(特集「マンションの長期耐用化技術2」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.306 2003/7月号
特集「マンションの長期耐用化技術2-コンバージョン-」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識37」

※執筆者名の後の( )内の数字はその記事のページ数を表す
◆防災随想 
◇身の回りの防災/斎藤秀人(清水建設(株)技術研究所主任研究員)(1ページ)

◆特集「マンションの長期耐用化技術2-コンバージョン-
◇今、何故コンバージョンか/松村秀一(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻助教授)(6ページ)

動き出したコンバージョン
 大方の予想通り、2003年に入って空きオフィスを住宅に転用する「コンバージョン」を巡る動きは活発化してきた。オフィスビルの空室率の上昇が無視できない状況になってきたのである。首都圏のいくつかの都市の中には空室率が20%程度にまで上昇しているところがあるとも言われている。
 国土交通省住宅局建築指導課は、コンバージョンの設計施工指針案をとりまとめる一方で、先般公表されたように建築基準法における採光条件の合理化を進めつつある。もともとオフィスを住宅にコンバージョンする際の最も大きな障壁が、建築基準法におけるオフィスと住宅の採光条件の違いであると言われてきただけに、この合理化はコンバージョンの促進に弾みをつけるものと期待できる。
 また、コンバージョンは単なる空きビル対策ではなく、優れて都市再生的なテーマである。したがって、その推進には都市政策上の位置づけが不可欠なのだが、東京都でもコンバージョンに関する部局横断型の検討の場を平成15年度に入って立ち上げた。コンバージョン工事という観点からすれば安全条例の扱いが気になるところだが、持続可能な都市経営というより広い見地からコンバージョンが利用されることを期待したい。 民間企業の水面下の動きも活発である。私たちの研究会への問合せも増えているし、具体的な案件に関してコンバージョンの検討に入ったという話もあちらこちらから聞こえてくるようになった。

◇コンバージョンの計画論/深尾精一(東京都立大学大学院工学研究科教授)(4ページ)
 コンバージョンという言葉を耳にする機会が急に増えた。建築におけるコンバージョンとは、建物の用途を変更することであるが、最近話題となっているのは、都心のオフィスビルなどの業務用施設を、集合住宅に用途変換しようとする動きである。背景には、いわゆる2003年問題と言われる、都心部における事務所用の床の急激な供給増大と、それに伴う空き室の増加がある。加えて、長い間続いてきた住居を中心とする郊外へのスプロール現象に限界が生じ、住まいの都心回帰の傾向が顕著になってきたことが、事務所ビルの集合住宅へのコンバージョンを現実的な検討対象としてきている。地球環境・資源問題から建築ストックの有効活用を求める流れも、追い風と言えよう。

◇オフィスビルのコンバージョン適性/佐藤考一(東京大学学術研究支援員)(4ページ)

 オフィスビルのコンバージョンを実践する際には、当該ビルの用途変更の適性を判断することが第一歩になる。そのためには、建物の立地や劣化度といった通常の不動産評価に加えて、集合住宅としての適性を判断する必要がある。
こうした評価は理論的には困難なことではない。現場調査に基づいてエンジニアリングレポートを作成すれば劣化度や耐震性能は明らかになり、試設計を行えばフィージブルな住戸の割付方法も判明する。しかし、コンバージョン事業を行うか否かを判断する段階ではこうした検討を実施することは現実的ではない。
つまり、コンバージョンが本格的に実践されるためには、オフィスビルのコンバージョン適性を簡易に診断できる手法が求められるものと考えられる。ここではそうした簡易診断手法の確立に向けて、東京都心のオフィスビルの特徴を明らかにすると共に、そうしたオフィスビルに住戸割りや部屋配置を行う際に発生する問題を整理したい。

◇用途変更事例からコンバージョンを考える/石田友美(TOM建築研究所所長)(5ページ)
 建物でコンバージョンといわれる場合は、建物の「用途転用」「用途転換」となり、建築基準法の「用途変更」と同義と言える。国内の用途変更事例を調査し、当初の建物用途が、改修後どのような用途に変わり、どの程度の改修が行われたかを調べる。事例からコンバージョンとは、用途変更による大規模改修とも言える。新用途に変わるための法的対応と既存建物に関する既存遡及対応の課題が発生する。
事例調査から、建物の使われ方の変化と変わる用途は何かを考え、併せて時間を経た建物の建物調査の考え方を記述する。次に、今注目されているオフィスから住宅に転用する場合の、主なる技術的な課題に触れた後に、コンバージョンを進める上でのヒントを考える。

◇既存耐震改修技術とコンバージョン/横河鉄弥(建築構造士:(株)横河システム建築専務取締役)(6ページ)

「建物のコンバージョンによる都市空間有効活用技術の開発研究」(平成13-15年度文部科学省・革新的技術開発研究推進費補助プロジエクト)の平成14年度産業分科会サポートワーキンググループにて検討されたベースビルの評価・サポート(ストラクチャー)の評価と既存耐震補強技術の整理について概要を報告する。
加えて建築基準法既存不適格ビルの免震工法による耐震改修促進とコンバーションの可能性について述べる。

◇コンバージョンと経営・管理問題/齋藤広子(明海大学不動産学部助教授)、中城康彦(明海大学不動産学部教授)(5ページ)

