(特集「リスクの評価とその管理」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.304 2003/5月号
特集「リスクの評価とその管理」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識35」

※執筆者名の後の( )内の数字はその記事のページ数を表す
◆防災随想 
◇地震・雷・火事・静電気/中島修一(ダイケンエンジニアリング(株)常務取締役)(1ページ)

◇就任のご挨拶/菅原進一((財)日本建築防災協会副理事長)(1ページ)

◆特集「リスクの評価とその管理」
◇リスクマネジメントの一般論とその要点/野口和彦((株)三菱総合研究所、安全科学研究本部主席研究員安全政策研究部長)(5ページ)
 企業において、リスクマネジメントを実施する場合は、その目的を明確にすることが、重要である。企業がリスクや発生した危機に対して管理を実施する目的は、大きく分けて2つ存在する。
 ① 自分の企業を守る
 ② 社会、顧客への被害を与えない
この二つの目的を実現するための活動は究極では一致するが、途中経過は異なる場合が多いので、自分たちの活動内容は、どちらのための活動かをしっかり認識しておく必要がある。

◇地震リスクマネジメントの実際/川合廣樹(ABS Consulting EQE Japan Divisionシニア・テクニカル・マネージャー工学博士)(6ページ)

 「リスク」とは、の答えは多種多様である。JISQ2001の定義では、「事態の確からしさと結果の組み合わせ」となっている。1906年関東大地震を前にして、当時の地震研究者今村博士が50年以内に東京に大地震が発生し地震後の火災によって多数の死者がでると新聞に公表した。17年後の1923年9月1日に震災が発生した。関東大震災以前、地震リスクは、「1900年前半に南関東に大地震が発生する」という、「事態の確からしさ」と「14万人の死者、当時の平価で55億円の損失」という結果の組み合わせを意味している。また、リスクは発生以前に発見あるいは認知することによって顕在化する。この意味で、関東大震災以後建築物の地震リスクは、「結果」としての被害の程度は建築物法あるいは建築基準法を遵守する限りにおいて限定(担保)されてきた。但し「確からしさ」は依然として不確実の範囲を超えていない。まして、巨大地震は発生確率が極めて低く、数年或いは十数年の切迫性の予知すら困難な状況にある。多くの認識は、「今日、明日は起きない」という非超過確率の方にある。以下に述べる、地震リスクのマネジメントに対して、なかなか手がつけられないのはこの点にある。

◇建築防火分野における規制とリスクの変化/辻本 誠(名古屋大学工学研究科地圏環境工学専攻教授)(5ページ)
 特集の構成を見ると、建築物における火災リスクのマネジメントを解説をすることが求められている。専門的な雑誌(「安全工学」「日本リスク研究学会誌」など)では、リスクに関する特集が目白押しで、過去に建築物の用途ごとの出火率(床面積・年あたりの出火件数を各用途の規模ごとにまとめたもの)防火シャッターや防火扉の作動信頼性などを報告している筆者としては、これらを総合的にまとめて、建築火災のリスク評価と対策を正面から書き下ろすべき時だとは思うが如何せん、テグの地下鉄火災で時間に追われる身である。そこで、リスク評価とか許容値に入る前段階として、我々がどのようにリスクを扱ってきたかについて、特に法による規制を、リスクを下げるための社会の営みと捉え、病院火災による死亡リスクを例に、法規制との関係で火災死亡リスクがこの40年間、どのように押さえられて来ているか、分析結果を紹介する。

◇地震保険とリスク評価/大門文男(損害保険料率算出機構)(9ページ)

建物などの地震による損害を補償する保険が地震保険である。現在、わが国には、住宅や家財を対象とする家計分野の地震保険と、事務所や工場などを対象とする企業分野の地震保険の2種類があるが、ここでは前者について述べる。
家計分野の地震保険は「地震保険に関する法律」に基づいて運営されており、政府も再保険を引き受けてバックアップしている。この保険制度を運営するにあたっては様々な工夫が取り入れられているとともに、保険料率の算出では地震被害予測シミュレーションによる地震リスクの評価を行っている。

◇火災保険料率とリスク評価/小池 実(損害保険料率算出機構火災・地震保険部長)(9ページ)

