(特集「インテリジェント防災」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.293 2002/6月号
特集「インテリジェント防災」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識25」

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◆防災随想 
◇耐震診断に思う/秋山友昭((株)東京ソイルリサーチ構造調査設計事業部長)(1ページ)

◆特集「インテリジェント防災」
◇防災管理のスマート化-安全から安全の世紀へ-/菅原進一(東京大学大学院工学系研究科教授)(8ページ)
 以前、インテリジェントビルという言葉が好んで用いられたが、米国ではスマートビルと称していた。コンピューターの情報処理量が飛躍的に増えつつあった時期で、ビルの業務、環境、警備、防災などを統括管理するシステムが新築ビルに続々採用され、これらのビルのファサードは、ハイテク時代を指向するかのように総ガラス張りやメタリック調に仕上げられていた。システムが高度の機能を有していることも確かだが、そのコンセプトで印象に残っているビルが幾つかあった。あるビルは、玄関を入ると大きな曲面の案内カウンターがあり、そこの案内係は防災要員も兼ねていた。カウンターの下には防災監視盤がカーブして並び、点滅する赤・青・黄色などのライトやITVカメラからの切り替わり画像が受付け背面の鏡面に映し出されていて侵入者への無言の圧力となっていた。しかし、確信犯に対しては無防備この上ないため、地階にメインの管理センタ―があり何重ものチェックで入れる仕組みになっていて、核攻撃でも数ヶ月は篭城できる生活装備を施しているとのことであった。政治や社会の情勢を人間心理の面から分析・総合化して防災センターづくりに活用していることに感銘した。インテリジェント化も同様でハードな設備・機器を単に羅列したものでは宝の持ち腐れになる。本特集でも幾つかの事例が紹介されているように、建築基準法の性能規定化が軌道に乗りつつあり、建築物の耐火性能および避難安全性能の検証結果が大臣認定や主事確認・消防同意で生かされ、設定シナリオに基づき火災安全が確認された建築物が登場するようになった。(財)日本建築センターでは大臣認定向けの「建築防災性能評価」を実施している。また、「消し」側の諸規定を定めている消防組織法・消防法が仕様規定に留まっているため、これを性能規定に近づける試みとして、(財)日本消防設備安全センターが「消防防災システム評価」、(社)東京消防設備保守協会が「防災センター評価」を実施している。損害保険分野では、これらの評価書を参考に申請建築物の保険料金の割引率を決める例も出てきた。ただし、人間、防災設備・機器および建築空間を相関させた火災安全システムのスマート化は、これからが本番である。

◇大規模建築物等の総合消防防災システム設計/鳴澤英司、遠藤弘一((株)防災コンサルタンツ)(7ページ)
 近年,再開発地域の建物は、大規模、高層化という建築構造的な要件および複合用途などが混在した多様な利用形態の要件により、防災上の危険性が増加している。
このため、このような防火対象物は、単に法令の規定によるのみでは適切な防火安全対策が確保されないので、関係者自らより高い安全性の確保を求める総合消防防災システムを構築し設備する必要が生じてきている。
高度化された消防防災システムを構築することを「消防防災システムのインテリジェント化」と称し、消防庁は昭和61年に推進要綱を制定し、システム評価制度を活用して普及に努めてきた。
平成14年3月末現在全国で225件の消防防災システム評価物件があり、そのうち当社が83件の開発・設計に携わった経験をもとに事例を含めて高層・大規模な建築物に構築する総合消防防災システム設計について紹介する。

