(特集「木造住宅の耐震診断と補強方法」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.321 2004/10月号
特集「各種の事故とその防止対策」
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識52」

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◆防災随想 
◇恐ろしい物品販売販売店の火災/桜井秋楽(千代田区まちづくり推進部参事)(1ページ)
◇就任の挨拶/井上勝徳(国土交通省住宅局建築防災対策室長)(1ページ)

◆特集「木造住宅の耐震診断と補強方法」
◇木造住宅の耐震診断法のあゆみ/坂本 功(東京大学大学院工学系研究科教授)(3ページ)
 この「建築防災」誌を出している日本建築防災協会の「木造住宅の耐震精密診断と補強方法」(文献1)が全面的に改訂されて、「木造住宅の耐震診断と補強方法」(文献2)として、刊行された。私は、その改訂委員会の委員長をやらせていただいた。その改訂版の詳細は、改訂委員会の原案作成部会で部会長を務めてくださった岡田恒氏(独立行政法人建築研究所)をはじめ何人かの方々が、この後に書いてくださることになっている。それで私は、最初の診断方法が作られてから今回の改訂に至るまでの経過を、ふり返ってみることにしたい。

◇木造住宅の耐震診断と補強方法の改訂の考え方/岡田 恒(独立行政法人建築研究所)(4ページ)
 近い将来に予想される東海、東南海、南海地震に対する恐れなどから、既存木造住宅の耐震診断および補強を推進すべきだとの声が高まっている。木造住宅の耐震診断と補強については、「木造住宅の耐震精密診断と補強方法」日本建築防災協会と日本建築士連合会の共編集(以下、旧版と呼ぶ)が、昭和54年にその初版が発行されて以来、広く利用されてきている。その旧版は、容易に耐震診断ができることで、極めて高い評価を得ている。 しかし近年、木造住宅の耐震性能に関して、さまざまな技術的検討が進められ、多くの知見が得られてきている。その中には耐力壁とはいわれていない非耐力壁の耐震性能の評価がある。また伝統的な木造の耐力要素の評価などもできるようになってきている。補強技術についても、新しい技術開発が進んできている。制振デバイスなどもその1つである。このような新しい知見の一部はすでに、2000年の建築基準法の改正、住宅の品質確保促進等に関する法律の制定に伴う耐震性能の評価基準などの形で生かされてきている。
今回、改訂作業にあたっては、これら新しい知見をできるだけ採り入れ、次のような諸点の改善を図った。 1)伝統的構法などへも適用できるよう対象とする構工法の拡大 2)耐震診断の目的の明確化と精度の向上 3)補強方法の評価法を充実、補強結果の耐震診断への反映 この改訂が、旧版以上に、耐震診断と耐震補強の促進に寄与できれば幸いである。

◇一般診断法の考え方と概要/腰原幹雄(東京大学大学院工学系研究科助手)(5ページ)
 一般診断法の診断結果は、住宅の耐震性能と、地盤・基礎による地震時に起こりうる被害警告の大きく2つに分けられる。 このうち、住宅の耐震性能は上部構造評点として評価されるが、この評点は大地震時の必要耐力に対する建物の保有する耐力の比で表される。
また、建物の「保有する耐力」は、「強さP」、「耐震要素の配置による低減係数E」、「劣化度による低減係数D」の積によって算出される。
今回の改訂にあたっては、「強さ」において柱頭・柱脚の接合法による低減、「耐震要素の配置による低減係数」において4分割法、床構面の剛性・耐力の評価を新規に採用して、現行基準法、品確法に適合させている。

精密診断法1(保有耐力診断法)の概要と考え方/大橋好光(熊本県立大学環境共生学部)(7ページ)
 精密診断は、一般診断等で倒壊の可能性が指摘された住宅について、より詳細な診断を行う場合、及び補強後の耐力の検証方法として用いることを想定している。そのうち、精密診断1は、基本的な考え方は一般診断と同じで、旧版の壁量による精密診断に、新しい知見を加え改良したものである。診断は、「上部構造の耐力の診断」と「各部の検討」からなる。「上部構造の耐力の診断」における各耐力要素の耐力は、その荷重-変形曲線を完全弾塑性モデルに置き換え、エネルギー一定則に基づいた保有耐力の考え方で評価している。そこで、この診断法を「保有耐力診断法」と呼んでいる。耐力要素には、いわゆる耐力壁だけでなく、開口付き壁や垂れ壁付き独立柱も加えることで、より詳細に、また、伝統構法も診断できるものとなっている。

