(特集「ニューヨークWTCテロ災害(その1)」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.316 2004/5月号
特集「ニューヨークWTCテロ災害」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識47」

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◆防災随想 
◇火災からの避難/梨本雅久(東京消防庁予防部予防課)(1ページ)

◆特集「ニューヨークWTCテロ災害(その1)」
WTCの構造概要と被害状況/篠崎洋三(大成建設(株)設計本部)(5ページ)
 20世紀の建築構造において欠くことのできない建物の1つであろうWorld Trade Center(以下WTC)は、構造設計者ロバートソンの言を借りると、「シアトルからニューヨークに移った私は、いくつかのアイデアと新しい技術を思いつきチームで開発していった。この技術の多くは今や構造設計において標準的なものになっている。狭い窓と密な柱からなるチューブ構造は、我々というより建築家ヤマサキからの提案で、人々が安心して窓際に立ち超高層階からの眺望を楽しめるようにとの配慮から生まれたものだ。柱・梁の鉄骨ユニット化、アウトリガーシステム、超高層ビルの風荷重と居住性への設計手法、粘弾性体ダンパー、外装材への動的風荷重の評価、耐火パーティション・・」本稿では、この先駆的建物の構造概要と2001年9月11日に起きた事故の概要を述べる。

◇WTCの構造的特徴/太田外氣晴(足利工業大学建築学科客員教授)(6ページ)
 ニューヨーク(NY)、WTCビルの構造的な特徴は、日本の高層建築物とかなり異なる。即ち、内柱は上部の重量を支えるだけで風荷重等の横力は負担せず、外柱がこれを負担すること、コアの外側にある床梁はトラス構造で端部はピン構造に近い簡単なもので、外柱の継ぎ手は日本より簡便である。
日本の高層建築物は剛性の高い厚肉型鋼の柱と梁が剛に接合され、これで水平力を負担するフレーム構造である。日本の高層建築物は米国を追ってきたが、なぜNY、WTCビル流の構造が取り入れられなかったか、という疑問が一部にあった。その答として日本の高層建築物の足取りなどの歴史を振り返りながら、WTCビルの構造の特徴を整理する。

◇進行性崩壊のメカニズム/大井謙一(神戸大学工学部建設学科教授)(5ページ)
 飛行機が衝突した直後は、ああ頑張って立っているな、と思っていたら、暫くしてあんなにあっけなくバタバタッと崩壊してしまうとは思わなかった。この進行性崩壊のメカニズムについては、様々の解説やドキュメント番組がある。本稿の前半では、事件の直後アメリカ土木学会の論文誌に速報として掲載されたBaZantのWTCビルの崩壊メカニズムに関する簡略解析例[1]について、抄訳を紹介したい。基礎的な弾性振動論と塑性解析論に立脚して、WTC崩壊のメカニズムに関する基礎的な考察と概略の評価を行っており、その簡単化した力学モデルや解析手法は、崩壊のメカニズムを大づかみに理解するのに極めて参考になる。
一方日本では地震被害は多いが、あんなにパンケーキ状にバタバタと潰れる例は余り経験していない。例えば、阪神淡路大震災で神戸市庁舎が中間層崩壊したが、それが下層部の進行性崩壊にはつながっていない。本稿の後半では、BaZantの論文を参考にして、進行性崩壊を防ぐための条件について簡単な考察を試みる。

◇航空機衝突時の挙動解析/小鹿紀英(鹿島建設(株)小堀研究室)(7ページ)
 ニューヨークワールドトレードセンターの一定時間経過後の全体崩壊は、予想だにしなかった現象ではあったが、現在では火災による部材の強度低下がその直接の原因であったことは、ほぼ統一的な見解となっている。一方において、航空機衝突時には建物は崩壊せず、一定の避難時間を確保できたということもまた注目すべき事実であり、この航空機衝突直後になぜWTCが全体崩壊に至らなかったのかを解明することは、冗長性を考慮した設計を考える上で重要なことであると考えられる。
そこでここでは、航空機衝突直後の建物の損傷状況と応力状態を解析的に明らかにすることにより、衝突時になぜ全体崩壊に至らなかったかを解明することを目的とする。

◇耐火性能からみたWTC/西垣太郎(大成建設(株)技術センター建築技術研究所)(12ページ)
 WTCタワーはボーイング767のタワーへの激突→構造体の損傷→ファイヤーボールの生成→火災の発生→進行性崩壊というプロセスで全体崩壊した。写真1はWTC2のファイヤーボールとWTC1の火災である。WTC1、WTC2は航空機衝突によりただちに崩壊したわけでなくそれぞれ1時間43分後、56分後に崩壊しており複回階同時火災が崩壊の大きな要因になっている。この報告では、既往の文献を参照しつつ火災と耐火性能の観点から崩壊過程を考察する。

