(特集「建築物と防災-興業施設編-」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.299 2002/12月号

特集「建築物と防災-興行施設編-」 

シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識31」

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◆防災随想 
◇建築防災について/平山 博(東京都都市計画局市街地建築部建築企画課長)(1ページ)

◆特集「建築物と防災-興行施設編-」
◇最近の映画興行施設の動向~日本のシネコン事情~/阿部寅五郎((社)日本映画製作者連盟)(3ページ)
 近年の映画興行施設は大きな変貌を遂げたといえます。シネコン(シネマコンプレックス)の登場です。いただいた表題ではシネコンについて述べることになります。
日本におけるシネコンは、ワーナー・マイカル・シネマズ海老名が1993年4月オープンしたことにはじまるとされています。その後シネコンは急速に増加し、昨2001年末には全国の映画スクリーン2,585スクリーンの内シネコンは1,259スクリーンとなりました。映画館のほぼ半数がシネコンです。
その後もシネコンは増加の傾向にありますのでスクリーン数ではシネコンの比重がさらにあがっていくことになります。

◇興行施設と建築基準法/安藤 実(大阪市住宅局建築指導部審査課)(9ページ)

 建築基準法が施行されて50年余が経過し、この間多くの法改正があったが、平成10年の改正では、基準法の考え方を大きく変える改正がなされた。いわゆる性能規定化の導入で、条文も複雑かつ難解となっている。しかし、基準法の骨格が変わったわけではなく、従前と同様に行政機関や手続き、基準法の適正な執行のための制度等の規定と、建築物に必要な構造・防火・避難等に関する技術的基準と、都市計画区域及び準都市計画区域内での建築物の用途・形態等に関する規定となっている。
一方映画館の最近完成した施設をみると、「シネマコンプレックス」というような形態のものが数多く出現してきた。このいわゆる「シネコン」については、従来の大映画館のイメージから、個々の映画館の規模は100人前後から400人前後と小さいが、その内部は余裕の空間で上質の座席を設けたものが6~10館程度収容した建築物で、ゆとりある空間で多様な映画を鑑賞できることが、現代の若者が持つ趣味の多様性や、個を大事にしたいという志向にマッチしとものと思われる。
そこで、映画館を中心に建築基準法上の劇場・映画館等の規制について、大阪府の建築基準法施行条例、同細則及び劇場等に関する技術基準(府条例第23条に基づく基準で、一部を除き条例と同基準との併用はできないこととしている)を含めて逐条的に説明します。

◆さまざまな興行施設の実例
◇興行施設と消防関係法令/東京消防庁予防部予防課(8ページ)
 従来の興行施設は、単体の建築物として造られたものが多くあったが、近年、1つの興行施設ではなく、大規模な建築物に興行施設を取り込むとともに、複数の施設を設けて利用者のニーズの違いに配慮した大規模複合用途建築物が出現しています。
このため、多くの人を収容する興行施設について、消防関係法令で規制されている内容を紹介します。

◆さまざまな興行施設の実例
◇NHK大阪ホール/種村俊昭、松尾和生((株)日本設計関西支社)、浦野仁嗣((株)NTTファシリティーズ)(5ページ)
 本プロジェクトは、大阪市の「難波宮跡と大阪城公園の連続一体化構想」の一環として、NHK大阪放送会館を道路を挟んで西隣りの旧中央体育館跡地に移転し、大阪市立の博物館と一体の複合施設として計画された。
当敷地を含むこの地域では、大阪の歴史的ルーツとされている難波宮の貴重な遺構が確認されている。本計画においては、遺構の保存と活用を図りつつ21世紀の情報発信基地であるNHK大阪放送会館と、多様な芸術や文化情報を提供する約1,400席のNHK大阪ホール、大阪の歴史を語る博物館のそれぞれの機能を整備し、一体的にかつ有機的に相乗効果が発揮でき、大阪の過去と未来を結ぶ文化のシンボルとなる建物を目指している。

