特集「ニューヨークWTCテロ災害(その2)」

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.317 2004/6月号
特集「ニューヨークWTCテロ災害(その2)」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識48」

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◆防災随想 
◇構造技術者としての地震防災活動/安部重孝((株)東京ソイルリサーチ・(社)日本建築構造技術者協会・耐震診断補強委員会委員長)(1ページ)

◆特集「ニューヨークWTCテロ災害(その2)」
WTCタワー内部の状況と避難行動/吉田克之(竹中工務店設計本部副部長)(8ページ)
 今から40年ほど前、わが国で超高層ビルの建設がはじまったころには避難計画に関しての研究が盛んに行われた。これまで国内では、筆者が知っている限りでは2件の超高層事務所ビル火災があった。幸いに大事に至らずに済み、避難行動の調査(文献1)が行われ、一部の実態が明らかにされた。その後は避難計画に参考となる火災は、断定はできないが発生していないと思われる。超高層ビルにおける避難行動はまだ分からない部分が多い。その点、今回の事故から学ぶことはたくさんあると思う。ここでは主にインターネットを中心に収集したWTCの生還者の証言から推察できた、内部の状況や避難行動について報告し、今後の超高層ビルの避難計画の参考としたい。

◇WTCの構造的特徴/佐野友紀(早稲田大学人間科学部)(5ページ)
 都心で生活する中で、自分が高層ビル内など非常に高い場所や、地下鉄ホームなど非常に低い場所といった地面からかけ離れた場所にいる時間が非常に長くなっていることに気づく。今いる場所から他の場所に移動する時に、平地であれば様々な経路を選ぶことができる。しかし、高層ビルともなれば、エレベータまたは、階段を利用するなど、限られた方法の中からの選択となる。
これが、火災や事故などによる避難となれば、なおのことで、エレベータの利用は禁じられ、人々は緊急用に作られた狭い階段を利用するほかはない。特に車いす利用者を含む身体に障害を持つ人々は、エレベータ利用以外の方法での垂直移動が困難であり、火災時の避難は大きな問題と考えられている。
2001年9月11日に起きたニューヨークWTCテロ事件は、超高層ビルへの飛行機の衝突およびビルの崩壊という特異な事件であった。しかし、その時に行われた超高層ビルでの全館同時避難という面から見ると、火災避難の事例として大きな教訓を残している。障害者、高齢者など身体能力に制限のある人々の避難については解明されていない部分も多く、このような人々の避難事例の分析は問題解決の糸口となる。そこで、これら災害弱者の避難行動に着目し、国内外の報道・出版メディアで報じられた避難に関する証言・事例の収集を行った。ここでは、避難者の身体能力ごとに避難行動について事例をまとめる。また、WTCビルは、1993年の地下爆破テロ事件を受けて、防災対策を行っている。これが今回の避難に大きく貢献したと言われている。そこで、これらの対策の避難への寄与についても検討する。

リモートセンシングとGISを用いた救助・救援活動/濱本卓司(武蔵工業大学工学部建築学科教授)(7ページ)
 二つの超高層ビルが相次いで崩壊するという信じがたいWTCテロのテレビ映像を目の当たりにした多くの人々は、半信半疑でしばし茫然自失状態となった。しかし、それが現実に起こった現場では、崩壊の前も後も、救助・救援活動は絶えることなく続けられていた。とくに、崩壊時には、救助・救援活動において前例のない多数の犠牲者を出すという不運にも見舞われた。
こうした状況下で、救助・救援活動は、2棟の超高層ビルの崩壊に引き続き発生したさらなる周辺ビルの崩壊1)によって巨大化した瓦礫の山を相手に続けられた。しかし、瓦礫の山はときに崩落するかと思えば、ときに内部で散発的な火災や小爆発が発生するといった状態で、救助・救援活動にとっては危険の山以外の何者でもなかった。また、膨大な量の瓦礫を隅から隅まで捜索しているような時間的余裕は与えられていなかった。
これ以上の犠牲者を出すことなく、かつ時間との戦いでもある救助・救援活動を続けるために、リモートセンシング、GIS、GPSといった新技術が導入された。これらの技術はWTCテロに限らず、複数の建物が崩壊し広域火災が発生する大地震時の都市においても有効であると期待される2)。ここでは、WTCにおいてこれらの技術がどのように利用され、実際の経験を通じてどのような教訓が得られたのかを、文献に基づき紹介する。

ニューヨーク市の建築規制の動き/塚田市朗(日本建築センター評定部長)(4ページ)
 ワールドトレードセンター崩壊後の高層建築の建築基準のあり方について検討するため、ニューヨーク市建築局は、2002年3月に「ワールドトレードセンター建築規制検討本部」を設置し、その検討結果を2003年2月に公表した。本稿は、その報告書において述べられている勧告の部分について、我が国の建築基準との簡単な比較をしながら、概要をご紹介するものである。
なお、同検討本部報告書については、世界建築主事会議(World Organization
of Building Officials)理事の山中保教氏(建築技術教育普及センター専務理事)が一部翻訳をされており、本稿で示す我が国建築基準との比較表も同氏の作成によるものである。

