(特集「建築物と防災-ホテル・旅館編-」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.302 2003/3月号
特集「建築物と防災-ホテル・旅館編-」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識33」

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◇ホテル・旅館の防災/沖塩荘一郎、塚田幹夫(東京理科大学)(5ページ)

 ホテル・旅館は、オフィスビルなど一般の建築に比べ火災その他の災害に対して多くの危険を孕んでおり、建築計画においても営業開始後の運用においても、防災は最重要課題の一つである。
建築の様々な種別の中でホテル・旅館は、災害事故の数が多く、かつ死傷者の数も多い。

これらの災害対策には、一面的ではなく総合的にシステムとして捉えてのチェックが必要であり、従業員の防災意識向上、事故後の対応、特に「事業の継続性」の視点から経営トップを巻き込んだ対応が必要である。

◇ホテル・旅館と建築基準法/樋口政志(宮城県土木部建築宅地課長)(6ページ)
 ホテル・旅館に関する建築基準法の考え方を示すことになったが、この用途のみならず、建築基準法の趣旨は全ての建築物に対してその敷地、構造等に関する最低の基準を守ってもらうことで、国民の生命、健康、財産の保護を図り、公共の福祉に資するとしている。
特に特殊建築物といわれている不特定多数の者が利用する建築物である、ホテル・旅館は火災発生の恐れや火災荷重が大きいことから特段の規制の対象となっている。
ホテル・旅館の名称は、旅館業法上の規定で、建物の構造および設備が洋式か和式かの違いだけでホテルか旅館と呼ばれており、人を宿泊させることを目的として営業している用途である。しかしながら結婚式場を備えていたり、会議場、演劇ができる舞台があったりと多様な使い方のできる複合用途を備えているものも多く大規模化、高層化の傾向にあり、規制の適用範囲が複雑に拡大してきている。
又その逆に非常にシンプルに宿泊だけで、しかも昔から営業している木造3階建ての温泉宿等もあり、古風さや風情を大切にする半面、目を覆うものもあって維持管理面に頼らざるをえないものもある。この法律は最低の基準であると言われるように、災害等が起きるたびに改正が施され基準が強化されて来ている。
最近は景気浮揚策等から緩和に向かっている傾向にあるが、ここでは、災害等を通して変遷していく建築基準法を紹介しながら、許されたページの中で主な防火避難関係規定について述べていきたい。

◇旅館・ホテルと消防法令/京都市消防局予防部予防課(5ページ)
 平成13年9月1日未明に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災は、小規模なビルでの火災であったにもかかわらず、44名もの尊い命を奪う大惨事となった。そして、この火災をきっかけとして、昨年4月に消防法が大きく改正されたところである。
今回の改正では、消防機関による措置命令等の発動要件の明確化や罰則の強化と合わせて、新たに防火対象物定期点検報告制度(平成15年10月1日施行)が創設された。この制度は、一定の防火対象物(建築物等)の管理権原者に新たに点検報告義務を課すもので、点検の結果、法令に適合している防火対象物には、その旨の表示を付すことができるというものである。
ここで、防火対象物に対する消防法令適合性の表示と言えば、まず思い浮かぶのが防火基準適合表示制度(適マーク制度)ではないだろうか。この制度は昭和55年11月に発生した栃木県川治プリンスホテル火災を契機として設けられた制度で、防火安全対策が優良な防火対象物には防火基準適合マークを表示できるものであり、今では旅館・ホテルに限らず、映画館や百貨店などでも適マークが見かけられるところである。
防火基準適合表示制度が旅館・ホテルの防火安全対策に果たしてきた役割は後述するが、今回、防火対象物定期点検報告制度が新たに創設された一方で、防火基準適合表示制度が事実上廃止されることとなったことは案外と知られていない。
今回の消防法改正により、消防行政は大きな転機を迎えたとも言われているが、防火基準適合表示制度が廃止されることによって、旅館・ホテルの防火安全対策も新たな時代を迎えると言える。本稿では、旅館ホテルに対する消防法令の概要とその変遷について紹介するとともに、今後の防火安全対策について考えてみることとする。

◇日本旅館の果たす役割/橋本幸男((社)国際観光旅館連盟専務理事)(9ページ)
 ホテル・旅館の営業は、旅館業法に基づき、厚生労働大臣の営業許可が必要となるが、日本の旅館は、現在、約64,900軒(平成13年3月現在)ある。旅館業法は衛生面を主体とした法律であるが、外国人観光客受け入れを主体とした「観光」サイドの旅館の整備も行われている。これは、国法律に基づく際観光ホテル整備法に基づく「登録制度」の適用のある政府登録国際観光旅館と一般的に称されている旅館である。
現在、登録制度の適用がある宿泊施設は、ホテル1,100軒、旅館2,000軒で3,000有余軒がある。

そして、旅館業法に基づく旅館業の団体は全国旅館生活衛生同業組合連合会が、23,000有余軒の参加があり、また、観光サイドでは(社) 国際観光旅館連盟1,600有余軒、(社) 日本観光旅館連盟5,800有余軒の参加を得て旅館業の施設の整備、品質の向上、維持又はサービスの充実、又はそのための税制上の優遇措置の確保、又は建築基準法、消防法、ハートビル法、補助犬法などの遵守事項の遵守の確保など、旅館業をめぐる課題は多いので、旅館業の健全かつ将来へ向けての普遍的発展のため懸命に団体活動を行っている状況である。

