(特集「マンションの長期耐用化技術4・マンションの維持管理・後編」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.310 2003/11月号
特集「マンションの長期耐用化技術Ⅳ・マンションの維持管理・後編」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識41」

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◆防災随想 
◇腑に落ちぬこと/濱田信義(濱田防災計画研究室)(1ページ)

◆特集「マンションの長期耐用化技術Ⅲ・マンションの維持管理・後編」
◇既存ストックの有効利用/勅使河原正臣(独立行政法人建築研究所構造研究グループ)(7ページ)
 現在、高度経済成長期に建設された数多くの建物にその建替え時期が切追している。それらの建物は、比較的立地条件の良いところに建てられているものが多いが、数十年以前の建築計画に従って設計されているため、空間の狭さや設備更新への対応の悪さといった機能面での間題が多い。更に、耐震規定についても現行基準以前の基準に従って立てられたものが多く、耐震性能が不足しているものが多い。これらの理由から、既存建物はスクラッブ&ビルド方式で建替えられることが多い。
一方、限りある資源の有効利用や地球温暖化ガスの増大といった、地球環境間題の観点より、スクラップ&ビルドからの脱却が不可避な状況であり、既存ストックの長寿命化による有効利用が重要な課題となってきている。その為には、既存建物の快適性・使用性・長寿命化のための耐久性の向上のみならず耐震性能を向上させる必要がある。

◇マンションに要求される品質と品質維持上の課題/野口信義(大京管理㈱総合企画室副部長)、樋田義郎(㈱大京商品企画部課長)(3ページ)
平成13年に国土交通省において住宅建設五箇年計画が策定され、さらに住宅市場整備行動計画(アクションプログラム)が公表された。バブル経済崩壊後の国民の住宅ニ一ズを反映して、このアクションプログラムの主要施策として「安心して売買できる中古住宅市場を作ること」と「市場の評価が長続きする質の高い住宅リフォームの実現」が掲げられている。また民間分譲マンション供給戸数日本」である㈱大京とマンション管理戸数日本一の大京管理㈱を主とする大京グループでは「品質性能ims」を標語として住宅の品質性能の向上に取り組んでいる。そこで、本稿では大京グループの住宅ストックの品質向上に対する取り組みを織り交ぜながらマンションの維持保全上の課題について記述する。

◇マンション管理(現状)の問題点と今後の課題/道幸康広(日本住宅管理(株)企画部)(4ページ)

 今日、「マンション管理の適正化に関する法律」の制定や「建物の区分所有等に関する法律」の改正など分譲マンションに関する国による政策が行われ、マンション管理組合ならびに管理会社を取り巻く環境が変化し、マンション管理組合の保護・育成が図られています。
 しかしながら、管理組合の運営に関しては各区分所有者の意識は以前よりは確かに高まってきているとはいえ、現場に携わっている者としては区分所有者の管理組合運営に関する意識が改善されたとは必ずしもいえず、逆に、自己の権利ばかりを主張し義務は果たさないといった方々が、増えてきているようにも思われます。このような現状に鑑み、管理に関する問題点ならびに今後の課題について考察してみました。

◇マンション管理会社の現状と今後の課題/島田義則(大成サービス(株)管理事業本部住宅管理部次長)(4ページ)

「マンション」は、所有形態の違いにより分譲マンションと賃貸マンションに分かれ、管理会社の業務内容も分譲マンションと賃貸マンションではそれぞれ異なります。分譲マンションについては、居住人口の増加に伴い、分譲マンションを巡る問題が社会問題化し、昨今、新聞雑誌等で取り上げられる機会が多くなっています。ここでは、いろいろと話題の多い分譲マンション(投資型マンションは除く)に絞って、管理の現状と問題点、今後の課題などについて話を進めます。
※投資型マンションとは、本人は居住しないで、他人に賃貸するマンションで、ワンルームタイプが多いマンション。