海外での調査・研究/山田常圭(独立行政法人消防研究所プロジェクト研究部長)(6ページ)
 WTCテロ事件後、その事態の重要性に鑑み、2001年、総務省消防庁特殊災害室において「超高層建築物テロ災害等消防安全懇談会」が設けられた。この懇談会の主たる目的は「建設時に想定されない態様および規模の衝撃力等が作用するようなテロ行為等により、被災した超高層建築物における消防防災活動の安全確保に関して今後の方策を検討する」こととされたが、現実には議論に足る技術情報が限られ、先ずは参加メンバーが入手可能な断片的な情報を収集する場としてスタートした。筆者は、この活動の一環として『1年を経過した米国でどのような研究・調査が進められているか、また行政的な対策において変化が現れたのか』等の情報を収集するため、2002年9月18日から1週間程度、訪米する機会を得た。その際の内容については一部報告している1)が、それから更に1年半以上経過し、研究成果も徐々に公開されつつある。本稿では、1年半以前の海外におけるWTCの調査研究活動と、その後の研究の進展を含め概要を紹介したい。
WTCテロ事件での被害は、テロという特殊事情を別にしても、事件発生後の構造的崩壊・火災拡大過程、避難・救助活動等のヒューマンファクター等々、建築安全にかかわる広範な内容を包含しており、個々の研究者の調査・研究だけでは事件の全体像の把握は不可能である。今後の方策の検討にあたっては系統だった調査・研究の戦略が不可欠である。この事件直後から、様々な面から超高層ビルの包括的な安全に関する国際的な会議の場が持たれてきており、研究・調査は多分に、国際的、組織的な情報のネットワークを基盤に推進されている。まずはそうした国際的な研究活動体制から紹介したい。

災害報告 シャルルドゴール空港ターミナルビル崩落事故について /淡野博久( OECD行政管理・地域開発局)(2ページ)
 2004年5月下旬に発生したパリ北東部に位置するシャルルドゴール空港第二ターミナルの一部崩落事故は整備されたばかりの公共建築としては未曾有の惨事としてフランス国内外に衝撃を与えました。フランスに在住し、同空港をよく利用する立場等から簡単に関連状況等を報告させていただきます。なお、事実関係等の記述はこちらの新聞、テレビ、インターネット等にて報道・掲載されていたものにすべて由来しており、当方として直接関係者に照会した結果ではありません。あくまでも報道等を元にした一市民による報告とご理解ください。

◆建築保全のための建築物調査の基礎知識48
建築空間の天井の維持保全について(その2) /山口輝光(日本鋼製下地工業会事業委員長)(5ページ)
 天井の変遷  天井の変遷を語るには、何といっても、重要なポイントにあげられるのは、社会的な背景や法律的な制限そして建築の工法の革新等があげることができる。
1)社会的な背景とそのニーズへの対応
建築空間の内部の部位の床、壁、天井においても社会的な背景には重要な要素や大きな役割と使命を担っている。建築基準法の目的には、『建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資する』ことを目的としている。
しかし、時代的な変化や社会的ニーズへの対応などの遅れから大きな社会問題となることがこれまで起きてきている。そのような問題を内在するケースが発生してきた。記憶に遠いところで恐縮であるが、大阪の千日ビル火災死者118名、昭和47年5月13日に発生、次に、熊本の大洋デパート火災死者101名その他、千葉のデパートの全焼など大火で尊い生命が失われてきた。また静岡の地下街、商店街の火災もあげられる。それらによって、建築物や地下街の火災の対策などへの教訓になったことも事実である。
これらのことから建築物の内部空間の不燃構造化及び不燃化が早急な課題となり、法の改正や整備が実施されてきた。

定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
兵庫県住宅建築総合センター(4ページ)
 財団法人兵庫県住宅建築総合センター(以下、「住建センター」という。)は、良好な住宅の建設を推進するとともに建設業界及び関係業界の健全な振興を図り、県民の福祉の向上に寄与することを目的として昭和50年に設立され、その後、時代の要請に応えて事業の拡充を図りつつ、来年4月1日で創立30周年を迎えます。  住建センターの事業は、住宅性能保証、住宅性能評価、建築確認検査、住宅展示、阪神・淡路大震災被災住宅再建のための利子補給や総合住宅相談などの住宅に関する事業と特殊建築物等の定期報告、既存建築物の耐震診断改修計画評価などの建築に関する事業の2本柱となっています。

◆全国ネットワーク委員会ニュース
◇ 平成15年度第2回全体委員会開催報告 既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会/事務局日本建築防災協会(文責 杉山 義孝)
(16ページ)

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