(特集「建築物と防災-病院編-」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.297 2002/10月号

特集「建築物と防災-病院編-」 

シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識29」

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◆防災随想 
◇消防法改正の意味/小林恭一(総務省消防庁予防課長)(1ページ)

◆特集「建築物と防災-病院編-」
◇病院の防火・避難計画/北後明彦(神戸大学都市安全研究センター助教授)(6ページ)

病院には、自分一人では動けない人がたくさんいる。また、医療に使用する薬品をはじめ病院独特の危険要素がある。一方では、幸いなことに、ここのところ病院では一度に多くの人が亡くなるような火災がそれほど起きていない。このような中で、病院火災のイメージや想定すべき事態について論じ、そのうえで、病院の現状からみた防災計画上の留意点を示し、最後に、これらに対処するための病院における防災計画の基本と特殊性について述べる。

◇病院・診療所と建築基準法/鈴木繁康(東京都都市計画局市街地建築部建築企画係長)(3ページ)

 建築基準法の目的は法1条に唱われているとおり、「建築物の敷地、構造設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資すること」である。
「最低の基準」である理由は、まず、建築主の過剰な経済的な負担をさけること、また階段、廊下、構造等の安全についても建築計画が成り立たないような基準をさける意味もある。
したがって「最低の基準」とは、最先端の技術や絶対的な安全性を求めるものではなく、「公共の福祉」を実現するための必要性と社会経済との合意点であるといえる。また「公共の福祉」の水準も時代によって変化するものであり、「最低の基準」もそれに伴って変化してきている。
病院、診療所は、身体的弱者の治療を目的とする施設であり、特に患者の収容施設があるものについては、災害に見舞われた場合には過去にも多くの人的被害を出している。防災・避難計画において建築基準法の最低の基準に甘んじることなく、細心の配慮がなされなければならない。

◇病院・診療所等に係る消防関係規制/東京消防庁予防部予防課(6ページ)
 近年においては、病院・診療所等に係る火災について、新聞等で大々的に掲げられるような事例も少なくなったが、死傷者がいないまでも、病院・診療所等に係る火災が皆無ではなく、東京消防庁管内においては、未だに年間25件前後の火災が発生しているところである。過去における病院・診療所等に係る火災については、昭和35年の衣笠病院火災(神奈川県横須賀市)で死者16名、昭和45年の両毛病院火災(栃木県佐野市)で死者17名をはじめ、多くの犠牲者を出しており、その都度、消防関係規制について改正を重ねてきたところであるが、本稿では、近年における病院・診療所等に係る火災発生状況等及び現行の消防関係規制等(法令・行政指導)について紹介することとする。

◇阪神・淡路大震災における病院の被害状況と対応から/佐々木厚司(京都工芸繊維大学)(4ページ)
 1995年の阪神淡路大震災では、病院ですらかなりの被害を受け、災害時の医療救護拠点施設としての機能維持について多くの課題が指摘された。
筆者らも震災直後から、建築さらには機器まで被災の状況及び機能低下に至った被災後の診療活動についてその実態を調査。加えて関連団体の協力を得て活動、支援の諸機能に焦点を絞った被災時対応についての検討を行った経緯がある。
現在、病院そのものについては国立病院東京災害医療センターほか耐震性能を謳った事例が多く建設され、着実に耐震化へ向けた施設整備が実現しつつあるとも言える。
しかしながら、「選別triage、処置treatment、後方搬送transportation が限られた医療従事者と機器でなされること」を特徴とする災害医療であっても、今回のような「想定を越える」大地震への対応の難しさは語るに余りあると言える。
本項では既に一部報告もされている、先に述べた建築、機器被災さらには動的展開にも着目した被災実態調査に基づき、今後の大災害に備えた施設空間の在り方にも言及して考察を進めようとするものである。

◇山陰労災病院の耐震改修事例について/折見保則((株)村田相互設計)(10ページ)

 1995年1月17日早朝、マグニチュード7.2の兵庫県南部地震が発生しました。一瞬のうちに6400人余りの尊い命を奪ったこの地震によって、私たちは、改めて建物に対する耐震性の確保の重要性を認識させられました。以来、災害時の活動拠点及び避難施設として位置づけられる庁舎・病院・消防及び学校等の施設や公共性の高い建物に対して、耐震診断や耐震改修が行われております。 ここで紹介いたします山陰労災病院についても、地域の中核病院の一つとして役割を果たすべく、災害時に機能を確保し役割を全うすることが出来る施設を目標に、耐震診断と耐震改修設計を行ったものであります。

◇次世代の高度先端医療を目指すヒューマンホスピタル 安全性を追求した防災・構造計画-東大病院-/岡田新一・東京大学事務局施設部・東大新病院整備企画室・東京大学建築学科長澤研究室・岡田新一設計事務所)(4ページ)

