(特集「想定東海地震に備えて」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.296 2002/9月号
特集「想定東海地震に備えて」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識28」

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◆防災随想 
◇大地震との遭遇シミュレーション/岡本隆之祐((株)山下設計常務執行役員)(1ページ)

◆特集「想定東海地震に備えて」
◇安政東海地震による震災/尾池和夫(京都大学大学院理学研究科教授)(6ページ)

南海トラフの巨大地震は、東海地震、東南海地震、南海地震というように、プレート境界の一部がいろいろの組み合わせでずれて起こることが知られています。
1978年(昭和53年)に、大規模地震対策特別措置法が施行され、東海地震の想定震源をもとに被害予測などが行われました。それは、1944年の東南海地震のときに南海トラフの東端付近の東海地震の部分がすべり残っていて、近い将来に東海地震が単独で起こる可能性があるという考えにもとづくものでした。この想定震源域はその後再検討されました。その結果、想定震源をもとにした地震防災対策強化地域も西側に拡張されました。
1891年の濃尾地震によって東海地域の応力場が変化したために、1944年の東海地震では東側の方がずれなかったということにもとづいて、次の南海地震などとほぼ同時に東海地域も動くというように考えることもできます。
いずれにしても、濃尾地震の前の安政東海地震と安政南海地震は、南海トラフが一斉に動くときの一つのモデルとして、いろいろの角度から見直しておくと、次の南海トラフの活動のことを考えるときの参考になると思います。本稿では、単に安政東海地震の被害のみならず、その地震にともなう、周辺地域の地震活動の特性などを含めて述べてみたいと思います。

◇地震防災対策強化地域の見直しについて/布村明彦(内閣府参事官(地震・火山対策担当))(3ページ)
 駿河湾から四国沖(駿河トラフから南海トラフ)にかけてのプレート境界では、有史以来、マグニチュード8クラスの大規模地震が100年から150年程度の間隔で繰り返し発生している。1854年に南海トラフ沿いに発生した安政東海地震の際、駿河トラフ沿いの破壊も同時に起こったと考えられているが、前回の大規模地震である1944年の東南海地震では未破壊のまま取り残されており、駿河トラフ沿いに大規模な地震が発生する可能性が高いと考えられている。この予想される地震が「東海地震」である。東海地震対策については、昭和53年に大規模地震対策特別措置法が制定され、地震防災対策強化地域(静岡県等6県167市町村)において、観測及び測量の強化を行うとともに、地震の発生が予知された場合は内閣総理大臣が警戒宣言を発し、住民等の避難や道路交通規制、鉄道等交通機関の運行停止、百貨店等の営業停止などの地震防災応急対策を講じることにより、被害を最小限に抑えることとしてきた。また、強化地域を対象としたいわゆる地震財特法に基づき、避難地、避難路、消防用施設といった地震防災施設などの整備を重点的に推進してきた。

◇想定東海地震とその震源域の最近情勢/島崎邦彦(東京大学地震研究所教授)(6ページ)
 「東海地震」について質問されることが多くなった。古い友人の中には「何か隠しているんじゃないか」と問い詰める人もいる。報道される話題の多くは、いわゆる強化地域の見直しに関連するものであって、人為的と言って良い。裏に何かがある訳ではなく、2001年省庁再編に始まる動きにすぎない。一方、自然の動きは目が離せないところがある。そもそもなぜ「東海地震」なのかと言えば、1944年の地震(東南海地震)の後始末が終わっていないからである。予知できるかどうかは、起こってみなければわからないので、突発する場合の用意も必要だ。もう起こらないという説もあるが、それはちょっと気が早いのではないか。今後10年も起こらなければ、後始末無しで、次の段階へ進むことを考えなければいけないだろう。