◆さまざまな興行施設の実例
◇府中の森芸術劇場/大本勘市(日建設計東京 設計主管)(5ページ)
府中の森芸術劇場は、1991年(平成3年)に竣工した2000席の多目的ホールと500席規模のシューボックス型音楽専用ホール及び伝統芸能専用ホールをもつ公共ホールである。これまでの公共多目的ホールから脱皮した、音響性能と舞台機能の質的向上に向けて、新しい技術を取り入れた専用ホールである。建設地は府中市の「府中基地跡地利用の整備計画」の一環として位置付けられ、既成の閑静な住宅地に近接した良好な環境の中にある。総客席数3000を超える3つのホールの主階を1階とすることにより、観客スムースな動線と安全性確保と同時に、周辺の街並みとの調和のとれた計画とした。

◆さまざまな興行施設の実例
◇さいたまスーパーアリーナ/小松康之((株)日建設計)、大原信成(大成建設(株))(6ページ)
 埼玉県の旧国鉄大宮操車場跡地(さいたま市)に2000年5月「さいたま新都心」が街開きした。国の合同庁舎・郵政庁舎をはじめとした様々な施設の中で同年9月にグランドオープンを迎えた「さいたまスーパーアリーナ」は埼玉県の中核施設として、音楽・スポーツ・展示イベント等に使用される観覧場と商業施設からなる複合施設である。周辺からはJR埼京線、京浜東北線、宇都宮線等によりアクセスが可能であり、新都心内にさいたま新都心駅も開設された。また、首都高速道路も工事中であり、東京地区をはじめとして北関東区域などからの広範なイベント集客が期待される場所である。
本施設は、業務機能中心の新都心にあって日常的なにぎわいと人々の交流の場を「けやきひろば」と一体となって創出すると共に、音楽イベント、スポーツ競技に高い性能を持って対応する専門空間を基本とし、さらに空間拡張機能により、産業イベント、アメリカンフットボールなどのフィールド競技等に対応可能な大空間としても使用できることを要求された。

◆さまざまな興行施設の実例
◇シネマコンプレックス(T・ジョイ大泉)の防災対策/井口 洋、伊東敏一((株)ティ・ジョイ企画開発部)(4ページ)

2000年5月に東映を心とする研究グループによる映画の衛星配信実験が行われたが、この結果を踏まえて、これらの企業と東急レクリエーションなど複数の興行会社が出資して、同年8月28日に世界に先駆けデジタル時代をにらんだシネマコンプレックス(複合映画館)を開発運営する「株式会社ティ・ジョイ」が設立され、日本でも本格的にデジタル配信・上映への幕が開かれた。
これは、産業界全般に進行している「IT化」「デジタル化」という大きなうねりが、我々映画業界にも避けて通れない現象として訪れた証しである。
映画上映の技術革新とシネマコンプレックスの普及加速の中、「T・ジョイ大泉」は、「株式会社ティ・ジョイ」のデジタル配信・上映対応の3番目の施設として、誕生した。
このように、映画館の根幹を成す、上映システムの技術改革は進むが、映画館としての防災対策の基本は、集客施設のそれとして、大きく変化するものではないが、ここではあらためて増加著しいシネマコンプレックスの防災対策について考えてみたい。

◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識31」
◇カーペット(じゅうたん)の維持保全/平林博幸(東リ(株)カーペット事業部技術開発部)(9ページ)
 わが国の敷物の歴史は古く、縄文時代の土器の文様からすでに織る、編む、組むといった技法があったことがわかり、植物を素材とした”こも””むしろ”のような敷物が作られていたと考えられる。仏教の伝来とともに円座が用いられるようになり、奈良時代の後期には畳へと発展していった。
一方、パイルのある敷物は、シルクロードを経て古くからペルシャ絨毯などが伝わっていたが、わが国で作られるようになったのは江戸時代に入ってからである。わが国における段通(パイル糸を手で結び付けた織物)の製法は元禄年間に九州の鍋島藩にもたらされたのが最初であり、その後、赤穂、堺、山形の各地に広がった。
平織敷物は、大正中期の堺段通不況時に、米国の見本をきっかけに生産が始まり、次第に生産量が増加し、昭和12年に日華事変が勃発するまで膨大な輸出量に達した。ここ最近、この平織敷物は、フラットな形状がうけ、ラグマット等で人気がある。

◆行政ニュース
報告:建築防災シンポジウム
歌舞伎町雑居ビル火災の教訓と建築防災・新宿区都市計画局建築課(6ページ)

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