(特集「地震・防災対策 ll2」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.309 2003/10月号
特集「地震・防災対策Ⅱ」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識40」

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◆防災随想 
◇火災と地震/堀 長生((株)大林組技術研究所建築火災安全グループ長)(1ページ)

◆特集「地震・防災対策Ⅱ
◇地震時におけるガラスの飛散防止性能について/根本かおり(独立行政法人建築研究所建築生産研究グループ研究員)、伊藤 弘(独立行政法人建築研究所材料・建築生産研究グループ長)(6ページ)
 ガラスは、300nmから2700nmまでの波長をよく透過するため、建築物の屋内に太陽の光を取りこむには最適な材料です。さらに、デザイン性にも富むためガラス窓(開口部)としてだけではなく、ガラスを主体としたカーテンウォールなどのようにさまざまな用途にも使われています。このように建築物に用いられるガラスには、耐風圧性や耐震性などの耐力、および、遮音性や防火性などの機能が求められることになります。
今回は、地震が発生したときのガラス窓の安全性について、地震時における建築物の層間変位によってガラス窓が破損する場合の、ガラスの飛敵防止性能について、2003年1月に実験を行いましたので、その内容および結果について報告します。

◇自衛消防訓練の実態と実施要領について/小堀百合子(東京消防庁指導広報部指導課指導係長)(7ページ)

 火災が発生した場合、何もせずに、じっとしているという人はまずいないだろう。ある人は、119番に通報するかもしれないし、ある人は、消火器で消火をするかもしれない。また、ある人は、身の危険を感じ避難するかもしれない。これらの活動が、自衛消防である。
東京消防庁管内では、289の消防署所にポンプ車が配置され、5分以内に火災現場に到着できる体制が確保されているが、その5分を埋めるのが、自衛消防活動である。特に、火災は一定時間を過ぎると急速に拡大するものだけに、通報が遅れたり、初期消火が適切に行われなかったりすると、消防隊が現場に到着した時には延焼拡大し、財産はもとより人命の救出さえ困難になってしまう。
このようなことから、火災発生と同時に、通報、消火、避難誘導等の組織的な対応―すなわち自衛消防活動が必要となるわけであるが、火災発生時の異常な心理状態と環境の中で迅速、的確な行動を取るためには、日頃から火災対応の一連の活動を繰り返し行い、身につけておくことが重要である。そこで、本稿では、自衛消防及び自衛消防訓練についての消防法の規制、訓練の実態、訓練の実施要領等について概説する。

◇児童向け建築防災の指導啓発に関する種々の取り組みについて/岡部光男((財)大阪建築防災センター事務局次長)(4ページ)
 “防災意識の普及には児童の頃からの教えが大切である”これは当財団の名誉理事長小西岬氏が2代目理事長として在職当時、機会あるごとに提唱してきた言葉である。この考えを元に今日まで児童に対する何らかの防災意識普及活動を続ける動機となって、当財団の寄附行為による建築防災の指導啓発に関する事業の一つに位置づけてその普及啓発を推し進めて目下、児童向け防災啓発図書を制作し希望する府内小学校に無償配布を行っている。さらには中学校向け建築小冊子を企画制作し、目下種々検討を重ねている現状である。

◇体験してみませんか防災館/東京消防庁本所都民防災教育センター(4ページ)
 本所防災館は、都民一人ひとりの防火防災意識の高揚と防災行動力の向上を目的に、池袋、立川に次ぐ都内3番目の防災体験施設として、ここ川の手地域に平成7年4月27日にオープンしました。奇しくもその年には、あの未曾有の災害「阪神・淡路大震災」が発生した年でもありました。その間、街の防災発信基地として、数多くのTV、雑誌等にとりあげられ、これまでに、日本全国はもとより、海外からの来館も多く現在までに約63万人、一日平均約260名もの方々が、地震や消火・応急手当などの防災体験に訪れています。今回は、そんな本所防災館を紹介させて頂き、皆さんを体験ゾーンへとご案内致します。

◇芸予地震における応急危険度判定活動/北村重治(前愛媛県土木部道路都市局建築住宅課長)(6ページ)

 芸予地震から2年余りが経過した。
南海地震が2030年までに発生する確率が約40%といわれている状況にあって、当時の経緯を記しておくのも悪いことではないとの勧めを(財)日本建築防災協会の高橋部長から受け、北村は拙い筆を執ることとなった。
北村が愛媛県の建築住宅課長に在籍していた3年間に、鳥取、芸予、先日の宮城と3回の地震を経験している。全日本的な視点からみれば、芸予地震程度の地震は、1、2年に1度は起こる地震なのである。