 東京都心部では賃貸事務所ビルの空室率が上昇する一方で、都心居住への関心が高まり、事務所から住宅へ用途変更するコンバージョンが注目されている。さらに、賃貸住宅のコンバージョンによる区分所有化も進みつつある。コンバージョンにより建築物を長期利用して循環型社会を実現するには、第一に建築空間的にみて目的に応じた快適な利用環境を創出することである。第二に不動産経営的にみて事業性を維持・向上させることである。第三に社会的にみて都市環境・都市経営の改善に寄与することである。
そこで本稿では、コンバージョンの実態から上記のための方策を検討する。

◇ニューヨークにおけるコンバージョン/脇山善夫(東京工芸大学工学部建築学科助手)(5ページ)

 “世界経済の中心は”と問われれば、現在でも多くの人は“ニューヨーク”を上げるであろう。20世紀で最も有名な超高層ビルの一つであるエンパイアステート・ビル、ミュージカルや演劇で有名な“ブロードウェイ”、高級店舗が建ち並ぶ五番街、ニューヨークと聞くとこの様な建物や場所の名前が浮かんでくる。
 これらを含め、メディアを通して日頃から見聞きしているニューヨークは、5つの区からなるニューヨーク市の中のマンハッタン区にその多くが集まっている。本稿では、そのマンハッタン区を中心に、市の概要を紹介した後に、19世紀に建設された建物が1960年代以降を中心にコンバージョンされたSOHO地区と、20世紀になって建設されたオフィスビルが1990年代になってコンバージョンされたダウンタウン地区について紹介する。

◇チューリッヒの工業地区と建築のコンバージョン/高橋直子(千葉学建築計画事務所)(8ページ)

 現在東京では、「2003年問題」に伴い、オフィスビルを住宅にコンバージョンする計画が行われ始めている。日本では、このように供給過剰なオフィスビルに対する解決策のひとつとして、コンバージョンが取り入れられている。では、海外ではどのようなかたちでコンバージョンが行われているのだろうか。本稿で取り上げるスイス・チューリッヒでは、工場を中心とした既存建築が、住宅、オフィス、公共施設などにコンバージョンされた事例が多く見られる。また今では使われなくなった市内の工業地区では、地区全体を、コンバージョンという手法で再開発する計画が現在進行中である。このような計画の経緯や詳細を、チューリッヒで行った調査、ヒアリングをもとに解説する。

◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識37」
◇厨房用排気フード(グリス除去装置)の概要と維持保全について/由利剛((社)日本厨房工業会)(5ページ)

グリス除去装置とは、厨房用排気フードの内部に設けられ、調理中に発生する油脂、塵埃等を排気ダクトに入る前に除去する装置のことをいう。一般的にはフード内の枠に取り付けるグリスフィルターが知られているが、その他にも比較的大型で、自動洗浄装置のついたフード一体型のグリスエクストラクター、フード一体型で自動洗浄装置のないグリスセパレーターがある。
ここでは、グリス除去装置の概要と、その維持管理を行う際の問題点に関して説明する。

◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
◇(財)神奈川県建築安全協会-創立30周年を迎えて-/(財)神奈川県建築安全協会(6ページ)

 当協会は、建築物、建築設備及び工作物に関する建築基準関係規定との適合性の確認並びにその適正な維持管理の推進を通じて調査、研究及び指導を行なうことにより、地域住民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって地域社会に貢献することを目的として昭和48年5月に、神奈川県知事の認可を受け設立されました。
設立当初の業務は、建築基準法第12条に基づく、特殊建築物、建築設備等の「定期報告業務」で、特定行政庁から事務の一部を受託いたしました。その後、昭和58年には、財団法人住宅保証機構の地域事務機関として、「住宅性能保証制度業務」を受託いたし、また、平成3年には、神奈川県建築物震後対策推進協議会から、応急危険度判定制度に伴う判定士の養成、登録、模擬訓練等の業務を受託いたしました。更に、平成12年7月から、建築基準法に基づく「指定確認検査機関」として、建築確認検査業務あるいは住宅金融公庫法による工事審査検査業務、また、同年10月には、品確法に基づく「住宅性能評価機関」として、国土交通省から認可をいただき業務を行って現在に至っており、平成15年が協会創立30周年となっております。

◆防火材料等関係団体及び材料・構造紹介コーナー
◇日本建築仕上材工業会/NPO法人湿式仕上技術センター/井上照郷(日本建築仕上材工業会/NPO法人湿式仕上技術センター)(5ページ)

日本建築仕上材工業会は、建築用仕上塗材・左官材料等の製造業者を正会員、原料製造業者等を賛助会員とする任意団体で、材料や工事仕様の標準化をはじめ、調査・研究活動、広報活動、生産数量調査を主な事業としている。
また、平成12年6月1日施行の建築基準法改正により通則認定制度が廃止されたが、それまでは次の(1)~(6)に示す材料・構造の通則認定・指定団体であった。
(1) 基材同等(建築用仕上塗材)
(2) 不燃材料(軽量セメントモルタル、粉じん固化剤)
(3) 準不燃材料(粉じん固化剤)
(4) 耐火構造(軽量セメントモルタル被覆鉄骨柱、鉄骨梁、間仕切壁、粉じん固化剤を用いた封じ込め工法など)
(5) 防火構造(軽量セメントモルタル塗り外壁)
(6) 準耐火構造(軽量セメントモルタル塗り外壁など)
なお、これらの認定・指定に関しては、平成14年5月17日より、日本建築仕上材工業会の正会員が主体となって設立したNPO法人湿式仕上技術センターに移管されている。


その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
mail:kenbokyo@kenchiku-bosai.or.jp

バックナンバー