(特集「東海地震対策」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.311 2003/12月号
特集「東海地震対策」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識42」

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◆防災随想 
◇阪神・淡路大震災と地震防災への備え/大和田文雄(都市基盤整備公団総合研究所)(1ページ)

◆特集「東海地震対策」
◇東海地震対策の見直しについて/岡田恒男((財)日本建築防災協会理事長、東京大学名誉教授)(2ページ)
 この度、国の東海地震対策が大幅に見直された。すなわち、本年5月に中央防災会議に提出された「東海地震対策専門調査会報告」に基づき、「東海地震対策大綱」が定められ、7月には、「東海地震の地震防災対策強化地域に係わる地震防災計画」が修正され、更に、「東海地震緊急対策方針」が閣議決定された。具体的な対策については、これらを受けて今後、関係省庁、自治体、企業などで検討される必要があるが、昭和53年に大規模地震対策特別措置法が制定され本格的な対策が始まって以来の大々的な見直しであるので、対策の効果が一層あがることが期待される。
筆者は、これまで、東海地震を対象とした静岡県の建築物の耐震化に関する種々のプロジェクトに関わってきたが、今回、東海地震対策の見直しの方針を検討した「東海地震対策専門調査会」の座長を務めた。本稿では、見直しの方針などについて概説する。

◇東海地震対策大綱の制定の経緯と概要について/筒井智紀(内閣府(防災)地震・火山対策担当参事官付参事官補佐)(5ページ)

 平成15年5月29日の中央防災会議において「東海地震対策大綱」が決定された。これまでの東海地震対策は、昭和53年に制定された大規模地震対策特別措置法(大震法)に基づき、どちらかというと地震予知に基づく防災体制に重点が置かれていたが、今回、東海地震対策の抜本的改革を行い、「予防段階から災害発生後まで含めた東海地震対策のための全体のマスタープラン」としての大綱が策定され、緊急耐震化対策や地域の災害対応力の強化、広域防災体制等の対策が盛り込まれた。

◇震前・震後の地震対策-今私たちは何に取り組むべきか-/重川希志依(富士常葉大学環境防災学部教授)(6ページ)

 21世紀前半に,東海地震,東南海地震,南海地震が発生する可能性の高まっていることが専門家から指摘されている。近代社会となった日本が初めて体験する広域かつ大規模震災に備え,社会を構成する一人一人の市民が何を備え,震災に直面した時にどう対応すればよいのかを考え,その知識を皆で共有しておくことは,被害を防ぎ,被害を軽減するために最も重要なことである。

◇東海地震と液状化/若松加寿江(東京大学生産技術研究所)(7ページ)
  駿河湾およびその西部沿岸地域を震源域とする巨大地震の切迫性が高いと指摘されてから四半世紀余りが経過した。その間、平成13年(2001年)には想定震源域が見直され、その結果、震源域は西へ移動して面積は当初より約2割増えた。
本稿では、上記の震源域にマグニチュード8程度の地震が実際に発生した場合、この地震によって起こると予想される液状化の影響範囲、液状化の起こりやすい場所、および被害の形態を、過去の液状被害の様子を交えて述べる。

◇ 地震考古学と南海トラフの巨大地震/寒川 旭(東京大学生産技術研究所客員教授、産業技術総合研究所主任研究員)(8ページ)
 1986年の春、琵琶湖北西岸に位置する滋賀県高島郡今津町を訪れた私は、偶然、教育委員会で埋蔵文化財を担当している葛原秀雄さんに紹介された。彼と話をしているうち、発掘中の北仰西海道遺跡に奇妙な現象が見られることを知った。それは、本来なら水平に堆積しているはずの砂層が富士山のように持ち上がり、大昔の墓が変形しているというものだった。早速、葛原さんと一緒に発掘現場へ駆けつけた。そこでは、砂層から上昇した砂が上を覆う粘土を引き裂いており、液状化現象によって噴砂が流出したことをはっきりと示していた。

◇建築技術者からミル東海地震対策/福和伸夫(名古屋大学大学院環境学研究科教授)(7ページ)
21世紀と共に中央省庁が再編され、中央防災会議が内閣府に移管された。これを契機として、東海地震に関する検討が活発化した。本年5月には東海地震対策大綱がとりまとめられ、7月には東海地震緊急対策方針が閣議決定された。この精力的な検討を受けて、被災が予想される地域でも、自治体や企業、市民を中心に様々な対応行動が始まった。特に、大綱の中で最優先事項として示されている建築物の耐震化については、多面的な促進策が展開されつつあり、建築技術者への期待も大きい。そこで、本稿では、最近の動きを建築の立場から読み解くと共に、建築界における地震対策の現状を分析し、今後の課題について考えてみる。

◇学校施設の耐震化について/工藤和美(シーラカンスK&H(株)代表取締役)(4ページ)
  学校建築の耐震化の必要性が明らかになってから、随分時間がたってしまった感があるが、一昨年からようやく本格的に設置者である自治体や私学の理事会が動きはじめているのを肌で感じるようになってきた。3年以内に耐震性の確認をせまった文部科学省の指導が効いているようである。それでも、手をつけなくてはならない学校数の前に、一挙にとはいえないもどかしさも感じる。しかし、少子高齢化社会においては、これを機会に21世紀のビジョンで学校を再生しようという意気込みも生まれはじめている。その現実と向かうべき方向性についてまとめてみることにする。