◇建築研究所主催「木造住宅の耐震補強構法技術コンペ」/五十田博(独立行政法人建築研究所構造研究グループ主任研究員)(3ページ)

独立行政法人建築研究所は「木造住宅の耐震補強構法技術コンペ」と題し、平成14年7月から、最新の木造住宅の耐震補強技術とその性能評価事例を収集した。同年9月には応募を締め切り、12月には優秀作7点を選出した。
木造住宅の耐震改修の必要性とその対応の遅れについては、方々で指摘されていることであり、ここで改めて述べることはしないが、優秀な耐震補強構法を収集するというこの類の催しは、静岡県の技術コンクール、国土交通省の委託に基づく財団法人日本建築防災協会の事例収集に次いで3回目である。募集開始当初、二番煎じも過ぎた三番煎じのコンペをなぜおこなうのか?という質問を受けることがしばしばあった。それに対し、「建物全体の構造性能を評価可能な構法という前提で補強構法を募集したい」、「現在新しく提案されている補強技術が、現在の性能評価法で正しく評価されるか確認したい」、さらに「木造住宅の耐震補強の性能評価を今後正しくおこなっていくためには何をすべきか、それを検討するための資料を収集したい」と返答していた。つまり、現在、性能的に優れていると考えられる構法が適切な方法で評価されていないという一面がある一方、巷には現状の技術で性能評価が適切にできない構法があふれているという一面もある。このような混沌とした現状を整理し、まずは現状の技術で評価できる良質な構法を健全に普及するための仕組みを作成するための基礎資料を得ることが本コンペの特色のひとつであった。

◇「木造住宅の耐震補強構法技術コンペ」国土交通大臣賞 建物のバランス目的とした耐震開口フレーム-A
Windeframe Of (Earth) Quake-Resistant-/手塚純一(J建築システム(株)代表取締役・博士(工学)・一級建築士)(4ページ)

 大地震による教訓の1つとして窓といった開口部による耐力上のバランスが指摘されている。そのため壁量を増やそうとすれば、必然に高倍率による大きな引抜力が生じる。そこで本構法は開口部に強度、靱性に富んだ箱型(門型)のフレームを設置することで建物全体の壁量を増やし、対称面とのバランスを向上させる狙いである。フレームはエンジニアードウッド(LVLなど)を用い、工場で特殊な剛接加工したL型部材を製作し、現場で4部材を組み合わせて構成される。実大実験では、壁倍率相当として2.6倍が得られ靱性も顕著であった。実務面では、複雑な計算や高度な施工・生産技術を必要とせず、コストも30~50万円/棟と安価のため市場性の高い商材といえよう。

◇「木造住宅の耐震補強構法技術コンペ」住宅金融公庫総裁賞 ホームコネクター工法を用いた耐震補強技術/河野泰之((株)ホームコネクター企画開発部長)(4ページ)

木造住宅の耐震補強を行う際、考慮すべきこととして、あらゆる立地条件の住宅に対応しなければならないという点がある。特に住宅密集地においては、住宅間の間隔が狭く、外壁側からの耐震補強は不可能な場合が多い。
この為、ホームコネクター工法を用いた耐震補強は、全て住宅の内壁側からの施工を行うこと前提とし、図1、図2の様に既存の非耐力壁及に対し、ホームコネクターを用いて作製した新設の筋違フレームをバランス良く設置すると共に、既設耐力壁に対し、ホームコネクター工法による補強を行う手法をとっている。(ホームコネクター工法については後述するが、本工法に興味の有る方はホームページURL http://WWW.homeconnector.co.jpも参照頂きたい。)

◇「木造住宅の耐震補強構法技術コンペ」建築研究所理事長賞 制震金具ガルコンによる耐震補強の概要紹介/高田格牟((株)ガルコン社長)(2ページ)
 兵庫県南部地震で倒壊した在来軸組の2階建木造住宅の主要な原因の一つとして,ねじれ振動が指摘されている。このねじれ振動は,1階の壁配置が北側や西側などに偏るために生じ,南東の隅柱などが局所的に大きな水平力を被るために建物は倒壊する。
制震金具ガルコンは,1階の壁配置が偏在するという在来軸組の木造住宅の耐震的な弱点を効果的に解消する補強方法として考案された。ガルコンは,主にねじれによって大きな水平力を受ける南側や東側の1階の壁のない柱を対象として,2階の梁との接合部に取り付けて,粘性体によって地震の揺れを低減する制震効果と,補強金具として柱の崩壊を防ぐ耐震効果を合わせて保持している。

