(特集「宮城県北部連続地震(2003年7月26日)」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.312 2004/1月号
特集「宮城県北部連続地震(2003年7月26日)」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識43」

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◆防災随想 
◇テロ時代の安全計画/吉田克之((株)竹中工務店)(1ページ)

◆特集「宮城県北部連続地震(2003年7月26日)」
◇地震と被害概要及び対応について/宮城県土木部建築宅地課)(5ページ)
 さる7月26日に発生した宮城県北部連続地震は1日に3回も震度6弱を上回った直下型の地震で、地震エネルギーの大きさの割には局部的に大きな被害をもたらした。奇跡的に死者はなかったが、被災した県民にとっては大きな痛手となった。宮城県では、5月26日にも三陸南地震にみまわれており、二重の痛手である。
これらの地震は、1978年の宮城県沖地震を思い起こさせるに十分なものであり、今後の県の地震対策にも大きな課題を残したものとなった。

◇建築物被害調査報告/河合直人(国土交通省国土技術政策総合研究所・建築研究部)(7ページ)
 7月26日宮城県北部連続地震の直後、国土技術政策総合研究所(国総研)及び独立行政法人建築研究所(建研)では、木造建築物を対象とした現地調査を行った。木造建築物の上部構造の振動的な被害としては、開放的な構造の農家型住宅や、道路に面して開口の大きい店舗併用住宅の倒壊や大破が目に付いた。また、1階軽量鉄骨造で2階在来軸組構法の併用構造の住宅で1階層崩壊があった。一方、傾斜地や盛り土、軟弱地盤における地盤変状に伴う基礎や上部構造の被害も見られた。住宅以外では、壁の下部を石積み、上部を土塗壁とした倉庫(納屋)が多く、その倒壊が多い。学校や病院、庁舎など、木造の公共建築物の被害は比較的軽微であった。また、社寺建築の中には、大破又は一部倒壊など、大きな被害を受けたものがあった。

◇耐震改修の有効性/田中礼治(東北工業大学工学部建築学科教授)(6ページ)
被害の大きかった宮城県矢本町に構造が類似したRC造の2つの中学校があり、1校は耐震補強した学校で、もう1校は無補強であった。無補強の校舎は被害を受け、耐震補強した校舎は無被害であった。このことは明らかにRC造校舎の耐震補強が地震に対して有効であったことを示した事例として貴重である。1995年に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が施行されて以来、全国で多くのRC造校舎の耐震補強が行われてきたが、本格的に耐震補強したRC造校舎が大きな地震に見舞われたものとしては今回の地震が我が国最初のものではないかと考えられるし、また、大きな地震における耐震補強の有効性が実証されたことも重要な資料であろうと考えられるので報告する。
ここでの報告は2003年7月26日宮城県北部の地震に関する日本建築学会災害調査WG(委員長 田中 礼治 東北工業大学 教授)の調査(文献1)による所が大きい。WGの各委員の御協力に厚く御礼申し上げる。

◇2003年7月26日宮城県北部の地震による公立文教施設の被害調査報告/前田匡樹(東北大学大学院都市・建築学専攻助教授)、西田哲也(秋田県立大学建築環境システム学科講師)、田子茂((株)堀江建築工学研究所)、梅園雅一((有)万建築設計事務所)(11ページ)
 5月26日に宮城県沖を震源とする地震が発生した宮城県では、7月26にも県北部において内陸直下型の地震が連続して発生し、震度6弱以上の揺れが1日に3回観測された。この地震の規模は5月の宮城県沖地震と比較すると小さかったものの、震源が内陸で深さが約10kmと浅く、震源付近を中心に大きな被害をもたらした。日本建築学会東北支部では、地震直後に災害調査委員会(委員長:田中礼治東北工業大学教授)を設置し、被害調査を行った。その調査の活動の一環として、筆者らは公立小中学校施設の被害調査を行った。調査対象は、災害救助法の適用を受けた5町のうち、南郷町を除く4町(鹿島台町、鳴瀬町、矢本町および河南町)の公立小中学校25校のうち鳴瀬第二中(未確認であるが被害なし)を除く24校のRC造校舎および体育館とした。調査した学校施設と震源などとの位置関係を図1に示す。調査は、8月1日(金)から3日(日)の3日間で行い、まず各町の教育委員会などから被害状況の情報収集を行った後、各学校の現地調査を行った。部材の損傷度や建物の被災度の判定は、(財)日本建築防災協会の「震災建築物の被災度区分判定基準及び復旧技術指針,2001.9」に基づいて行った。調査団は、以下の2グループで構成し、各町内の学校を分担して調査した。

