(特集「マンションの長期耐用化技術1」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.305 2003/6月号
特集「マンションの長期耐用化技術1-マンションのSI-」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識36」

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◆防災随想 
◇国際技術協力に携わって/斉藤大樹(独立行政法人建築研究所上席研究員)(1ページ)

◆特集「マンションの長期耐用化技術Ⅰ-マンションのSI-
◇SI住宅と現行法制度の課題について/藤本秀一(独立行政法人建築研究所建築生産研究グループ主任研究員)(5ページ)

 近年、分譲マンションの募集広告等でも「SI」という表示をよくみかけるようなり、SI住宅への関心が高まっている。
本稿では、SI住宅とはどのようなものなのか、その特徴と開発経緯を紹介するともに、SI住宅による新たな住宅供給の方法と現行法制度上の課題等について述べる。

◇マンションの耐久性について/鈴木清丈、太田義弘((株)竹中工務店技術研究所)(6ページ)

日本の建築は比較的短命だと言われている。特に、住宅に関しての国別寿命を見てみると、図1のとおりイギリス、アメリカが100年以上で、フランス、ドイツも約80年であるのに対し、日本は30年と報告されている。*1) 分譲マンションに限ってみても平均値では45年程度に過ぎないと言われており、短命であることは諌めないといえよう。このように住宅をスクラップ&ビルドすることは、地球環境保全の観点から考えれば社会的にも許されることではなくなってきており、ストック社会への転換を視野に入れた建築技術の確立が急務の課題となってきている。
 それでは日本の建築物は本当に「耐久性が低い(壊れる)」のであろうか。図2に示すとおり建築業協会が調査したオフィスビルの解体理由を見ると「構造体の耐久性」は決して上位にランクされてはいない。「経済的な要因」、「土地に関する要因」、「建物性能に関する要因」の方がはるかに高いと報告されている。つまり、日本の建築物は耐久性が低い訳ではなく、ニーズに合わなくなってきているために解体されていることが多いと言える。 

◇スケルトン・インフィル共同住宅と仮使用承認制度/庄司博之(神奈川県県土整備部建築指導課)(5ページ)

スケルトン・インフィル共同住宅とは
飲食店や物販店などが入居する建物を賃貸する場合、よく見受けられるのが最終的に使用する飲食店などが内装を自由に行えるよう、スケルトン貸しが行われる例である。
 最近ではその内装の自由度に着目して分譲マンションなどにもこの手法が広がりつつあり、「オーダーメイドプラン」、「自由設計」など、住まい手の多様なニーズに応えて自由に内装・設備を行えるものも供給されている。
これがいわゆるスケルトン・インフィル共同住宅である。
建物のスケルトン(柱・梁・床等の構造躯体)とインフィル(住戸内の内装・設備等)とを分離したもので、スケルトンは長期間の耐久性を重視し、インフィル部分は可変性を重視して造られる。
スケルトン・インフィル共同住宅の詳細や具体的な事例等については、本特集の別稿にて紹介されることを期待して割愛させていただき、今回はこのようなスケルトン(S)とインフィル(I)に分離されて供給されるマンション(以下「SI住宅」という。)に関する建築基準法上の手続きについて整理したい。

◇スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用/東京消防庁予防部予防課(9ページ)

 防火対象物に消防用設備等を設置した場合には、消防法第17条の3の2に基づく設置届の提出・消防検査の実施等が必要となりますが、これらは防火対象物全体に消防用設備等が設置された状態において行うことを原則としていました。したがって、消防法施行令第11条第2項等のように内装を不燃化した場合には、屋内消火栓の設置緩和等ができるものであっても、スケルトン状態が存在している場合は、内装を不燃化していないものとみなし、その状態における消防用設備等を設置する必要がありました。
一方、事務所ビル、店舗ビル等の主に賃貸を目的とした防火対象物は、竣工後において利用者が確定することとなる場合が多いことから、消防用設備等の設置緩和を受けたいがため、やむを得ず標準的な内装不燃化仕上げ等を行って、竣工させていました。
しかしながら、竣工後に利用者が確定することにより、結局、内装をやり直すこととなり、コストの増加、不必要な産業廃棄物の発生等が問題となっていました。
このことから、東京消防庁では、合理的規制を図るため、自治省消防庁(現:総務省消防庁。以下「消防庁」という。)の「スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用について」(平成12年3月27日消防予第74号消防庁予防課長通知)等を踏まえて「スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用について」(別添参照)を策定し、平成13年4月、同内容を予防事務審査・検査基準(昭和54年7月12日予防部長依命通達)に盛り込みました。
本稿では、東京消防庁が当該運用基準を策定するまでに至る消防庁の動向及び当庁における運用基準の概要について紹介します。

