特集「ヘルスモニタリング技術」 

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.318 2004/7月号
特集「ヘルスモニタリング技術」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識49」

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◆防災随想 
◇建築行政の今後の課題について/平山 博(東京都都市整備局市街地整備部防災担当課長)(1ページ)

◆特集「ヘルスモニタリング技術」
構造物のヘルスモニタリング山本鎭男早稲田大学理工学総合研究センター客員研究員)(7ページ)
 構造物は、建設後、年を重ねるごとに構成する部材の強度が徐々に低下して、その結果として、構造物全体の耐震性能が低下するものである。従って、その耐震性の低下を予測することは、社会的資産である構造物の保守・保繕を計る上で重要な課題である。これを人間の健康管理に当てはめて考えてみると、人間は、毎年あるいは何年かおきに人間ドックに入り、各種の検査を受けて、健康上の異常の早期発見に努めている。人間の健康管理のように、構造物も年を経るに従って発生する耐震性の劣化の程度を判定するための検査を施す必要があり、これを構造物のヘルスモニタリングと呼んでいる。

性能評価のためのヘルスモニタリング技術濱本卓司武蔵工業大学工学部建築学科教授)(5ページ)
 建物の損傷は、竣工後、ライフサイクルを通じて絶え間なく進行している。建物の損傷は、地震や暴風のような自然災害、あるいは火災や爆発のような人為災害により突発的に生じることもあれば、腐食や疲労のように徐々に進行することもある。前者の場合、発生頻度は小さいが、いったん発生するとその損傷度は大きくなる。後者の場合、短期間の損傷度は小さいが、長期間経過した後の累積量は無視できない。
こうした損傷は建物の性能と密接に関係している。一般に、損傷度が大きくなればなるほど、安全性、使用性、耐久性といった建物の性能は低下する。したがって、損傷度を定量化する損傷指標を適切に定義できれば、建物の性能を定量的に評価するための道が開かれることになる。すなわち、損傷指標を用いて、その時点での性能を定量的に測ることができれば、それを当該建物の要求性能と比較することにより、既存建物の性能評価を合理的に行うことができる。

リモートセンシングとGISを用いた救助・救援活動/濱本卓司(武蔵工業大学工学部建築学科教授)(7ページ)
 二つの超高層ビルが相次いで崩壊するという信じがたいWTCテロのテレビ映像を目の当たりにした多くの人々は、半信半疑でしばし茫然自失状態となった。しかし、それが現実に起こった現場では、崩壊の前も後も、救助・救援活動は絶えることなく続けられていた。とくに、崩壊時には、救助・救援活動において前例のない多数の犠牲者を出すという不運にも見舞われた。
こうした状況下で、救助・救援活動は、2棟の超高層ビルの崩壊に引き続き発生したさらなる周辺ビルの崩壊1)によって巨大化した瓦礫の山を相手に続けられた。しかし、瓦礫の山はときに崩落するかと思えば、ときに内部で散発的な火災や小爆発が発生するといった状態で、救助・救援活動にとっては危険の山以外の何者でもなかった。また、膨大な量の瓦礫を隅から隅まで捜索しているような時間的余裕は与えられていなかった。
これ以上の犠牲者を出すことなく、かつ時間との戦いでもある救助・救援活動を続けるために、リモートセンシング、GIS、GPSといった新技術が導入された。これらの技術はWTCテロに限らず、複数の建物が崩壊し広域火災が発生する大地震時の都市においても有効であると期待される2)。ここでは、WTCにおいてこれらの技術がどのように利用され、実際の経験を通じてどのような教訓が得られたのかを、文献に基づき紹介する。

リスクの制御とヘルスモニタリング/三田 彰(慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授)(5ページ)
 自己責任、という言葉が巷間で頻繁に交わされるようになっている。リスクがあることを承知であることを行ったのであれば、そのリスクの帰結は自分で責任を持つべきだ、という論旨のようである。ただし、個人が負うべきリスクと組織や国家が負うべきリスクとの境界のあいまいさが、議論に混乱を招いているように見えて仕方がない。
なにごとにもリスクがあり、ものごとに「絶対」がないことを人々は認識し始めている。しかし、外資系の所有する東京のオフィスビルのほとんどは地震保険に加入しているのに対し、日本の企業の保有するものはごくわずかといった現実がある。天災は対処すべきリスクとして日本の企業は認識していないのではないかと思わせる一面である。あるいは、なんとかなるという文化があるのかもしれないが。
では、日本の企業の保有するビルもすべて地震保険に加入すれば良いのか?といえばことはそう単純ではない。東京の天災にかかわるリスク量は世界の都市で最も多く、再保険市場のすべてをかき集めてもそのすべてをまかなうには足りないのである。リスクの総量を減らすか、再保険市場以外の市場を利用しない限り、東京の天災リスクに対処することはできないのである。
そうした状況を改善するための一助となることを期待して、本稿は、都市・建築のリスクの制御に定量的なリスクの評価が不可欠なことを示し、そのこととヘルスモニタリングのかかわりについて簡単な解説を試みる。