◇建築物被害調査報告-悉皆調査による面的な被害分析-/佐藤健(東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター講師)(5ページ)
 本報告は、2003年7月26日宮城県北部地震に対して、日本建築学会災害調査WG内に設置されたWG1(地震・地震動)とWG4(生活関連の被害)の合同調査グループによる建築物の被害調査報告である。ただし、個別の被害事例に対する被害原因の究明などを主眼とした詳細な調査ではなく、面的な被害分布を明らかにするための悉皆調査である。
最終的な被害調査の成果としては、WG1による被災地における本震の再現地震動評価に関する研究成果と連携し、建築年代の属性を考慮した木造建物の被害率関数の構築を予定しているが、本報告では現在までに整理された知見の一部、および調査の概要を紹介する。

◇罹災証明の発行について/豊島榮一(宮城県矢本町役場地域整備課長)(6ページ)
 平成15年7月26日土曜日、震源地をほぼ同じくして0時13分前震(震度6弱)、7時13分本震(震度6強)、16時56分余震(震度6弱)の宮城県北部連続地震が局地的に発生した。
道路は亀裂・陥没・崩壊し、民家のブロック塀等は倒壊して道路に散乱し、家屋は全壊・半壊等が多く、裏山のガケ崩れが民家に押し寄せている。幸いにも、死亡者と火事がなかった。しかし、住家の被害は(平成15年10月22日現在の調査結果)、全壊427棟,半壊1262棟、一部破壊2788棟で全世帯の4割強の約4200世帯が被害を受けている。
町としては、り災者に対する税の減免等や救済支援のために個々の被害調査が必要となる。突然の災害の中で、行政側ではどのように被害調査をし、り災証明を出しているのか、震災の事務処理の一端を示し今後の地震対策の一助にしていただければ幸いです。

◆建築保全のための建築物調査の基礎知識43
◇維持保全計画の策定と普及(その1)-維持保全計画とは-/野々山光邦((社)建築・設備維持保全推進協会)(5ページ)
 社会的資本である建築物のストックが、その機能を十分に発揮し、利用者に安全で衛生的な環境を提供するためには、診断・改修まで含めた維持保全として計画的に実施しなければならない。また、昨今の社会情勢において、PFI(Private Finance Initiative)、デュー・デリジェンス、官公庁のストックマネジメントなどでも、維持保全計画の重要性がますます高まってきている。また、12条資格者の直接係わるものでは、定期報告に係る建築基準法施行規則の一部改正(H15.9.1施行)により、報告書様式の項目(関連図書の整備状況の項)において、維持保全計画及び準則の有無をチェックすることとなっている。(規則第5条第2項)
維持保全計画の作成や普及について、社団法人建築・設備維持保全推進協会(BELCA)の考え方に沿った、維持保全計画の作り方として、主要な項目の検討内容、時期、重要なポイントについて整理する。

◆定期報告関係地域法人紹介コーナー
◇(財)和歌山県建築住宅防災センター(4ページ)
 和歌山県は、本州のほぼ中央部紀伊半島の西南部に位置し、北、東は和泉山脈、紀伊山脈の山々が連なり、西は、624kmにおよぶリアス式海岸で変化に富んで美しく、特に南部の海岸は、山裾が黒潮に洗われ橋杭岩をはじめとする奇岩が海中にそびえ立ち雄大な眺めとなっています。
反面、その地理的条件から紀伊水道を北上する台風により古くから幾多の高潮による被害を受け、また地震による津波には、1854年の大津波、1946年 の南海道大地震などの大きな被害を受けており台風と地震の多い全国有数の災害県であります。
平成14年7月26日に「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が制定されたところです。当地震の発生に際しては特に津波による被害が予想され、和歌山県全体として、全半壊あわせて10万棟を越える建築物の被害が予想されています。県民の命を守るために「稲村の火」に代表される
地震防災の教訓を生かし、支援措置を充実していく考えです。

◆防火材料等関係団体及び材料・構造紹介コーナー
◇耐火クロス製防火・防煙スクリーン/(社)日本シヤッター・ドア協会(4ページ)
 耐火クロス製防火・防煙スクリ-ン(以下クロススクリ-ン)は平成8年より、旧建築基準法第38条による建設大臣認定物件に限り防火設備として使用されておりました。
しかし、建築基準法が性能規定化等の目的で平成10年に大改正、平成12年に施行令、告示が施行され、これによりクロススクリ-ンは平成14年から性能等(遮炎性・遮煙性及び避難に関する要件)を満たせば、国土交通大臣の認定を取得することができ、一般的に使用が可能となりました。
今後クロススクリ-ンは防火設備として、飛躍的に需要が拡大することが予想されますので、当協会はこの状況に対応すべく設計、製作、施工をはじめ、維持管理に関する事項まで自主的に「技術標準」に制定しましたので、紹介をします。当協会会員はこの「技術標準」をもとに、より高性能でかつ安全な製品を提供するべく一層の努力を重ねるものであります。また、クロススクリ-ンをご使用いただく各位、建築確認申請等の行政判断をする方々に「技術標準」を活用していただければ幸いに存ずる次第であります。

その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
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