火災保険とは、その名のとおり火災によって生じた損害について補償する保険であるが、今日では、火災以外にもさまざまな事故よって生じた損害が補償されるようになっている。
火災保険商品にはいくつもの種類があり、それぞれ、どのような用途に用いられる物を対象とし、どのような損害が生じた場合に補償するかが異なっている。
しかし、いずれの火災保険商品においても、保険の対象とする物がどのようなリスクを抱えているかを評価することによって保険会社としてその契約を引き受けるか否かを判断し、引き受けるのであれば妥当な料率を計算するということに変わりはない。
なお、実際の火災保険商品の内容や、どのような料率を用いるかなどは、保険会社によってさまざまである。ここでは、損害保険料率算出機構が算出している参考純率や、その前提条件として作成している標準保険約款に基づいて、おおまかに説明する。

◇リスクコミュニケーションとは何か/吉川肇子(慶應義塾大学商学部助教授)(8ページ)
 リスクコミュニケーションは、1980年代から注目されるようになってきた歴史の新しいことばである。本稿では、この新しいコミュニケーションのあり方について紹介する。ここでは、4つのことを取り上げる。第1に、リスクコミュニケーションという言葉の意味を、その歴史を含めて紹介する。第2に、身近にあるリスクコミュニケーションの例を取り上げる。第3に、直接リスクコミュニケーションに関係するということではないが、筆者の専門である心理学の研究成果を紹介する。第4に、リスクコミュニケーションが今後社会の中でどのような意味を持つのかについて、最近の動向も含めて紹介する。

◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識35」
◇ダクトの維持保全について(10ページ)

 室内浮遊粒子状物質がアレルギー、シックビル症候群(SBS)や ビル病(BRI)に関与するという多くの論文が発表されているが、空調設備内部汚染と室内空気環境(IAQ)の因果関係については、現状では十分解明されているとは言いがたい。しかも、多くの空調設備、特に空調用及び排気用ダクト内の汚染度調査によれば、想像を超えた粉塵・化学物質・微生物等の存在が報告されており、人々の健康に関わる環境衛生の維持管理が予防保全を建前とするなら、急ぎ汚染防止対策が立てられるべきである。
このような状況をふまえ、本稿では室内空気環境を調和する空調システムの維持管理について、先ず空調ダクトの汚染の実態を調査や、その清浄化評価法などについ解説する。

◆防火材料等・関係団体紹介コーナー
◇安心空間を演出する”石膏ボード”/(社)石膏ボード工業会(7ページ)
せっこうボード製品(Gysum Board)が開発されてから、およそ100年が経過し、今日では世界50か国以上の国で年間55億平方米以上の製品が生産され、優れた建築材料として幅広く利用されている。わが国では、2002年に11社24工場で5.2億㎡が生産され、国内で建設される住宅を始め、事務所や商業ビルなど各種の建築物の壁や天井の内装材料として使用されている。せっこうボードは、主原料の石膏を芯材とし、その両面及び長さ方向(成形時の方向)の側面をせっこうボード用原紙で被覆した板材で、これらの製品を利用し、あらゆる建築物の耐火構造、準耐火構造、防火構造及び遮音構造などが開発されている。

◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー
◇(財)大阪建築防災センター-創立三十周年を迎えて-/中谷麻差男((財)大阪建築防災センター専務理事)(4ページ)
当センターは大阪府内の建築防災の指導、啓発と定期調(検)査業務を担う財団法人として、昭和48年12月25日に創立され、今年で30周年を迎えます。設立当初は恒常的に経営が思わしくありませんでしたが、設立趣旨に賛同を頂いた大阪府内の有力企業から長年に亘り讃助員としてご支援を受けて参りました。その後、業務が拡充され、平成2年から高さ60メートル以下の建築物の防災評定業務を、また平成7年から耐震改修の業務を担うようになり、さらに平成11年7月には大阪府知事認可第1号の指定確認検査機関になりました。幸い各業務とも順調に推移して今日に至っています。この間、お世話になった関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。

◆行政ニュース
◇改正建築基準法に基づくシックハウス対策の概要/国土交通省住宅局建築指導課(4ページ)

◆全国ネットワーク委員会ニュース
◇既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会(平成14年度第2回全体委員会開催報告)/既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会(事務局:(財)日本建築防災協会、文責:今泉 晋)(4ページ)

◆耐震診断・改修コーナー
◇全国JSCA会員を対象とする耐震診断・補強実体アンケート調査結果-民間建物も公共建物と同程度(棟数)に耐震診断・補強を行っています-/安部重孝((社)日本建築構造技術者協会(JSCA)耐震診断・補強委員会)(4ページ)

その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
mail:kenbokyo@kenchiku-bosai.or.jp

バックナンバー