◇つくば方式による建設事例/中林由行(スケルトン定借普及センター運営委員・綜建築研究所代表)(9ページ)
 SI住宅と定期借地とコーポラティブ方式(分譲の場合もあり)の3つを組み合わせた住宅供給手法を「スケルトン型定期借地権方式」という。これは、つくば市にある建築研究所を中心にした研究グループが8年がかりで開発し、その第1号住宅が1996年につくば市に建てられたことから、一般には「つくば方式」と呼ばれる。そのねらいは、低価格で良質な集合住宅を供給して良好なまちづくりにつなげようとするものである。供給者(地主)の利益、入居者の利益、そして社会的な意義の3つをすべてを実現し、調和させるという、ある意味では欲張った方式でもあるが、うまく組み立てられた手法であるといえる。実現例はまだそれほど多くないが、これまでに、関東に8例、関西に2例が建設され、さらに京都で建設中の1例がある。つくば方式による建設を支援するために関係者によって1998年に「スケルトン定借普及センター」という団体がつくられて、普及の推進にあたっている。

◇大阪ガスNEXT21/近角真一((株)集工舎建築都市デザイン研究所)(8ページ)

 大阪ガスNEXT21は、1990年にその企画が開始され、1993年に完成した実験集合住宅で,その実験は現在も継続中であり、その範囲は企画・設計・建設・居住の多岐にわたっている。こうした実験住宅への取り組みは大阪ガスのいわばお家芸であり過去にも技術革新の大きな節目ごとに取り組みがある。ガス会社はエネルギー供給業者であるだけではなく、住宅設備機器、建築建材、環境資材、情報、サービスを含む総合生活産業であるとの自覚から、将来の生活動向を敏感に察知し、それに向けて新商品の開発、新市場の開拓を行なう試みを持続してきているのである。NEXT21の場で1993年から5年間、大阪ガスの社員とその家族が実際に居住して行なう第一フェーズの居住実験がスタートした。1999年に一部改修され次いで2000年からは新たな家族を迎え第二フェーズの居住実験が進められている。

◇都市公団におけるKSI住宅の取り組み/井関和朗(都市基盤整備公団技術監理部設計課長)(10ページ)

 大きな世の中の変革期を迎え、様々な分野でいろいろな新しい提案がなされつつある。都市、住宅、建設の分野では、SI(スケルトン・インフィルシステム)が注目を浴びている。
 ここでは、都市公団が取り組んでいる「公団型スケルトン・インフィルシステム(KSIシステム)をご紹介したい。
長期耐用の公共住宅としてのKSI
 最近、マンションの広告で、SIマンションと謳ったものを見かけるようになってきた。そこでは、SIマンションの特徴として、間取りが自由に設計できること、高い耐震性と耐久性を持つ躯体であり資産価値が長期に保たれることが挙げられ、永住志向に応えるマンションであるとされていることが多い。特に、間取りが自由に設計できることについては、「SI住宅(スケルトン・インフィル=自由間取設計住宅)」と表記している例もあるように、SI住宅のユーザーに対するメリットとして、この点が特に着目されているようである。
 SIがスケルトンとインフィルを分離した仕組みだということについては、最近では世間一般にも広く認識が共有されてきつつある。しかし、SIという仕組みは、SIになにを求めるかによって、それぞれに対し異なった顔をみせる。先の例では、インフィルが自由に設計できることでユーザーのニーズに幅広く応えることができる点に着目し、その特徴をマンション市場における付加価値としてアピールしている。
 さて、都市公団は、現在、分譲住宅事業から撤退し、公共住宅としての賃貸住宅の供給を中心とした事業を行なってきている。また、今後、事業の方向を、住宅を自ら直接的に、建設、供給する体制から脱していく方向にシフトしていくこととしている。では、公団にとってSIという仕組みはどういった意味をもつのだろうか。
ここでは、SIの意義を、SとIを分離することにより、長期の耐用が可能にできる点と、意志決定のレベルを分けることができる点に着目して考えてみたい。
 長期の耐用が可能ということの、先のマンションの例でのエンドユーザー個人におけるメリットとしては、建設後、長期間経過しても建物、特にスケルトン部分の性能が保たれているため資産の価値が減じないということ(転売する際に高く売れる可能性があること)、長持ちするので、個人の一生レベルでは建て替えをしなくてすむ(生涯支出の減少)ということになろう。 

◇地震防災意識の世代継続を考える-宮城方式による試み-/樋口政志、佐藤英明(宮城県土木部建築宅地課)、田中礼治、大沼正昭(東北工業大学建築学科)(7ページ)
 政府の地震調査委員会が平成12年12月に公表した「宮城県沖地震の長期評価」において2020年(平成32年)末までに約80%の確立で地震が発生するとされている。本年5月26日に宮城県沖を震源とするマグニチュード7の地震が発生し宮城県内で震度6弱を記録したが幸いなことに建物被害は軽微であった。この地震は想定されている宮城県沖地震とは震源、規模から別のものと考えられており、その関連について注意すべきとの意見もある。しかしながら、宮城県内には現行の耐震基準を満たさない建築物が半数近くあると推定されており、その耐震診断・耐震改修を促進することが緊急の行政課題となっている。宮城県では既存建築物の耐震診断・耐震改修の促進のため、宮城県耐震改修促進計画等の策定、耐震診断士の派遣など各種対策を講じているが、加えて関係団体、機関の参加により宮城県既存建築物耐震改修促進協議会を設置し、同協議会を中心として、学校、地域と連携し地震防災意識の世代継続を考えた耐震診断促進スキームに基づく活動を展開している。

