(特集「新宿歌舞伎町明星56ビル火災」)

当協会の機関誌「建築防災」(月刊)の紹介
No.291 2002/4月号
特集「新宿歌舞伎町明星56ビル火災」 
シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識23」

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◆防災随想 
◇火災と民活/吉田正友((財)日本建築総合試験所建築物理部長)(1ページ)

◆特集「新宿歌舞伎町明星56ビル火災」
◇雑居ビル火災の教え/菅原進一(東京大学大学院工学系研究科教授)(11ページ)
 20世紀の安全に関する文理的精華は、産業機械・工業製品・情報機器・エネルギー・交通機関・都市施設などの安全性を高めるために実効性を発揮して来た。しかし、WTC(世界貿易センタービル)のテロによる崩壊、原子力事故などの実態をみると、悪意による社会安全システムの破壊や創造性を欠いたマニュアルに起因する事故など、人間の本性(人性)に関わる原因がそれらの背景にあり、安全神話や安全第一という善意に基づく20世紀型の発想が見事に切り崩されつつあることが分かる。こうした事実は、人的要件を工学へ導入するための諸手法を再構築すべきことを示唆している。また、より根源的なことは、自由な精神のもとに真理を探究し発明・発見した成果が、生みの親である人類自身を危機に陥れ、それを防ぐ手立てを持ってないことである。つまり、成果の利用に関する倫理的規範が人の琴線に触れる確信として未だ明示されていないのである。生死や善悪は人間の本性に付随し分離できないから、善意により組み立てられた社会安全システムが破壊される可能性は否定できない。したがって、様々な破壊が究極の人類の破滅を招かないように、ある程度の破壊を容認し創成とのバランスを図ることも大切であろう。しかし、分離・分析を本質に持つ近代科学の下では、創成・成功と破壊・失敗とは別世界として扱われ、後者はとくに悪・不都合として忌み嫌われ忘却のかなたに押しやられる。その結果、安全の神話に代表される絶対的安全が人の認知域を支配し、「安全は死に易い」のである。最後の審判で人類が救われるには、残存リスクを見極めながら安全の構築に努めることであり、その一翼を担うことが安全工学の役目である。自然を回復させ生態系を保守することが人類のため、さらには人類の広い意味での仲間である生物を存続させるために不可欠であるが、科学技術の成果を還元する場合の残存リスクの許容限度に関する価値判断の根拠は未だ確立していない。遺伝子組み換えによる許容リスクはどれ程なのか…・。文理統括の視点で俯瞰的に判断すべき時が来たようである。「お前たちが滅んでも地球は永遠である。」と、アダムとイヴを創った神が自嘲気味に語り、仏陀やアッラーも同意見とすれば人類は滅亡する。

◇明星56ビル火災の概要/東京消防庁予防課(7ページ)
 平成13年9月1日、週末の客で賑わう東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビルにおいて火災が発生し、44名が死亡するという未曾有の大惨事となった。
ここでは、「小規模雑居ビルの火災安全対策に係る報告書(平成13年11月)(小規模雑居ビルの火災安全対策検討委員会、委員長:菅原進一東京大学大学院教授、事務局:東京消防庁予防課)を基に、本火災の概要について、当該建物の建築経過等を含め、以下に紹介することとする。

◇明星56ビル火災を踏まえた小規模雑居ビルの火災安全対策/東京消防庁予防課(8ページ)
 平成13年9月1日未明、週末の多くの客で賑わう新宿区歌舞伎町雑居ビルにおいて発生した火災は、死者44名を出すという未曾有の大惨事となった。
東京消防庁管内において、過去に多くの死者を出した火災としては、ホテルニュージャパン火災(死者33名)、特別養護老人ホーム松寿園火災(死者17名)等があるが、本火災による死者はこれらの火災を上回り、戦後最大となった。
特にこの火災は、地下2階・地上5階建て、延べ面積が516㎡という小規模なビル火災であったにもかかわらず、44名もの死者が発生したことにおいて、都内に数多く存在する、小規模の複合用途防火対象物が内在する危険性を浮き彫りにした。
東京消防庁では、この火災を契機に、今後、同種小規模雑居ビルの火災安全対策を万全とする施策に反映させるため、広く有識者の意見・提言等を踏まえる必要性から、学識経験者・関係行政機関の職員等で構成される、「小規模雑居ビルの火災安全対策委員会」(委員長:菅原進一東京大学大学院教授、事務局:東京消防庁予防課)を設置した。
第1回委員会を平成13年9月13日(木)に開催し、その後審議・検討を重ね、平成13年11月19日(月)の第4回(最終)委員会で「小規模雑居ビルの火災安全対策に係る報告書」を取りまとめた。ここでは同報告書を基に、小規模雑居ビルの火災安全対策について紹介するとともに、東京消防庁が行った緊急査察の実施状況及び同報告書の提言事項等を踏まえた対応について述べることにする。