精密診断法2の考え方と概要/河合直人(独立行政法人建築研究所)(4ページ)
 精密診断法2は、補強の要否を判断するためにより精緻な診断を行う場合や、ダンパーなど特殊な方法を用いた場合の補強後の診断を行う場合などを想定して、高度な計算を用い、これらに対応可能な診断法となっている。精密診断法2には、保有水平耐力計算による方法、限界耐力計算による方法、時刻歴応答計算による方法の3つがある。従って、精密診断法としては、精密診断1の保有耐力診断法にこの3つを加えた4つの方法があり、診断を行う建築物の特性等に応じて、適宜選択することとなる。ここでは精密診断法2に含まれる3つの方法について、考え方と概要を述べる。

◇補強方法の考え方と概要/五十田博(独立行政法人建築研究所)(5ページ)
 今回の改訂にあたって、耐震補強の項ではこれまでの補強方法の一例に加え、補強計画という項を設け、どのように補強を進めるべきかという観点から整理をおこなった。改めて読んで見ると極めて当たり前のことが多く、良心的な業者とわざわざ言わなくても一般の耐震改修で普通におこなわれていることばかりと感じた。しかしこのような普通のことがなされないまま、耐震補強を簡単な工事と考えて、計画が不十分なまま、施主に対する説明も十分でないまま進められている現状を再認識した。 ここでは、改訂版で述べた耐震補強の計画を再掲するとともに、今回の改訂項目のひとつである新しい補強方法の評価と考え方などについて記述する。紙面の制約もあって具体的な補強方法についてはあまり触れられないが、対象建物は様々で、用いる構法もそれに合わせてケースバイケースである。補強の基本的な考え方を十分理解した上で、その対象建物に適した補強方法を選択し、適切にアレンジして用いることが重要で、このあたりが設計者の腕の見せどころともいえる。

◇「誰でもできるわが家の耐震診断」のねらい/木村惇一((有)木村設計室)(2ページ)
 誰でもできるわが家の耐震診断は、ごく普通の一般国民とくに一般家庭の主婦向けに開発されています。国民自ら診断することにより、耐震にかんする意識の向上・改修知識の習得・高次診断へつなげるのが目的です。1.この診断法のコンセプト
1)診断者は、自己用木造住宅に住む全国民(職業・年齢・性別・資格は不問)
2)答え易い問診形式(一般ユーザーが住まいの体験から判断出来るよう答え易くする)
3)行政広報誌などの配布媒体に適切な分量(分かり易い10問、しかしポイントははずさない。自治会、町内会、消防団、村、町、区、市、都道府県などあらゆる行政単位、NPOなど建築関連団体での勉強会のテキストに便利なように)
4)一般ユーザーが専門的な診断者に質問できる下地(耐震知識)の提供

◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識 52」
◇室内空気環境の管理/柳 宇(国立保険医療科学院建築衛生部主任研究官)(4ページ)
 近年、日本では「シックハウス症候群」と呼ばれる、ホルムアルデヒド(HCHO)や揮発性有機化合物(VOC)などによる室内空気汚染に関わる問題に社会的注目が集まっている。国(厚生労働省、国土交通省など)や学会・団体などからの精力的な取り込みにより、多くの成果が挙げられ、シックハウスを対策するための建築基準法の改正が行われた。 室内空気汚染問題に関しては、1980年代入るごろから欧米を中心に起こった「シックビル症候群(SBS)」がまだ記憶に新しい。1970年代のオイルショック以後、建築物の気密化と取り入れ外気量の削減が省エネルギ手法としてとられたことはSBSの大きな原因とされている。
日本では、建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律、1970年に制定)があったからこそ、オイルショック時でも対象建築物の取り入れ外気量が確保され、欧米のような大規模なSBSを回避することができた。しかしながら、冒頭に述べたように、近年、化学物質による室内空気汚染が問題となっており、それに対応した室内空気環境の管理が重要となって来ている。
本文では、室内空気汚染物質濃度の構成機構、室内空気環境の管理とその現状、揮発性有機化合物による室内空気汚染問題の性質などについて述べる。

◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
◇(財)岩手県建築住宅コーナー/佐藤元彦((財)岩手県建築住宅センター常務理事)(4ページ)
 昭和45年の建築基準法改正に伴い、本県の定期報告制度の推進を図るため、昭和47年県の指導のもとに関係団体で構成する「岩手県建築安全連絡協議会」が設立されました。 その後、建築・住宅に関する技術の普及啓蒙や適切な住宅情報の提供、また県営住宅等の管理業務も担える公益法人へと、時代の要請を受けて昭和51年、当時の連絡協議会のほか他の5団体を構成とする「岩手県建築住宅センター」に発展的な改組をして現在に至っております。
当センターは、自主事業として建築確認検査、住宅性能評価、建築物耐震診断・耐震改修判定、定期報告等の業務、また受託事業として県営住宅の維持管理、県民住宅プラザの運営、住宅金融公庫審査、住宅性能保証、宅地建物取引主任者資格試験等の業務のほか、イベント事業として「いわて住宅祭」の事務局業務と、主にこの3つを主要な柱として現在の事業を展開しています。

◆ぼうさいさろん
◇写真に見る関東大地震(その3)/塩原等(東京大学工学系研究科)(3ページ)
 1923年の関東大地震では、本震の直後から東京や横浜の各所で火災が発生して、震動により倒壊した構造物による圧死から逃げのびた罹災者を、至上最悪の市街地火災が襲い掛かった。東京では、東京市及び郡部の合計178カ所で火災がおこり、火災は各方面に延焼した。東は本所、深川、向島に火の手が向かい、北は南千住から浅草、下谷、神田、日本橋に燃え広がった。南は芝、芝浦に、西は牛込見附、三番町、六番町、赤坂見附におよび、虎ノ門など宮城を一周した。地震から18時間後の翌日9月2日午前6時には大体鎮火したが、部分的に延焼が止まらず、9月3日午前10時ごろようやくすべてが鎮火した。東京で延焼経過の記録が詳細に残されているのに対して、横浜市の火災の状況についての記録は余り残っていない。しかし、東京市と同様に市中心部で火元が密集して、市街地火災が生じたことは全く同様でその悲惨さは東京以上であったという。横浜市の火災による死者は2万3千人に達した。

行政ニュース
(財)日本建築防災協会岡田恒男理事長内閣総理大臣から防災功労者の表彰
(1ページ)
 本会の岡田恒男理事長(東京大学名誉教授)は、9月3日、防災体制の整備における功労から、小泉純一郎内閣総理大臣より平成16年度防災功労者の表彰を受けました。 岡田理事長の表彰の功績概要は次のとおりです。
建築物の耐震設計の第一人者として、日本地震工学会会長や日本建築学会会長を務め、長年にわたる建築物の耐震化に関する研究を通じて我が国の防災力の向上に貢献した。
 中央防災会議「東海地震対策専門調査会」座長として、強化地域の見直し及び被害想定の検討を行い、さらにそれらの結果を踏まえ、予防対策から災害発生時の応急、復旧・復興対策にいたる東海地震対策全般について、そのあり方をまとめるなど、現在進められている東海地震対策の検討の基礎を築いた。
 阪神・淡路大震災に際し、日本建築学会に設置された委員会の委員長として、実地調査に基づき建築及び都市防災に関する提言をとりまとめたほか、被災した家屋の応急的な安全性を判断し、余震による二次的な被害を防ぐための「被災建築物応急危険度判定システム」の確立に尽力するなど、建築物の耐震化や地震時の応急対策の推進に大きく貢献した。

その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
mail:kenbokyo@kenchiku-bosai.or.jp

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