特集「実務のための既存鉄骨造体育館等の耐震改修の手引きと事例」

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.320 2004/9月号
特集「実務のための既存鉄骨造体育館等の耐震改修の手引きと事例」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識51」

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◆防災随想 
◇消防法令の性能規定化の現状について/ 村上明伸(前消防庁予防課設備係長)(1ページ)

◆特集「実務のための既存鉄骨造体育館等の耐震改修の手引きと事例」
◇鉄骨造体育館の耐震診断と耐震改修の考え方/高梨晃一(東京大学名誉教授)(4ページ)
 鉄骨造の体育館(屋内運動場)の耐震診断、耐震改修の事例はR/C造の建物に比べて格段に少ない。R/C造の診断、改修は学校校舎を主として数多く実施され、多くの事例がある上、改修後に実際強地震の襲来を受けて実効果を経験済みのものもあるくらいである。兵庫県南部地震の際、何らかの被害を受けて調査を必要とした鉄骨造体育館の数はR/C造校舎の1/10程度であり、各学校には必ず体育館が設置されていることを考えると体育館の被害はかなり少なかったといえよう。それは誠に幸いであった。周知のように震災後体育館は避難場所として多く使用された。大きな空間が取れることと床が木製であることによるのだろう。小中学校の体育館であればそれは居住地に程よく分布しいて利用価値が高い。このように震災後の避難場所になるということを前提に鉄骨造体育館の耐震診断、耐震改修設計を考えていかなければならない。以下この観点から診断と改修設計を考えてみたい。

◇「手引と事例」の考え方/宇田川邦明(東京電機大学工学部建築学科教授)(4ページ)
 「手引と事例」の考え方では、実務者のための「既存鉄骨造体育館等の耐震改修の手引と事例」における適用建物の範囲と架構の種類を先ず示す。続いて、補強設計のための補強方針、即ち、ゾーン型補強にするか全架構型補強にするか、そしてそれらの補強を靭性補強を目指すか強度補強を指向するかの選択、決定した補強方針を実現するための補強計画、補強部材・接合部の詳細設計 等の進め方と概略を述べる。また、非構造部材の補強設計の重要性についても示す。

◇補強設計の原則/藤村 勝(竹中工務店設計部構造副部長)(4ページ)
 鉄骨造体育館等の架構形態には様々なものがあり、耐震上の問題点も多岐にわたっている。従って、適切な補強計画を立案するためには既存鉄骨造体育館等の実態を十分に調査した上で、耐震診断計算により現状の力学性状を正確に把握し、補強目標に見合う適切な補強計画を立案する必要がある。本章では、鉄骨造体育館等に適切な補強を実施するための設計作業全般にわたる原則を記述している。

◇補強方法と補強部材の設計/岡田健良(アフェクト設計事務所所長)(5ページ)
補強方法の選定と補強部材の設計の原則
鉄骨造体育館等では、従来より屋根面の補強を前提として、建物を一体化させる全架構型の補強を中心に行われてきた。しかしながら工期の増加など、屋根を改修することによる費用対効果は、必ずしも良いとはいえない。また、補強目標が極めて高い場合では、妻面へ地震力を伝達させようとするあまり、却って屋根や妻面の補強を過剰にせざるを得ない状況を生みだすことにもなる。そこで、選定フローに示すように、張間方向について、ゾーン型の補強を行うことを原則とし、部分的に応力が集中することによる弊害を減らすことを計画する。しかしながら、ゾーン型だけでは目標性能を満足させることが困難な場合には、屋根面の補強を行って、各構面の一体性を確保するように計画する。

◇補強建物の耐震性能の評価と判定/太田 勤(堀江建築工学研究所所長)(4ページ)
補強建物の耐震性能の評価
(1)補強建物の構造耐震指標RIsiおよび保有水平耐力に係わる指標Rqiは、第3章に規定した補強部材の終局耐力、および「診断改修指針」または「屋体基準」の諸規定に基づき次式により算定する。
◇非構造部材の被害例と対策/藤村 勝(竹中工務店設計部構造副部長)(6ページ)
 鉄骨造体育館等では、過去の大地震ばかりでなく最近発生した2001年芸予地震や2003年十勝沖地震において、一部の建物に天井材や壁材などの非構造部材に重大な被害が生じた。体育館等は変形状態が異なる構造材や非構造部材が取合う部分が多いため、一般の建築物よりも非構造部材に被害が発生しやすい。また、大空間を形成していため非構造部材の被害は人命に直接的な影響を及ぼすため、安全性を慎重に検討する必要がある。本章では過去の地震被害を踏まえ、体育館等の非構造部材への適切な地震対策を講じるための要点をまとめている。

◆ぼうさいさろん 
◇写真に見る関東大地震(その2)/塩原 等(東京大学工学系研究科)(3ページ)
 鉄筋コンクリート造建物の被害  1892年の濃尾地震の後、耐震性に問題があることが指摘された組積造に取って代って次第に増えていったのが鉄筋コンクリート造や鉄骨造であった。しかし、当時の建築基準法にあたる市街地建築物法の施行規則には耐震規定はなかった。つまり構造設計は設計者の判断に委ねられていた。そのころ既に大正始め頃から、次第に施工効率の高い北アメリカの東海岸の建築技術が日本に上陸してきた。東京駅正面の丸ビルを始めとして近代的なビルの施工が行われた。しかしこれは、地震のない北アメリカ東海岸で発達した鉄筋コンクリート造や鉄骨造であり耐震性能は十分ではなかった。

◆建築保全のための建築物調査の基礎知識51
「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」 の概要について/齋藤敬子(ビル管理教育センター調査研究部研究情報課)(3ページ)
 「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下略称「建築物衛生法」)」は、多数の者が使用又は利用する建築物について、環境衛生上の維持管理に関して必要な規制を加えることにより、居住者の健康の確保を図ることを目的としている。  なお、建築物の高度化・多様化が進展する現在、建築物衛生法に基づく衛生管理により、衛生水準が向上するとともに、その役割がより一層重要とされている。
このため、本稿では、建築物衛生法の概要について解説するとともに、その維持管理に携わる建築物環境衛生管理技術者の職務と役割について述べることとする。

◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
◇沖縄県建築設計事務所協会 -消費者保護が命題― /金城政栄(沖縄県建築設計事務所協会専務理事)(3ページ)
 県内の建築設計事務所180者で組織を構成しています。本会は、昭和30年7月に沖縄建築設計監理協会として産声を上げ、沖縄の悲願であった本土復帰を果たした直後に社団法人となり、名称も建築士事務所協会、そして昨年7月に建築設計事務所協会に改称して今日に至っています。本会の会員は、設計・監理業務を中心とした専門家集団ですので、組織名称の中に「設計」を入れて広く県民からわかりやすい名称にしたのです。

その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

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