◇新宿雑居ビル火災における東京都の対応について/東京都都市計画局建築指導部調査課課(5ページ)
 平成13年9月1日(土)未明に発生した雑居ビル火災の当日は、東京都主催の平成13年度東京都総合防災訓練(ビッグレスキュー東京2001 首都を救え)実施日で、当係の業務である「木造建築物の簡易酎震診断」をパソコンシステムにて行うため、調布基地跡地会場に職員を派遣していた。
大惨事を受け、訓練終了後及び翌2日(日)に職場にて、都市計画局長をはじめ建築指導部長、課長等により東京都の対応について協議を行い、緊急安全点検を実施することとした。
本文では、点検結果、今後の対応等について概説することとする。

◇小規模雑居ビルと建築防火安全対策/青木浩(国土交通省住宅局建築指導課建築物防災対策室防災係長)(6ページ)
 平成13年9月1日に発生した新宿区歌舞伎町「明星ビル」火災においては、小規模な建築物火災であったにもかかわらず多くの犠牲者が発生した。
建築物の防火安全については、これまでにも数多くの火災の経験を踏まえ、様々な対策が講じられてきたところであるが、今回、このような小規模雑居ビルにおいて大きな被害が生じたことを教訓として、国土交通省では、9月12日に「小規模雑居ビルの建築防火安全対策検討委員会」を設置し、小規模雑居ビルについて、法令遵守を担保するための方策や防火基準等、今後の建築防火安全対策について検討を行った。
火災の概要と法令適合状況、本火災を契機として全国で実施された査察の結果及び委員会における検討の概要等について述べる。

◇小規模雑居ビルと防火安全対策/木原正則(総務省消防庁予防課企画官)(5ページ)
 平成13年9月1日の新宿区歌舞伎町ビル火災は、延べ面積500㎡程度の小規模なビルで発生したにもかかわらず、44名の尊い命を奪い、昭和57年のホテル・ニュージャパン火災(死者33名)を超える大惨事となった。
本火災の重大性に鑑み、消防庁では、小規模雑居ビルの一斉点検を行うとともに、「小規模雑居ビル火災緊急対策検討委員会」(委員長消防庁次長)を設置し、小規模雑居ビルの防火安全対策について検討することとした。

◇定期調査報告制度について/(財)日本建築防災事務局(4ページ)
 建築物は利用している間に劣化したり、増築・改築・模様替などすることによって、完成した当時の状態を維持し続けることは少ないものです。このような劣化や変更等に対して、建築物の所有者、管理者等は建築物に要求される性能水準を維持し、常時適法な状態に保つように、維持保全に努めなければなりません。
この貴任は、建築物の所有者、管理者にあり、建築基準法第8条第1項で、「建築物の所有者、管理者又は所有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するよう努めなければならない。」と規定しています。
ここでは特殊建築物の定期調査報告について概要を紹介いたします。

◇小規模雑居ビルの過去の火災事例/東京消防庁予防課(24ページ)
 小規模雑居ビルの過去の火災事例として、「小規模雑居ビルの火災安全対策に係る報告書(平成13年11月)」(小規模雑居ビルの火災安全対策検討委員会、委員長:菅原進一東京大学大学院教授)を基に、①過去の類似火災事例(国内の12事例)、及び多数の死者が発生した雑居ビル火災の事例(韓国仁川広域市の1事例)の計13事例について、紹介することとする。

◆シリーズ「建築保全のための建築物調査の基礎知識23」
◇建築物における塗装の維持・補修・改修(その1)/高橋孝治((社)日本塗装工業会専務理事)(7ページ)
 近年、人間の生活空間を構成する建築は住宅を始めその数においては過飽和となってきており、まさしくストック建築時代に対する建築物のリニューアルヘの新技術の開発・限られた数の新建築物建設に対する質的向上へ性能発注への企画設計の創造性、施工の可能性の拡大等への開発が求められる時代に突入している。
このような背景下において、建築物の皮膚部分とも言える部門を担当する塗装は建築物を表層部分から美装と保護という二大目的の達成のほかに、最近は防水・断熱・耐火・抗菌・汚染防止等の新しい機能を付加させる貴重な建築材料として存在がクローズアップしてきている。
これらにより活用されている建築塗装の内容が調査・維持保全において環境対応を合めた効果的に役立つ様な解説をしたい。

◆ぼうさいさろん
◇自然災害を切手で語る(その8)/登坂宏(日本郵趣協会正会員)(2ページ)
◆行政ニュース
◇地下空間における浸水対策ガイドラインについて(6ページ)
◇「2001年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・耐震改修設計指針講習会」質問・回答集(1)(12ページ)
◆新着ホームページコーナー
◇我が家の耐震チェック①(1ページ)
◇こうして強くしましょうあなたの住まい戸建て住宅耐震改修の工法・事例②(1ページ)
◆建築基準法第12条第1項及び同施行規則第4条の20に基づく特殊建築物等調査資格者
◇平成14年2月22日・3月29日(認定書交付)(4ページ)

その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
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