◆行政ニュース
◇耐震診断改修の促進に向けて/二本柳基(仙台市都市整備局住宅宅地部住環境整備課長)(2ページ)
 仙台市では、平成7年1月の阪神淡路大震災を受けて、大きな被害を受けた木造住宅を中心に建物の耐震性強化に向けた市民の取組みを促すため、市民意識の啓発を主体とした施策を進めてきた。
そのような中、平成12年11月、政府の地震調査研究推進本部から、「宮城県沖地震の長期評価」として宮城県沖地震の発生する確率が発表され、それは、今後20年以内に80%、また今後30年以内に90%という非常に高いものであった。
宮城県沖地震はいつ起きても不思議ではなく、本市における地震対策は待ったなしの状況となっており、市民による建物の耐震性強化の取組みを一層、強力に推し進めるべく、建物の耐震診断への支援へ踏み出すこととし、平成14年度から地震時に最も倒壊の危険性が高いと指摘される戸建の木造住宅に耐震診断士を派遣し、耐震診断を実施する事業を開始し、平成15年度には、木造共同住宅と分譲マンションを対象に耐震診断を実施する事業を開始することとした。

◆建築保全のための建築物調査の基礎知識42
◇タイルの維持保全について(その3)-補修・改修の方法と要点-/小笠原和博(㈱INAX建材商品開発室)(6ページ)

 タイルは、耐久性に優れた仕上材料であるが、施工された状態では、経年に伴い劣化が始まり、そのまま放置すれば劣化が進行し、建築物の機能を低下させたり、美観を損ねたり、外壁では剥落により第三者障害を発生させるおそれがある。そのため、定期的な点検、調査、診断を行い、劣化現象を早期に発見するとともに、適切な材料、工法により、補修・改修する必要がある。補修・改修にあたっては、劣化の状態、劣化の原因、修繕によって何年もたせるかなどを勘案して設計する必要がある。また、劣化現象は原因が複合していたり、場所によって劣化の状況、原因が異なる場合が多いので、状況に応じた適切な補修、改修が必要となる。その3では、タイルの補修・改修の方法と要点について述べる。

◆定期報告関係地域法人紹介コーナー
◇(財)なら建築住宅センターの定期報告業務(5ページ)
 財団法人なら建築住宅センター(以下「センター」という。)は、奈良県をはじめとする県内の主な地方公共団体及び建築関係団体などからの出捐により昭和50年3月に設立された公益法人(財団法人)であり、建築物の安全性の確保、適正な維持管理の推進及び質の向上を目的として、幅広い分野で業務を行ってまいりました。 特に平成12年には、建築基準法に基づく指定確認検査機関として奈良県知事の指定を受けて確認検査業務をを開始し、建築物の的確な確認・検査を通して、社会に貢献してきたところです。
また、センターの運営は、各出捐団体から選出された役員によって構成される理事会により、県民の利益向上の観点から公正に行われており、今後も建築物や住まいに関わる様々な分野において幅広い貢献ができるよう、各出捐団体と連携して、県民本位の運営を行って行くこととしています。このように、センターは、行政や建築関係団体と協働し、お互いに補完しあいながら、県民が安全・安心で快適に暮らせる建物づくりのサポートを行っているところです。 

◆防火材料等関係団体及び材料・構造紹介コーナー
◇スラグせっこう板/セメントファイバーボード工業組合(3ページ)

戦後、住宅復興が国の緊急課題としてクローズアップされ、徐々に住宅建設が促進されるに従い、耐火性能も強く求められる様になって来たが、その傾向の中でも特に九州地方において“防火板”と称される不燃建材の開発が進められた。
その“防火板”とは正しくはパルプセメント板とよばれ、セメント・無機質繊維材料・パーライト及びパルプ・無機質混合剤を主原料とし、おもに建築物の内装を用途として抄造成型された防火建材である。
性能的には、不燃性・耐火性そして吸音性・保湿性を備え、そのうえ施工も簡便でしかも低廉な価格という条件もあって急速に普及していった。
昭和34年、建築基準法施行令による建設省告示第2543号「準不燃材料及び難燃材料の指定」告示をうけ、防耐火思想のたかまりとともに、不燃建築材料の需要は益々伸長していった。

◆定期調査報告コーナー
◇特殊建築物等定期調査報告マークの活用状況について(お知らせ-その3-)/(財)日本建築防災協会(1ページ)

本誌の平成15年1月号でお知らせしましたように、本会と定期調査報告関係地域法人(25団体)とで作成いたしました定期調査報告マークは、商標登録が平成14年11月に完了いたしました。
これを受け、特定行政庁および定期調査報告関係地域法人では、この定期調査報告マークを用いた定期調査報告済証を発行したり、建築防災に関する安全を示顕するマークとして使い始めました。
平成15年6月号、10月号で、定期調査報告マークの活用状況をお知らせいたしましたが、その後、新たに1団体でマーク使用を始めましたのでお知らせいたします。
今後さらに、この定期調査報告統一マークが広く活用され、多くの特殊建築物等で定期調査報告が確実に実施されることにより建築物の安全性の向上に寄与することを願っております。


その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
mail:kenbokyo@kenchiku-bosai.or.jp

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