◇ マンション定期調査資格者の心得-安全・安心のために-/望月利一((有)東京建物検査事務所代表取締役)(4ページ)
 日本人の新しい住まいとしてマンション(集合住宅)が、本格的に分譲される様になっておよそ30年~40年程が過ぎましたが、初期のマンションに比べ最近のマンションは都市開発と共に高層化し、その町の二一ズに合った建物が多様化されました。馴染みの薄かったマンションも次第に住こなされて最近は郊外から都心に移って、価格もバプル後ある程度安定し、都心でもサラリーマンにも購入出来る様に設定されてきました。
これからも快適な住まいをめざして、買い換えや新築マンションの購入が増えると思いますが、一番大切なことは「維持管理」を住民一人一人が自分の建物だと認識するとともに専用部分、共用部分などを理解して事故がおきないよう快適な住まいにしなければなりません。
建物の維持管理について大きく区別すると、下記の2種類に分かれるかと思います。
1.経年劣化によるもの
2.人為的障害によるもの

◇マンションの定期調査の現場から-この建物は安全ですか-/斉藤 収((有)SAM設計室一級建築事務所代表取締役)(2ページ)

平成15年度は、特殊建築物等定期調査報告の用途は、下宿、共同住宅、寄宿舎が対象になっています。共同住宅は、不特定多数の方が、利用しています。自分の住まいでありながら、建築基準法、消防法等で使い勝手に制限を受けています。それは、火災などが発生した場合に、大きな災害にならないように、又事故を未然に防止するために必要だからです。
調査のときに、管理組合の理事長さんから要望がありま
した。(そこに住んでいる人の視点で調査をしてほしい。又住人、来客者、第3者に対して、この建物が安全であるか、調査してほしい。)とのことでした。身の引き締まる思いで調査しました。
調査の現場で、見たこと、言われたこと、思ったことを、
写真をいれて述べたいと思います。

◇共同住宅の定期調査に関する調査者としての責務と使命に思う事/小倉正(㈱菱サ・ビルウエア関西支店ビル管理部)(5ページ)
 3年に一度の時がやって来た。15年度は共同住宅の建築物調査報告の年である。
昨今、関係各位のご努力により、共同住宅における建築物調査に対し、所有者(管理者)の関心が高くなっている結果か、共同住宅の建築調査の依頼が毎年増加している。7月初旬現在既に多くの調査のご依頼が手元に届いている。
共同住宅建築物調査報告年は調査者としては大変多忙の年となり、他業務との関連で工程管理に苦労する年である。
今回の原稿依頼の趣旨である、「共同住宅建築物調査者として」との事であるが、建築関係の専門でない私としては、調査者として日常努力している事、苦労している事を含め雑感として述べさせて頂きます。

◇マンションにおける長期修繕計画の考え方/佐藤紀男(佐藤建築事務所)(8ページ)

 マンションは,入居後10~15年経過すると最初の計画修繕が必要となり,新築時の状態へ戻すことが目標となる。それが20~25年経過すると,居住性能のグレードアップに目標が変わり,30~35年頃に行われる計画修繕では,躯体だけを残して建物全体の大規模改修や高齢化対応型住居,あるいは建て替えなどの検討が必要となる。このように長期修繕計画は,考え方によってその内容・範囲・レベル・単価などに大きな差が生じることがある。また,計画の策定には,かなりの専門知識が必要となるので,居住者自身がこの作業を行うことは一般的に困難である。そのため,専門家や専門の調査会社などに依頼することになるが,この場合居住者の利益保護の観点から中立・第三者的な立場にある信頼できる個人または企業を選定する必要がある。そこで今回,マンションにおける長期修繕計画の考え方について整理して見た。

◇管理組合運営の基本と新しい現実/石川悦三郎((財)マンション管理センター管理部)(6ページ)
 わが国の分譲マンションは昭和30年代に誕生して以来40年ほどの歳月が経過し、そのストックも420万戸を超え、入居者数も1100万人を超えるといわれている。つまり平均しても国民の1割以上がマンション住まいをしていることになる。
 もはやマンションという共同住まいは特殊な住まい方ではなく、都会生活者の普通の住まい方として認知された、極めて当たり前の居住形態となっている。
 ところが、修繕の問題とか居住者間のトラブル、管理会社に対しての苦情等のさまざまな問題が顕在化し、それらを解決しようとしても区分所有という複雑な所有形態や権利関係が合意形成障壁となることが多い。従来の戸建における問題解決や賃貸共同住宅(アパートや賃貸マンション等)とは違った対応が求められる所以である。
 この問題山積のマンション管理について考える場合、ソフト面(管理運営と生活面)とハード面(修繕等)というわけ方もあるが、ここではこのような教科書的なわけ方ではなく独断で、現在皆さんが関心があると思われる4点に絞って考えてみたい。