◆建築保全のための建築物調査の基礎知識47
◇建築空間の天井の維持保全について(その1)/山口輝光(日本鋼製下地材工業会事業委員長)(4ページ)
 建築空間の中で室内の上部を区画構成する部位を天井という。ここであらためて表現するまでもないのであるが・・・。
建築空間は、床、壁、天井によって実体的に構成される。従って、床と壁と天井は、建築の三要素であるということができる。建築の内部空間はこの三要素つまり、この三つの部位から具体的に境界または区画され、各々の居住環境に必要な性能、機能性を保有することが条件である。
社会経済の進展要請、時代的な変化から建築物に必要不可欠な機能性の多様化、高度化、複合化、技術革新さらには、新工法の開発等の進む中で建築や設備等の分野に携わる者は、自らの努力と研鑚を重ね資質の向上を目指すことが最重要な課題でありその責任と役割を果たさなければならない。そこで筆者なりに各々の建築分野の第一線で活躍されておられる方々のための技術資料として系統的にまとめて提供することとする。

◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
◇(財)熊本県建築住宅センター/松野皆治((財)熊本県建築住宅センター常務理事)(5ページ)
 熊本県建築住宅センター常務理事1.はじめに  建築物の安全性の確保を推進するとともに、住環境及び建築住宅技術に関する知識の啓発普及に努め、県民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって地域社会の発展に寄与することを目的に、県及び熊本市、並びに関係11の団体が共同して、平成3年12月、財団法人熊本県建築住宅センターを設立した。
当財団は、これまで建築物の定期報告関係事業、住宅に関する相談業務等を実施してきたところであるが、建築確認業務が民間に開放されたことで、平成12年2月建築確認検査機関の指定を受け、さらに同年10月、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく、評価機関の指定も受け、それら業務拡大に伴って組織の拡充を図って、県民のニーズに応えて来たところです。
現在の主な業務は、以下のとおりです。
〇 建築確認の審査検査業務
〇 住宅金融公庫委託業務+適合証明業務
〇 住宅性能保証業務
〇 住宅性能評価業務
〇 建築物等の定期報告業務
〇 住宅相談業務等委託業務
〇 耐震診断評価業務

◆住宅耐震化のうごき
◇公開討論会レポート:徹底討論!いまこそ産官学民の協動-耐震化推進心と地域防災力向上への提言-/国土交通省中部地方整備局建政部(6ページ)
 6,433名の犠牲者を出した阪神淡路大震災から9年。東海・東南海・南海地震の発生が危惧される今、阪神の教訓を生かして地震対策に取組むことが強く求められています。
中部地方整備局では、去る1月17日(土)、「耐震化の推進」と「地域防災力の向上」をテーマに、産官学民それぞれの役割や協働のあり方を考える公開討論会『徹底討論!いまこそ産官学民の協働
~ 耐震化推進と地域防災力向上への提言』を開催しました。本稿ではその模様を御紹介します。

◆災害報告
◇2003年12月26日イランBam地震による建築物の被害調査報告/前田匡樹(東北大学大学院都市・建築学専攻助教授)・真田靖士(東京大学地震研究所助手)・Ali Niousha(鹿島建設技術研究所主任研究員)・M.R.Ghayamghamian(International
Institute Of Earthquake Engineering And Seismology(IIEES),Assistant Professor)(10ページ)
 地震の概要と調査方法
2003年12月26日にイラン南西部ケルマン(Kerman)州で地震(Mw=6.6)が発生し、バム(Bam)市とその周辺の人口約12万人の約2割である2万6千人余の人命が失われる大災害が発生した。地震の概要を以下に示す。
・発生日時 2003年12月26日1時56分(UTC)
・震源 29.00°N、58.34°E、深さ10km
・規模 Mw=6.6 (以上、USGSより)
日本建築学会では、土木学会、日本地震工学会および文部科学省科学研究費・突発災害調査研究調査団と合同で、現地に調査団を派遣し被害調査を行った。筆者らは、日本建築学会の調査団(団長・源栄正人
東北大学大学院教授)のメンバーとして(一部併任)被害調査に参加し、Bam市の建築物の被害調査を行った。建築学会調査団の構成および調査日程を以下に示す。


■日本建築学会調査団の構成  団長 源栄正人(東北大学)     大野晋、前田匡樹(東北大学)
久田嘉章、柴山明寛(工学院大学)     真田靖士(東京大学)、Ali
Niousha(鹿島建設)  カウンターパート M. R. Ghayamghamia(IIEES)


■調査日程  2月23日  成田→Tehran    24日  IIEESで情報収集    25日  Tehran→Bam、被害調査    26日~ Bamで被害調査  3月1日  帰国(源栄、大野、前田、Niousha)    4日  帰国(久田、芝山、真田)  


本報では、イランの建築物の耐震設計基準、強震記録が得られたGovernor’s
Building周辺の建築物の被害の全数調査結果、及び、個別に詳細調査を行った建物の被害について報告する。

その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
mail:kenbokyo@kenchiku-bosai.or.jp

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