ヘルスモニタリングの実施例 日本女子大学百年館,慶應義塾大学日吉来往舎/岡田敬一(清水建設技術研究所先端技術開発センター主任研究員)(5ページ)
 光ファイバセンサ、MEMSセンサ等の次世代型センサが実用段階に入りつつあり、情報技術の発展により膨大なデータの伝送・処理が可能になった現在、大量のセンサをネットワークにつなぐことで新たなサービス・価値を創出する試みが各分野で盛んに行われている。建設・エンジニアリング分野における「構造ヘルスモニタリング」もそのうちのひとつで、センシング、データ伝送、データ処理・評価の各要素技術をシステムとして統合し各種の建設構造物に組み込むことにより、その健全性の監視や損傷・劣化の診断を行うものである。
このコンセプトに基づき、我々はインターネットを利用した遠隔監視による構造ヘルスモニタリングシステムを構築し、複数の構造物に適用してきた。ここでは、まずモニタリングシステムの概要を紹介し、続いて制震建物の「日本女子大学百年館」および免震建物の「慶應義塾大学日吉来往舎」におけるモニタリング実施例を紹介する。

◇国土技術政策総合研究所・都市防災センター棟/森田高市(独立行政法人建築研究所構造研究グループ主任研究員)(4ページ)

道路橋のヘルスモニタリング 羅 黄順(計測リサーチコンサルタント企画開発室)(6ページ)
 橋梁といえば、東京の玄関口を飾るレインボーブリッジや明石海峡大橋の雄大な姿を思い浮かべるひとが多い。土木構造物のなかでも橋梁はもっとも華やかなランドマークであり、その意味で、市井では建築構造物と混同されるほどである。鉄道や水路を除いて道路に限っても、全国には長さ15mをこえる国道の道路橋が12万橋以上もあると云われており1)、その構造形式、材料、建設時期、管理主体、利用状況、自然環境などは実に千差万別である。さらにこのような多岐にわたる道路橋の半数が、2030年には供用50年を超えて老朽化が進むと見られている。本稿では、これらすべてを網羅することはできないが、さまざまな橋梁の現状を概観したうえで、ヘルスモニタリングの基本的考え方、手法、実施例などを紹介する。

◆建築保全のための建築物調査の基礎知識49
建築空間の天井の維持保全について(その3)/山口輝光(日本鋼製下地工業会事業委員長)(5ページ)
 天井の標準化、規格化への移行と実施
今、天井分野で建築市場に供給されている天井は、大きく2分類に大別できる。
①軽量鉄骨天井
②システム天井
建築物の生産、建築工法などでの要求事項やそれに伴う条件への共通事項として、天井全体の不燃化、乾式工法、プレハブ工法、部材の規格化、施工の省力化・合理化等が上記の①と②の共通点としてあげられよう。天井の部材や製品等の工業化による製造が急速に進み、これらのことから標準化、規格化が大きな課題であり、このことを解決することが重要な役割、使命である。
そこで、すでに軽量鉄骨天井下地工法に関しては、詳細に述べてきた。今回は、システム天井工法について、種々説明することとしたい。

◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
◇秋田県建築住宅センター(3ページ)
 当センターは昭和48年5月16日に財団法人秋田県建築住宅相談所として設立され、今年で31年目を迎えます。
設立当時、急激な住宅建築の需要増による不適正工事や請負契約、不動産取引におけるトラブルが多発し、消費者保護の観点からも建築行為に関する正しい知識の普及を行う必要性が高まっておりました。生活環境の充実・向上を図り、調和の取れた快適な住生活と建築産業の助長を目的に業務を開始し、その後も社会の変化と県民のニーズに対応した新しい業務に取り組んでおります。

その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
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