◇想定東海地震による地震動と建物被害/翠川三郎(東京工業大学教授)(4ページ)
 中央防災会議では、最新の調査研究成果に基づいて想定東海地震の断層モデルを見直し、強震動の分布を計算し、地震防災対策強化地域の見直しを行った。強震動の計算には従来用いられてきた経験的手法だけでなく理論的手法も用いられた。これら複数の手法や複数の震源パラメータによる結果を重ね合わせたものから、地震防災対策強化地域の検討の基とする想定震度分布が示された。ここでは、この強震動の計算方法や手順について説明し、この地震によって生ずる恐れのある建物被害についても簡単に触れてみたい。

◇津波の想定/河田惠昭(京都大学防災研究所巨大災害研究センター長・教授)(10ページ)
 東海地震(ここでは想定東海地震を便宜的にこのように呼ぶ)が発生したとき、どのような津波が沿岸各地を襲い、その被害はどの程度であり、その対策はどうなっているのであろうか。これらを明らかにすることが本文の目的である。それらを理解するためには、津波とは一体どのような性質を持っているのかをまず知る必要がある。
地震防災対策強化地域に指定された自治体の対応
◇愛知県での取り組み/松原多七(愛知県建設部建築指導課長)(4ページ)
 愛知県は、地震活動の盛んなわが国の中でも有数の地震県であり、ここ百数十年の間にも、1891年の濃尾地震、1944年の東南海地震、1945年の三河自身と、死者千人規模以上の地震を3回も経験しています。
地震防災対策強化地域に指定された自治体の対応
◇名古屋市での取り組み/名古屋市消防局防災部防災室(7ページ)
 東海地震の震源域の見直しを受けて、本年4月24日に名古屋市が「地震防災対策強化地域」に指定されました。名古屋市では、庁内に「地震防災対策推進会議」を設置し、強化地域に指定されたことに伴う課題を整理するとともに、地震防災強化計画の策定に当たって、関係機関等との調整、地震防災対策警戒本部の設置等の事務を進めているところです。
こうしたことから、本年秋頃を目処に地震防災強化計画の策定を進めるとともに、実施計画の着実な実施に向けた現在までの名古屋市の取組み状況について説明します。
地震防災対策強化地域に指定された自治体の対応
◇三重県での取り組み/岡村佳則(三重県県土整備部建築チーム主査)(5ページ)
 東海地震の震源域の見直しにより、地震防災対策強化地域(以下、強化地域という。)の指定を18市町村が受けたことにより、地震宅策アクションプログラムの作成、耐震性能の劣る建築物の耐震診断・改修の促進に取り組んでいます。また、現在、耐震化を行っている三重県本庁舎の免震化工事について紹介します。

◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識28」
◇木質系床板の施工床面の維持保全等について(1)ー木質系床板の特徴と変遷ー/星 通(文部科学省公認 木材加工技術士 星技術士事務所)(6ページ)
 一般市場に流通している床仕上げ材料には、無機質系材料、合成樹脂系材料、木質系材料、塗床及びカーペット類等多くの製品がある。これらの材料は建物の使用目的、床面の形状や構成、内装材料との調和等に適合した床材が選択・使用されている現状にある。床材性能で主要なものは、建物の使用目的に合った構造材としての支持性能と、使用目的適合性の面から表面性能とされている。床組をした根太の上に、木質系床板を施工して構成した床面は、床面として受ける荷重に耐える強度を持ち、表面性能は天然の材料であることから、使用目的に適合する選択肢の範囲が広く、居住性が良いことで古くから使用されてきたことは周知の通りである。この木質系床材料についての沿革・変遷を始め、その関連事項を順次紹介する。なお、本稿における木質系床板とは、建物内の床材として使用される、2次加工仕上げをした床板であり、畳下床やカーペット・クッションシート類等の下地床に使用される床材は含めない。複合グロックの形状は、同図の複合フローリングを303㎜角等の形としたものである。
◇既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会 平成14年度第1回全体委員会開催報告/全国ネットワーク委員会事務局:(財)日本建築防災協会(文責 今泉晋)(13ページ)

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