針が既に開発・実用化されていたので、このような要請に対しても技術的対応をすることが可能であった。これらの技術的裏付けもあったので1995年10月に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」(略称「耐震改修促進法」)が制定され、特定建築物の所有者、管理者に耐震性を確保することの努力義務が課せられ、耐震診断・改修が推進されることになった。
 
◇構造設計について/大越俊男(日本設計参与)(5ページ)
 阪神・淡路大震災の起きた時期は、ちょうど高度情報化社会への転換期であり、バブル経済の崩壊後5年目のことで、社会構造の大変革期になろうとしていた時期でもありました。
 計算機の高度化と普及でシミュレーションが容易になり、免震構造や制振構造が普及し始めていました。建物の性能が分かるようになりつつありました。性能設計の考え方がまとまりつつあり、法制化が図られようとしていた時期でした。
 この大震災は、建築の安全性に対する、構造設計者と市民の考え方の乖離をはっきりさせました。今では、建物には、自動車や電気製品と同じように各種の性能があることが示されるようになり、設計に際しては、発注者や使用者の求める建物の性能を、構造性能メニューを基に、打ち合わせることから始められるようになっています。
 
◇免震・超高層建築物のその後の設計動向/久保哲夫(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻)(5ページ)
 1995年兵庫県南部地震による阪神・淡路大震災から10年を経ようとしている。本稿では、震災から我々は何を学び、建物の安全性確保にどのように反映させてきたかに関し、免震構造建築物、超高層建築物の最近の設計動向を取りまとめることによって整理し、今後の建築物の耐震設計のあるべき方向を探ってみたい。 
 
◇実務から見た耐震診断と耐震改修/藤村 勝(竹中工務店設計部)(4ページ)
 耐震診断および補強技術に関する研究は、民間でも1970年代から着手され、この技術が阪神大震災の被災建物の復旧に生かされた。阪神大震災後に施行された耐震改修促進法により、これまでに極めて多くの既存不適格建築物の耐震診断が実施されてきたが、耐震改修が完了した建物は診断実施建物の2割程度にとどまっている。補強が促進されない要因は、居抜きの工事が困難であることと、補強による建物機能や美観の低下などがある。既存不適格建築物の耐震性の問題は建築界の共通のものであり、上記の要因に対応して開発した補強技術を提供し合い、耐震改修の促進を図る必要があると感じている。
 
◇木造住宅の耐震性/大橋好光(熊本県立大学)(5ページ)
 1995年の阪神・淡路大震災以降、木造住宅は大きく変化をとげた。中でも、構造性能に関わる変化は著しく、新たな段階に入ったと言ってよいであろう。以下、その変化の内容をまとめてみる。
1.規基準の変遷  まず、阪神・淡路大震災前後の法律や規準の流れを簡単にまとめておく。  2階建てまでの木造住宅は、4号建築物と呼ばれ、詳細な構造計算を必要としない。いわゆる壁量設計により、その構造性能を担保してきた。壁量設計のもとでは、構造に関わる構法の改良は、専ら材料や接合部に留まっていた。  しかし、木造建築の見直しの機運に後押しされ、1987年、燃え代設計が法律に取り入れられ、大断面木造建築が可能となる。また、同時に、準防火地域に木造3階建て木造住宅の建設が可能になった。  そして、3階建てには「構造計算」が求められることから、1988年3月、「3階建て木造住宅の構造設計と防火設計の手引き(日本・住宅木材技術センター)」に許容応力度設計法がまとめられた。ただし、本の表題が示すように、この本は、2階建て以下の住宅は対象としていなかった。 
 
◇都市の再生と都市防災研究/豊原寛明、竹谷修一(国土交通省国土技術政策総合研究所 都市研究部都市防災研究室)(4ページ)
 我が国の都市は、高度経済成長期における経済・社会の発展を支えてきたものの、災害に対しては脆弱であり、特に木造密集市街地においては阪神・淡路大震災の教訓から早急に防災性の向上を図る必要がある。また、国民の大多数が都市に居住する本格的な都市型社会の到来を踏まえ、我が国の経済・社会の発展を担う都市整備のあり方は内政上の最重要課題であり、活力と魅力、品格にあふれた都市空間の創出を図る都市の再生に取り組まなければならない。そこで本稿では今後の都市再生の方向性とそれを支える都市防災研究の進展の概要を記すこととする。 
 
◇建築基礎に関する耐震設計の動向/梅野 岳(久米設計構造設計部)(5ページ)
 昨年10月に新潟県中越地震(M:6.5)が発生した。震央付近の川口町では、兵庫県南部地震(M:7.2)以来9年振りに、また、機器計測開始以降では初めて震度の激震を記録した。観測された地震動強さは、最大加速度で約1700Gal、最大速度でも約1.3m/sに達し、神戸の記録を大幅に上回っているが、幸いRC造やS造建物の地震被害はさほど多くはなく、1000棟以上が倒壊・大破した神戸の時とは大分被害状況が異なっている。それにも拘わらず、最盛期の避難人口は10万人に達した。その一因として、地盤災害が多発したことが挙げられる。台風の影響に加え、元々地盤災害の起き易い地形・地盤であったことから、傾斜地の崩壊があいついだ。崩れた土砂が川を堰き止め、家屋を水没させるという新しい震災の形態を見せつけられた。土砂災害は、100箇所以上で発生し、被災した宅地の危険度判定でも400箇所以上が危険と判定された。また、埋戻し土の液状化発生が原因とみられるマンホールの浮き上がりや下水道管の損傷も多数発生した。
 