今回のテーマは病院の防災ということで2001年9月にオープンした東大病院入院棟における防災計画の考え方と地震時の安全性の確保について紹介したい。
1000床を超える規模の入院施設であり、防災計画に当たっては新病院整備企画室、東京都建築指導課、東京消防庁、本郷消防署との長期間にわたる検討を踏まえ計画した。また、構造計画においては免震構造を含めた比較検討を行い、最終的に制震構造の採用を決定した。構造評定委員会での審査会を通じ、地震時の安全性確保にたいし十分な審査を得て計画を進めた。

◇川崎市立川崎病院/富松太基((株)日本設計情報・技術センター主管)(7ページ)
 川崎市立川崎病院は都市型の高層病棟を持ったものであり、震災時や火災時の備えが重要であった。建替えをスムーズにするための特殊な構造を採用したことから、制震装置の組み込みやコア配置に工夫が必要となった。特に避難については、ベッド搬送用エレベーターホールを加圧防煙することで長時間の煙からの安全を保つことで、バルコニーからの避難・救助に加えて、エレベーターによる避難・救助が可能となった。高齢社会を迎え、ぜひ取り入れたい技術である。

◇宮城県立こども病院(仮称)-小児医療の中核病院としての安全対策-/清水和行((株)山下設計東北支社)(5ページ)
 宮城県立こども病院(仮称)は、宮城県の総合的な小児医療システムの中核を担う高度な小児医療の専門機関として計画され、平成15年秋の完成を目指して現在工事が進められている。
敷地は、仙台市西部の広瀬川河岸段丘の上で、周囲に緑が多く残る良好な環境の中にあり、JR仙山線落合駅や東北自動車道宮城インターからのアクセスも良い位置にある。病床数160床、延べ床面積約17,000㎡の規模をもつ地上4階建ての中層の施設で、こどもの治療の場であると共に、日々成長する子どもの成育を支援する機能を充実させ、こどもと家族が安心して病気に立ち向かうなかで普通の生活が送れる空間・環境づくりを目指している。

◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識29」
◇建築物における塗装の維持・補修・改修(その5)-窯業系素地用塗装について③-/高橋孝治((社)日本塗装工業会専務理事)(6ページ)

「窯業系素地用内壁・天井塗装材料の補修・改修」
建築物は壁・屋根・床等の主部位により居住空間が構成されたその内面は内壁・天井・床があり、その表面は各種の仕上材料によって仕上げられ空間の居住性を快適性を発揮する役割を果たしている。
しかし、最近の傾向として快適性を発揮すべき各種仕上げ材が起因するシックハウジング等の問題がクローズアップし、特に内装仕上げにおける環境対応が求められている。
塗装材料においては住環境破壊するマイナスの側面と住環境を改善するプラス面を有し、これらの内装仕上げの補修・改修への適応について解説する。

◇消防法の一部を改正する法律/白水伸英(総務省消防庁予防課)(13ページ)
 平成13年9月1日の新宿区歌舞伎町ビル火災は、延べ面積500㎡程度の小規模なビルで発生したにもかかわらず、44名の尊い命を奪い、昭和57年のホテルニュージャパン火災(死者33名)を超える大惨事となった。このような大惨事となった要因としては、階段上の物品存置、避難訓練の未実施等消防法令違反があったこと等の事実が指摘されているが、この火災を踏まえ、緊急に実施された全国の小規模雑居ビルの一斉立入検査の結果、何らかの消防法令違反があるものが9割を超える等の事実が判明し、これらの問題がこのビルに特有のものではなく、同種の小規模雑居ビルにおいて共通の問題であることが明らかとなったところである。また、小規模雑居ビルのみならず、防火対象物全般において消防法令違反が横行している(防火管理者未選任約3割、消防計画未作成約4割等)状況が明らかとなった。このような防火安全対策の課題に鑑みれば、消防機関による違反是正の徹底、防火対象物の関係者による防火管理の徹底、避難・安全基準の強化を図る必要があるとの提言が消防審議会から出されたことを踏まえ、所要の法令改正を行うこととなったものである。

◇小規模ビルの避難施設設置に関する東京都建築安全条例の改正について/東京都都市計画局市街地建築部建築企画課(5ページ)
 昨年9月に発生した東京都新宿区歌舞伎町での雑居ビル火災による被害の重大性に鑑み、東京都では同種の雑居ビルの建築関係基準について防火安全対策上必要な検討を行った。その結果、小規模雑居ビルの避難安全性の向上を図るため、東京都建築安全条例を改正し、小規模で避難上特に配慮が必要な風俗関係用途等を含む建築物について、2以上の直通階段又は避難階段やバルコニーなどの避難施設の設置を義務付けることとした。改正条例は平成14年7月3日に公布され、15年1月1日に施行予定である。本稿では、本改正条例について、説明する。

その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

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