◇公立学校施設の耐震化の現状と今後の取り組み/内藤秀人(文部科学省初等中等教育局施設助成課執行第二係長)(4ページ)

 公立学校施設については、児童生徒が1日の大半を過ごす生活の場であると同時に非常災害時における地域住民の応急避難所としての役割をも果たすことから、耐震性能の向上を積極的に図っていくことは大変重要な課題である。
 平成14年5月に実施された、文部科学省の調査において、公立学校施設の耐震化率は57.3%と推計され、昭和56年以前建築建物の耐震診断実施率は30.8%と、ともに低く、学校施設の耐震性の確保は非常に危機的な状況であることが判明した。
 日本は世界有数の地震国であり、いついかなる場所でも、規模の大きい地震が発生する可能性がある。その際に必ずといっていいほど注目される、公立学校施設の地震災害等に対する安全性の確保について、国の取組みについて紹介する。

◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識36」
◇空調ダクトの汚染と維持保全/大廻和彦(日本ダクトクリーニング協会常務理事)(4ページ)

我国において「ダクト清掃」が業として発足して20数年、その間、空調設備、特に空調ダクト内の汚染実態調査が数多く行われ、想像を越えた粉じん・微生物・化学物質等の存在が報告されているほか、室内浮遊粒子状物質がアレルギーやシックビル症候群に関与するという多くの論文が発表されている。このような室内空気環境問題に対する改善策としてダクト清掃が幅広く実施されるようになり、その市場も当協会の試算によれば、全国の施工対象建築物の総床面積は75,000万m2にもなり、年間需要は約750万m2となっている。
2001年12月、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下、ビル管理法)の一部改正案が国会審議において可決、成立し、空調ダクト清掃業が「建築物の空気調和用ダクトの清掃を行う事業」として新たに登録業種として創設されたことは、空調ダクト清掃の必要性が公的に認知されたことを意味するものである。
本稿では、今回の法律改正を踏まえて、空調ダクト汚染の実態と清掃管理のあり方について概説する。

◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
◇埼玉県の定期報告制度の状況について/(財)埼玉県建築住宅安全協会(4ページ)

 本会は、昭和46年12月28日付建設省通達第917号並びに918号を受けた埼玉県当局の御指導のもとで、建築物、昇降機、昇降機以外の建築設備並びに工作物(遊戯施設)の定期報告を一元的に推進する機関として、昭和51年9月1日付で県知事の許可を受けて発足しました。奇しくもこの日は「防災の日」でもあります。県民、とりわけ定期報告の対象となる建築物等の所有(管理)者並びに調(検)査資格者に対して、定期報告制度を正しく理解していただくために、次の業務を中心に活動しています。
(1)定期報告指導業務

 ①「提出の指示」業務
 ②「内容審査」業務
(2)「定期報告制度の概要説明会」の開催
(3)業務届の受付
(4)「定期報告実務要領講習会」の開催
(5)『協会通信』の発行
また、定期報告からは離れますが、『住宅の品質確保の促進等に関する法律』に基づく住宅性能評価制度がスタートしたのを機会に、この評価申請に必要な図書等の作成をお手伝いする「住宅性能表示支援事業」を平成13年6月から行っています。

◆防火材料等・関係団体紹介コーナー
◇ロックウール工業会/越森崇夫(ロックウール工業会常務理事)(ページ)

 ロックウール工業会は、ロックウール工業に関する調査・研究を行い、需要者の便益をはかることにより業界の健全な発展を期することを目的にしています。平成15年3月現在の会員数は16社1団体で、ロックウール製品の製造、販売、施工を行う法人、団体をもって組織されております。
上記の目的を達するために行う事業は次の通りです。
1) 会員相互及び関連団体との意見交換と連絡調整
2) 生産及び需要に関する統計・調査・研究
3) 国土交通大臣認定に係る業務
4) 技術・品質の向上および作業、経営などの合理化に関する事項
5) 機関誌の発行、講演会の開催、その他による啓発・宣伝
6) 需要者との懇談・連結強化
7) 関係方面への申請・陳情・折衝・連絡
8) その他目的達成に必要な事業

◆耐震診断・改修コーナー
◇特殊建築物等定期調査報告マークの活用状況について(お知らせ)/(財)日本建築防災協会(4ページ)

その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
mail:kenbokyo@kenchiku-bosai.or.jp

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