◇公団賃貸住宅の維持保全・改修システムの概要/林 邦彦(都市基盤整備公団横浜住宅管理センター保全課長)(8ページ)

  都市基盤整備公団(以下「公団」という)が直接管理している賃貸住宅(以下「公団住宅」という)は、昭和30年に設立された日本住宅公団時代以降、47年間で約1,700団地、1.8万棟、75万戸となり、約200万人の方々が居住している。この住宅戸数は、民間賃貸住宅を含めた四大都市圏の賃貸住宅の7%、公的賃貸住宅の40%となっている。一組織でこれだけの賃貸住宅を管理している例は世界的にも珍しく「日本一の大家さん」とも呼ばれている。
  公団は、団地に住む人、暮らす人が「安全で」「安心して」「快適に」生活できる居住環境づくりを住宅管理の基本と考え公団住宅の「維持保全」を行っている。
  近年では、従前の修繕等に加え国民の住宅ニーズ、少子高齢社会等時代の変化等に対応するため、居住水準の向上を目指したリニューアル等工事や高齢者等対策工事など既存公団住宅の総合的なストック改善・活用を積極的に推進している。

◇マンションの大規模修繕を経験して/松田隆之(DIKマンション和光管理組合元・理事長)(6ページ)
 和光市は埼玉県の南部に位置し同県の朝霞市甫東部と新座市の東部、東京都練馬区の北部および板橋区の西北部に挟まれた人口71082人(平成15年3月現在)の市で、ここには本田技研と国立の理化学研究所がある。
DIKマンションは笹目通りと国道254が交差する和光陸橋の南東側に建っている。住民の多くは東京都内に勤務している。新聞は都内版が配達されており、電気やガスは練馬営業所管轄、普段の買い物先は板橋区成増が多い。和光市に直接関係するものと言えば給排水とゴミ処理ぐらいで、少子化現象が著しく現在の小学生の数は30人足らずの441世帯が居住する分譲マンションなのである。このDIKマンションは今年で築25年を迎える。建築の設計・施工は長谷川工務店で、各棟は以下の通りの4棟建と管理棟になっている。

◇築後30年の中規模団地の大規模修繕実際例/大口善弘(海老名プラーザ管理組合副理事長(有)大口技研取締役)(5ページ)

 神奈川県海老名市にある海老名プラーザは1973年に東急不動産から分譲された中規模の分譲団地である。その建物構成は、住居専用がPC5階建の15棟とRC7階建5棟の640戸、店舗兼住居のRC3階建1棟20戸と診療所・管理棟RC平屋1棟2戸
(写真-1) 。当時公団で採用されていたPC中層住宅の民間への採用草分けであったといわれている。

 築後30年、マンションの建替えが世間の話題になり始めた昨年10月に3度目の大規模修繕工事を開始し今年6月に完了した。管理組合副理事長・修繕工事担当者として築30年を経過したマンション団地の第3回目の大規模修繕工事の概要を報告する。併せて、マンション団地の大規模修繕工事に関わる諸問題について将来課題も提起しておきたい。

◇わが住まい 北柏ライフタウン松葉町四丁目第二住宅管理組合体験談/萩野晃正(北柏ライフタウン松葉町四丁目第二住宅管理組合もと・理事長)(9ページ)
 公団分譲団地昭和57年竣工、この年4月入居、5階建て中層棟13棟・8階-11階建ての高層棟4棟 計17棟、敷地面積 56789㎡ 住戸数687戸の団地管理組合である
昭和57年-平成5年長期補修専門委員会、平成6年町会長、平成7年-10年大規模修繕実行委員長