◇トリトン(晴海)の防災/森山修治((株)日建設計設備設計室)(7ページ)
 晴海アイランドトリトンスクエアは、敷地面積約8ha、延床面積67万㎡におよぶ都心の大規模再開発である。計画は1984年にスタートし、数回にわたる事業の見直しを経て2001年3月に完成した。敷地は大きく三つの街区に分かれる。開発のテーマである「職・住・遊の融合」にもとづき、全体を業務ゾーン、複合ゾーン、住宅ゾーンに分け、業務・住宅ゾーンを高密度に、業務・住宅の間にある複合ゾーンを低密度とすることで、明快なゾーニングとメリハリのあるボリューム配置としている
「職」の空間である業務ゾーンは、3棟の超高層トリプルタワーを中心に構成され、地域のランドマークとなっている。3棟の中心には、オフィスゾーン共通のエントランス空間として、グランドロビーを配置している。
「遊」の空間である複合ゾーンは、運河に面したテラスを囲む飲食店舗・物販店舗・ショールームなどで構成され、地域のにぎわいの中心となっている。内部にはアトリウムやモール空間を設け、回遊性の高い導線計画としている。
「住」の空間である住宅ゾーンは、約1,800戸の中高層共同住宅を中心に構成され、日影とプライバシーを考慮した配置計画としている。
街区全体を連続した一体的な空間とするため、各街区を人工地盤と歩行者デッキでつないでいる。人工地盤上には広場や公園を設け、歩行者専用の安全で快適な空間としている。1階レベルは駐車場やサービス導線とし、歩車分離をはかっている
三つの街区のうち最も大きい第1街区は、業務・商業施設を中心とした、延床面積約527,000㎡の一建築物である。以後、第1街区の業務・商業ゾーンについて記すこととする

◇渋谷マークシティの防災方針/石黒文義((株)日本設計環境設備設計部主管)(10ページ)
 本計画は公共交通施設(京王・井の頭線渋谷駅/営団・銀座線渋谷車両基地等鉄道施設)を2・3階に設け、JR渋谷駅との連絡通路により、多量の人の流動線を容易にならしめている。又、その上層部には、遊歩道階、バスレーン階を経て、ホテル棟及び駐車場、オフィス棟を重ね合わせている。尚、鉄道施設の下層部には、商業店舗、共用機械室及び地域冷暖房(DHC)施設等を配している。従って、本計画は重層的構成の施設ではあるが、不特定多数の用に供する施設や、人口密度の高い施設ほど公道に近接した低層部に位置し、特定者並びに施設管理の良好なオフィス・ホテルの施設を高層棟部分に配した、分かりやすい用途構成の形状である。

◇JRセントラルタワーズの防災/笠原勲、榎並顕、荒幡芳雄、高橋一郎(体制建設(株))、倉岡誠一(ジェイアールセントラルビル(株))(6ページ)
 1999年12月名古屋駅上に名古屋地区の新しいランドマークとなるJRセントラルタワーズが竣工した。本建物は、低層階に百貨店、レストラン街・多目的ホール、駐車場、地域冷暖房施設、駅施設、2本の高層棟にはオフイス、展望台、ホテルが入居する大規模複合超高層建築物である。計画地はJRを始めとして私鉄、地下鉄、バスなどの公共交通機関が集中交差し、約110万人の乗降客が往来する環境下にある。高密度の都市の中で、限られた敷地の有効利用により一大交通拠点としての総合ターミナル機能と、付加価値の高い優れた都市機能とを融合し、新しい名古屋の都市的核として、利便性・効率性のみならず、快適性・安全性をも加味した新しい時代を感じさせる魅力のある空間としての「立体都市」を形成することを基本コンセブトにしている。本報告では避難安全性の確保から計画された防災計画と、消防防災システムについて紹介する。

◆特集「新宿歌舞伎町明星56ビル火災」(その2)
◇東京都における小規模雑居ビルの防災安全対策/東京都都市計画局市街地建築部建築企画課(12ページ)
 平成13年9月1日、10月29日に相次いで発生した小規模雑居ビル火災による被害の重大性に鑑み、東京都では、緊急安全点検の実施や自己安全点検の要請、「雑居ビルの建築基準等検討委員会」及び「飲食店営業許可と建築確認に関する検討会」の設置による検討、さらには、関係行政機関における雑居ビルの安全を図るための連携方策についての検討など、様々な対応を行ってきた。
これらの対応については、本機関誌「2002年4月号」にも掲載させて頂いているのでご覧頂きたい。
さて、本文では、東京都の雑居ビルに対する防火安全対策について概説することとする。
◇歌舞伎町明星56ビル火災への新宿区の対応/小野幹雄(新宿区都市計画部建築課長)(3ページ)
 新宿区歌舞伎町の明星56ビルで、死者44人の犠牲者を出す火災が発生してから8か月が経過した。新宿区都市計画部建築課は、明星56ビルの状況、違反事項について調査、所有者を指導し、この3月には新宿区で約20年ぶりの措置命令を執行した。また、この間、類似する小規模雑居ビル392件の緊急安全点検を行い、改善指導を実施してきた。
本稿では、明星56ビルの事故後の対応、小規模雑居ビルの緊急安全点検と改善指導について概説する。

◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識25」
◇建築物における塗装の維持・補修・改修(その3)-窯業系素地用塗装について1-/高橋孝治((社)日本塗装工業会専務理事)(4ページ)
「窯業系素地用塗装について」
建築物を構成している各部位に用いる素材はセメントを主成分とする窯業系が主流であり、それらの内壁・外壁.床.等における表面を塗装する目的は美装を中心とする美的表現能力が要求されてきた。
しかし、近年は窯業系素地の代表であるコンクリートがコンクリートクライシスの社会問題が発生するほど耐久性問題が表面化してからは、それらを保護する機能が要求され、重要な役割を果たしている。

◆行政ニュース
◇建築物の耐震診断と耐震改修に係る国の支援制度の概要-平成14年度からは新たに住宅の耐震改修に対しても補助-/国土交通省住宅局建築物防災対策室(10ページ)
 平成7年に発生した阪神・淡路大震災においては、建築物に多数の被害が生じ、多くの貴重な人命が失われたことから、地震に対する建築物の安全性の向上を図ることの重要性が強く認識された。
その後、耐震性の劣る既存の建築物の耐震診断・耐震改修を促進させるため、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が制定されるとともに、国土交通省としても、耐震診断及び耐震改修に係る補助や融資等、各種支援制度を整備し、その普及・啓発、利用促進に努めてきた。
しかし、公共建築物等に比べて、住宅の耐震改修は充分に進捗しているとはいえない現状にあることから、平成14年度からは、新たに、密集住宅市街地における住宅の耐震改修に対する補助制度を創設し、同地域に存する耐震性に問題のある住宅の耐震改修の促進を図ることとした。
本稿では、この新たな補助制度も含め、建築物の耐震診断、耐震改修の支援制度について解説する。

◇「建築物の耐震診断と改修の補助制度の概要」/小澤徹(静岡県都市住宅部建築安全推進室主幹)、鈴木義彦(静岡県都市住宅部建築安全推進室主査)(11ページ)
 静岡県は、昭和51年の東海地震説の発表以来、地震対策を県政の最重要課題として取組んできており、阪神・淡路大震災での、大地震の脅威の再認識や教訓を基に、平成7年、地震対策を見直す行動計画をまとめ、緊急輸送路、避難路、避難地等沿いの建築物やブロック塀の耐震化等のため、補助制度を創設するなど対策を進めてきている。
また、家屋の倒壊等による死者をゼロに近づけるため、平成13年度に「プロジェクトTOUKAI(東海・倒壊)―0」を立上げ、都道府県レベルでは全国で初めての住宅の耐震補強の補助制度や、建替する場合の利子補給制度の優遇措置を創設するなど、耐震診断と耐震改修の促進を図っている。

◇「建築物の耐震診断と改修の補助制度の概要-横浜市における取り組み-」/下村晶(横浜市建築局民間住宅課)(11ページ)

 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災の犠牲者の約90%が住宅の倒壊等による圧死であった。このことから,横浜市では大地震が発生した場合に,老朽化した木造住宅の倒壊から市民の生命や財産を守ることや倒壊による交通阻害など二次的な災害を未然に防ぐため木造住宅の耐震性能を強化することを目的として,無料耐震診断の実施や耐震改修工事への補助,無利子融資を実施している。横浜市の木造住宅の地震対策については,次の図の通り,3つの事業から構成されている。

◇「建築物の耐震診断と改修の補助制度の概要-豊島区における取り組み-」/鯉淵清(豊島区都市整備部建築指導課)(11ページ)
 豊島区では木造住宅の居住者又は所有者を対象とした、簡易耐震診断を行っています。
診断する建築物は昭和56年以前に建てられた木造在来工法2階建住宅で、図面が必要です。
図面をお持ちでない方でも、高齢者・障害をお持ちの方には図面作成についての全額補助の制度があります。ただし、社宅等の給与住宅・共同住宅は補助の対象となりません。
また、簡易診断を受けた方でさらに詳細な耐震診断を受けたい方には、詳細診断にかかる診断費の2/3の額を補助しています。
尚、居住者と建築物の所有者が異なる場合は相手方の承諾を得ていただくこととしています。

◆ぼうさいさろん
◇自然災害を切手で語る(その10)/登坂宏(日本郵趣協会正会員)(3ページ)

その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
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電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
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