◇阪神・淡路大震災と地震保険/永島伊知郎(損害保険料率算出機構)(4ページ)
 阪神・淡路大震災が発生した1995年以降、地震に関する研究や建築物の耐震性等に関する研究の発達は目覚しいものがあります。地震保険もこの地震関連の研究成果を取り入れ、地震後2回の改定を行いました。例えば、各機関の調査により1981年の建築基準法改正前に建築された建物と同法改正後に建築された建物の間に耐震性能の違いが報告されました。当機構ではこれを反映して地震保険に建築年割引を導入しました。また、地震の発生とともに、地震保険は急速な伸びを示しました。平成5年度末の契約件数は310万件でしたが平成15年度末には860万件となりました。この10年間で3倍近くになったことになります。このように阪神・淡路大震災は、地震保険を変える大きな力となったのです。
 
◇全国被災建築物応急危険度判定協議会の歩み/平野正利(東京都都市整備局市街地建築部建築企画課長 (全国被災建築物応急危険度判定協議会 運用部会長))(4ページ)
 全国被災建築物応急危険度判定協議会は、地震による被災建築物の応急危険度判定を迅速かつ的確に実施するため、阪神・淡路大震災を契機に、平成8年4月に当時の建設省、47都道府県及び建築関係団体により設立されました。以後、判定活動に必要な要綱やマニュアル等を整備し、全国支援体制を確立してきました。また、判定ビデオの作成、模擬訓練の実施、パンフレットや広報誌発行などの活動を行っています。   この間、鳥取県西部地震や芸予地震、宮城県北部地震、昨年の新潟県中越地震などで応急危険度判定活動が行われました。これらの実体験を踏まえ、協議会は今後も、体制整備に努めてまいります。
 
◇住宅の耐震化に関する現状と課題/国土交通省住宅局建築指導課建築物防災対策室(3ページ)
 耐震性が不十分な住宅は、住宅総数約4700万戸のうち、約4分の1の約1150万戸あります。  このため、国土交通省においては、これまで、税や融資制度の創設等により、耐震改修を行いやすい環境を整備するとともに、重点的に耐震化を図るべき地域については、都道府県又は市町村と連携して直接的に耐震改修に対する助成を実施してきました。
 
◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識55」
◇建築物清掃の管理/岸 正(環境管理総合研究所専務理事)(4ページ)

 建築物清掃の作業を大別すると、ほこりや汚れの除去を主とするビルクリーニング作業と廃棄物の収集・運搬・中間処理などを主とする建築物内廃棄物処理作業とがある。清掃作業のなかで、ビルクリーニング作業は全作業時間の約80%を占め、建築物内廃棄物処理作業は約20%を占めている。
 ビルクリーニングと廃棄物処理を主として実施する建築物清掃の必要性は、衛生的な意義、美観の向上、保全性の寄与、安全性の確保などがある。
 このため、建築物清掃は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下略称:建築物衛生法)」において規定されている。また、同法で規定されている事業登録制度のひとつの業種(登録建築物清掃業)ともなっており、建築物清掃の果たす役割がより一層重要とされている。
 
◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
◇島根県建築住宅センター/柳原恒徳(島根県建築住宅センター常務理事)(3ページ)

 当センターは昭和49年に建築基準法第12条に基づく特殊建築物定期調査・報告業務を実施する目的で設立し、この時点で、全国で13団体が設立されていたと聞いております、その内のひとつとして業務開始を行い現在に至っています。
 この背景は、昭和40年代に大きな火災事故が多数発生した事によるものであります。
 昭和43年の兵庫県有馬温泉池の坊満月城旅館火災・同44年福島県磐梯熱海温泉磐光ホテル火災・同47年大阪市千日デパートビル火災・同48年熊本市大洋デパートビル火災等、多数の死傷者が出る火災事故でありました。
 幸いなことに島根県においては、このような大きな火災事故はありませんでしたが、この間、水害等の自然災害は10年周期で被害に遭っております。
 今年は、多くの台風に因る風雨災害が西日本を中心に発生し多数の人命や財産が失われました、また、新潟県中越地震ではそれにも増して大きな災害となりました、被災された方々には、心からお見舞い申し上げますと共に一日も早い復興願うものであります。
 
 
 

*情報交流制度にお申し込みいただいた方には、当協会の月刊誌である「建築防災」をお配りしています。

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一般財団法人 日本建築防災協会 建築防災編集係
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