平成14年管理組合理事長経験

現在入居後21年経過したわけであるが、団地住まいも普通のサラリーマンがそうであるように、朝出勤、夜寝に帰る毎日である。幸いにも当時、土曜・日曜と休日が取れる環境に恵まれ、なにかしら団地
地域活動に少しでも役に立てればと参加し、地域住民との人間関係の絆ができればと、団地の役員に選出された時に、その時の任務に従事した。その時々の経験談を紹介し、現実の団地住民活動の一つの実態が理解されるのではないかと思われる。
勤務の傍ら、役員当時の時期を思い起こしながら紹介したい。

◇欧米におけるマンションの維持・管理/村上心(昌山女学園大学生活科学部助教授)(6ページ)
  「組織」「法制度/手統き」「専門家の支援」「費用負担」「コミュニテイの維持」「紛争処理」「中古市場」・・・。マンションの維持・管理に関する欧米と日本の違いを語る為の視点は、上記のように多数挙げることができる。これらの違いの背景には、「住まいは住みながら手を入れて良いものにしていくものだ。」という価値観と、結果としての維持・管理という建物の再生行為に関するレベルの違いが存在している。
本稿では、欧米におけるマンションの維持・管理(再生)行為の内容、及びその実現上の困難さと特に合意形成・手法の方向性について紹介・考察する。

◆建築保全のための建築物調査の基礎知識41
◇タイルの維持保全について(その2)-調査・診断の方法と要点-/小笠原和博(㈱INAX建材商品開発室)(6ページ)
タイルは美観、耐久性、経済性、構造体の保護性能などの点で優れた性能を持っている。しかし、施工された状態では経年に伴い劣化が始まり、そのまま放置すれば建物の機能を低下させたり、美観を損ねたり、外壁では剥落により第三者障害を発生させるおそれがある。そのため、定期的な点検、調査を行い、劣化現象を早期に発見するとともに、詳細な調査、診断により、その後の維持保全計画に見合った対策を講じる必要がある。その2では、タイル張り面の調査・診断の要点と方法について述べる。特に、外壁では予防保全のための点検、調査、診断を行う必要がある。

◆定期報告関係地域法人紹介コーナー
◇(財)長野県建築住宅センター(4ページ)

 当センターは、建築基準法に定める特殊建築物等の安全性と適正な維持管理を推進並びに住宅の品質性能の適正化な確保のためにその制度の推進することを目的として、昭和47年6月に長野県知事の許可を受け、「財団法人長野県建築安全協会」として設立されました。その後、住宅性能保証制度業務を開始したのをはじめ、多様化する県の住宅行政の付託に応えるため、安全対策、研究啓発、住宅対策、情報提供など各種事業を取り入れ、昭和63年4月に「財団法人長野県建築住宅センター」に改組改称いたしました。
現在は、「指定確認検査機関」、「指定住宅性能評価機関」としての業務及び「住宅完成保証制度業務」などの事業を展開しております。

◆防火材料等関係団体及び材料・構造紹介コーナー
◇塗料/(社)日本塗料工業会(2ページ)

 防火材料としての塗料の認定は昭和44年11月24日に日本塗料工業会が会員企業を代表し建設省から基材同等第0001号の認定を受けたことによる。材質は調合ペイント、フタル酸樹脂エナメル、アルミニウムペイント、塩化ビニル樹脂エナメル、合成樹脂エマルションペイントの5材質でJIS品またはJIS同等品をJASS18塗装工事により鉄部、銅合金部、亜鉛メッキ面・軽合金部やコンクリ-ト・モルタル・しっくい・プラスタ-部・せっこうボ-ド部に塗装する条件である。その後新たな材質が追加認定され、各社商品の追加、改廃がすすめられ現在の材料、商品が整えられた。
 平成14年6月からの改正された建築基準法施行令実施にともない、基材同等に代わる新たな認定が行われた。この結果、改正前に防火材料として認定を受けていた塗料はすべて移行認定された。


その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
mail:kenbokyo@kenchiku-bosai.or.jp

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