◇ホテルエドモントの防災システム/海老澤昭(能美防災(株)営業技術部課長)(5ページ)
 ホテルエドモントは、昭和60年(1985年)に開業し、東京23区の中央の位置ともいえる飯田橋にあります。ここは交通の便もよく、JR中央線と地下鉄の、合せて5つの路線が交差しています。
今春(3/27)、新館がオープンするにあたり、本館
も同時にリニューアルして、最新の防災システムを備えた新しいホテルとして生まれ変わります。
ホテルという特殊な環境において、既存システムをリニューアルしながら新設システムと統合することにより、新たな防災システムを構築しました。
ホテルエドモントに設置されている最新の防災システムを紹介します。

◇東京ドームホテルの防災計画/(株)丹下都市建築設計(8ページ)
 2000年6月にグランドオーブンした東京ドームホテルは、全天候型ドーム球場や、後楽園ゆうえんち、黄色いビルや育いビルなどからなる東京ドームシティの外堀通り側に位置し、敷地周辺には、特別名勝庭園である小石川後楽園が隣接している。
この東京ドームシティは、都市計画上、東京都の「都市計画公園」に指定されており、また、文京区の「文京区まちづくり指針」に基づき、広域スポーツ、イベント拠点、観光客の滞在拠点として位置付けられているとともに、東京都の都市防災による避難場所に指定されている。

◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識33」
◇木質系床板の施工面の維持保全等について(4)ー遮音木床・床暖房木床及び維持保全のまとめー/星 通(文部科学省公認木材加工技術士星技術士事務所)(10ページ)
 近代的な密閉型集合住宅の建設に伴い、室内の騒音対策が大きく取り上げられるようになった。室内騒音は集合住宅の隣接住戸間で発生する場合が最も深刻な問題とされている。界壁面や窓等の側面境界から入ってくるものと、上下階の住戸界床から伝播されるものとに大別される。隣接住戸間の騒音は別家族の生活騒音が発生源であるために、居住者間のトラブルの因子となることから、建物の重要な評価指標とされるようになった。一方、建物の構造によっては自分が生活騒音の発生者となり、加害者となる可能性があるために、他人ごとではないと言われる特殊な間題でもある。こうしたことから集合住宅の遮音性能は建築物評価指標の重要な項目とされる。
住宅の居住性能の向上事項として、又は、共用建築物等の室内温度環境を向上させる主要な健康的採暖方式として、電気又は温水を熱源とした床暖房が多用されるようになった。このようなことから、本稿では主として上階からの伝播される生活騒音を遮断する遮音床関連と、床暖房床関連について記載する。加えて木床の維持保全のまとめについて併記する。

◆耐震診断・耐震改修コーナー
◇「2001年改訂版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・同解説」における診断基準付則3(柱と壁が連続する場合)のSCREENにおける運用について/太田勤((株)堀江建築工学研究所)、田子茂((株)堀江建築工学研究所)(7ページ)
 2001年改訂版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・同解説(以下、診断基準と略記)が平成13年に改定され、その中でそで壁がつく柱の評価方法は全面的に見直された。改訂では反曲点高さがスパン長に対するそで壁長さの比によって連続的に変化する評価法を規定し、一義的な算定を可能にしている。強度の評価式は、そで壁を無視した場合、考慮した場合、等価に置換した場合、柱を無視した場合、について計算して最大値を与える場合を採用し、それに基づいて、柱扱い、そで壁付き柱扱い、壁扱いの判断をする。また、この分類により、靭性指標の評価を行うこととなっている。すなわち、腰壁・たれ壁が付いた場合の反曲点高さの算定方法の運用で工夫した点、また、せん断終局強度算定時の計算仮定などを解説する。

◆災害報告
◇イタリア・モリーゼ地震における小学校校舎崩壊/鍬田泰子(イタリアミラノ工科大学留学中、日本学術振興会・特別研究員、神戸大学大学院自然科学研究科博士後期課程)(4ページ)
 本地震は、現地時間の2002年10月31日木曜日の午前11時33分にイタリア半島中部のNaple(ナポリ)から80km北西のCampobasso(カンポバッソ)地域で発生した。震源地は、経度41.63N°、緯度14.77E°、震源深さ15km、Molise(モリーゼ)州の州都Campobassoの北東30kmで、Larino(ラリーノ)、Bonefro(ボネフロ)、Cosaca(コサーカ)の町の間に位置し、地震のマグニチュードはMW5.7、ML5.4、MCS震度階(Mercalli
– Cancani- Sieberg震度階、震度Ⅰ-ⅩⅡの全12震度階)で最大Ⅷであった。また、Molise州では11月1日午後4時08分にML
5.3、MCS震度階Ⅶ-Ⅷ、午後4時20分にML 4.1、MCS震度階Ⅵ、午後4時42分にML
3.4、MCS震度階Ⅴの余震が観測されている。イタリアでは、1997年にUmbria(ウンブリア)地区(イタリア中部)で11人の死者を出して以来の大きい被害をもたらした地震であった。
本地震5日前の10月26日にSicily(シチリア)島西部の火山、Mount Etna(エトナ山)で噴火が始まり、10月31日にMount
Etnaでマグニチュード3.7の地震が発生している。また、同マグニチュードでSicily島東部、Palermo(パレルモ)沖で11月1日午前にも他の地震が発生している。ローマ国立地質火山研究所(INGV、
Rome)では、これら地震はMoliseから450km離れた所で発生した火山性によるものであり、内陸部で発生した本地震とは関係がないと報告している。

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