◇「木造住宅の耐震補強構法技術コンペ」優秀賞 アルミニウム合金製耐震補強枠について/荒木郁哉((社)カーテンウォール・防火開口部協会参与)(4ページ)

 この耐震補強工法は開口部(掃き出し窓や玄関など)の周囲にアルミニウム合金製補強枠を設置する方法です。
掃き出し窓やサッシの開放感と操作性を損なうことがなく、屋外からの工事のみで出来ますので、生活のリズムやプライバシーを犯す恐れはありません。
耐震性能の向上だけでなく、サッシ取替えを同時に行うことにより、省エネルギーやバリアフリーの機能を付加することも可能です。

◇「木造住宅の耐震補強構法技術コンペ」優秀賞 耐震ポール/武田幸和、内田一義、松川正士、長島保雄((株)シーク建築研究所)(3ページ)

「地震時に人命を家屋の倒壊から守る」ことを第一目的として、数本の耐震ポールを既存木造住宅の周囲に配置する工法を開発した。ポールは鋼製またはアルミ合金製で、一辺200mm角、厚みはそれぞれ9mm、11mmである。
 35坪程度の標準住宅の場合、周囲に4~5本程度、地盤の硬軟により1.6m~2.2m程度の深さまで埋設し、直径450~600の埋設穴にコンクリートを注入して固める。一方、ポールの上部は2階床レベルの胴差または梁に通しボルトで固定する。
美観に関しては、現状の景観を極力壊さないポールの配置が可能な上、自由に色彩や形をマッチさせることができる。また、外部補強のため、間取り、通風、採光が変わらず、居ながらに施工でき、施主に心理的な悪影響を与えない。なお、現場の工事期間は、実働約10日である。

◇「木造住宅の耐震補強構法技術コンペ」優秀賞 GHハイブリッド制震工法について/小林伸久(江戸川木材工業(株))、前田敏治(トキコ(株))(4ページ)
 「GHハイプリッド制震工法」(以下「GH工法」とする。)の根幹技術は、自動車や新幹線などの操縦・高速安定性に用いられているオイルダンパを使った振動制御技術である。この技術は先の阪神・淡路大震災以降、高層ビルなどの地震対策技術として広く採用が進んでいるが、これを住宅などの小規模建築物向けに応用したものが『GH工法』である。この工法により昭和56年以前に建築された、いわゆる「旧耐震基準」の住宅の耐震性を向上させ、地震被害から建物を守ることが可能となる。この工法の採用実績は、2003年6月現在、新築84棟、耐震補強76棟の合計160棟である。
本稿では、「GH工法」の原理や効果、施工方法などについて紹介する。

◇「木造住宅の耐震補強構法技術コンペ」優秀賞 木造軸組建物の耐震補強仕口ダンパー/樫原健一、片岡弘行((株)鴻池組建築本部エンジニアリング部)(4ページ)
 仕口とは柱と梁の交点を指す専門用語で、この部分の強さが軸組工法による木造建物の耐震性能を左右する。しかし、仕口を金物などによってあまりに強く固定すると、逆に柱や梁を傷めることになる。ダンパーとは地震による揺れのエネルギーをしなやかに吸収する装置のことで、制震工法による耐震補強技術である。「仕ロダンパー」は粘弾性体(高分子材料)をエネルギー吸収の主材料とした仕口部分の補強金物である。

◆災害報告
◇2003年5月21日アルジェリア地震の被害概要/犬飼瑞郎(国土交通省国土技術政策総合研究所総合技術政策研究センター評価システム研究室長)(8ページ)
 2003年5月21日19時44分(現地時間)、アルジェリア国ブーメルデス県ゼンムリ市の北約7キロ海底を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生した。6月7日時点での被害状況は、死者2,268名、負傷者1万人強と報告されている。日本政府は、アルジェリア国政府からの要請を受け、地震後直ちに国際緊急援助隊の派遣を決定し、救助チーム(61名)を5月22日に、医療チーム(22名)を同25日に、専門家チーム(7名)を6月12日に、それぞれ派遣した。
筆者を含む専門家チームは、6月13日から18日までの期間、現地を訪れ、アルジェリア政府の震災対策本部、住宅省、公共事業省ほか関係機関に協力し、被災地の調査を行うとともに、建築物の耐震性向上や社会インフラの復興計画策定、都市復興に必要な行政の取り組み等に関する技術的助言を行った。
本報告では、筆者が担当した建築物被害を中心に、地震被害の概要を報告する。

◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識40」
◇タイルの維持保全について(その1)-タイルの損傷の種類とその原因-/小笠原和博((株)INAX建材商品開発室)(6ページ)
 タイルは美観、耐久性、構造体の保護性能などの点で優れた性能を持っている。しかし、施工された状態では経年に伴い劣化が始まり、そのまま放置すれば建物の機能を低下させたり、美観を損ねたり、外壁では剥落により第三者障害を発生させるおそれがあり、維持保全が重要である。適切な補修・改修を行うためには、点検・調査により、劣化の程度と原因を見極めた上で対策を講じる必要がある。そこで、その1ではタイルの損傷の種類と原因について述べる。タイルの損傷には、剥離(浮き)、ひび割れ、欠け、凍害、汚れなどがある。最も注意が必要である外壁の剥離原因は、剥離の状態、工法により原因が異なるため、その見極めが必要である。

◆定期報告関係地域法人紹介コーナー
◇(財)静岡県建築住宅まちづくりセンター/青山 巌((財)静岡県建築住宅まちづくりセンター常務理事)(7ページ)

 建築物等の安全性を確保するため、県及び特定行政庁並びに関係団体は共同して、(財)静岡県建築安全協会を、昭和49年に設立した。その財団は目的にそってこれまで建築物等の定期報告関係事業等を実施してきたところであるが、建築確認業務が民間に開放されたのを契機に(財)静岡県建築安全協会を、(財)建築住宅まちづくりセンターに発展的に改組し、建築物、昇降機及びその他の建築設備、工作物、居住空間等の安全性、快適性、性能等を確保するために、調査研究、評価、認定、確認、検査及びその適正な維持管理の推進等の事業を行うことにより、地域住民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とし、これまでの建築物等の定期報告業務の他、主に以下の業務を平成12年から実施している。
○   建築確認の審査検査業務
○   住宅性能評価業務
○   住宅性能保証業務
○   住宅金融公庫委託業務

◆防火材料等関係団体及び材料・構造紹介コーナー
◇「環境と健康」に貢献する木質セメント板/堀 克彦(全国木質セメント板工業組合)(4ページ)
 木質セメント板とは、木毛セメント板と木片セメント板等の総称である。削りだした木材とセメントを混練し、圧縮成型した建築用ボードである。耐火性・断熱性・遮音性等に優れた材料であり、屋根・外壁の下地やコンクリート打ち込みパネルなどに利用されている。原料の木材は間伐材や廃材を用いるなど、環境負荷低減効果が認められて、グリーン購入法の指定資材となっている。また、シックハウス対策に係わる法律の施行に先駆けて、(財)建材試験センターのホルムアルデヒド・VOC削滅型建材の性能審査証明を第1号として受けている。
全国木質セメント板工業組合では、各大学・公的試験機関の協力を得て、「環境と健康」に貢献できる製品造りに努めている。

◆定期調査報告コーナー
◇特殊建築物等定期調査報告マークの活用状況について(お知らせ-その2-)/(財)日本建築防災協会(1ページ)
 本誌の平成15年1月号でお知らせしましたように、本会と定期調査報告関係地域法人(25団体)とで作成いたしました定期調査報告マークは、商標登録が平成14年11月に完了いたしました。
これを受け、特定行政庁および定期調査報告関係地域法人では、この定期調査報告マークを用いた定期調査報告済証を発行したり、建築防災に関する安全を示顕するマークとして使い始めました。
平成15年6月号で、同年4月現在の定期調査報告マークの活用状況をお知らせいたしましたが、その後、新たに3団体でマーク使用を始めましたのでお知らせいたします。
今後さらに、この定期調査報告統一マークが広く活用され、多くの特殊建築物等で定期調査報告が確実に実施されることにより建築物の安全性の向上に寄与することを願っております。


その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
mail:kenbokyo@kenchiku-bosai.or.jp

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