(特集「20世紀の建築防災-災害と技術(10)」)

月刊「建築防災」
No.268 2000/5月号(特集「20世紀の建築防災-災害と技術(10)」)

※執筆者名の後の( )内の数字はその記事のページ数を表す

◆防災随想 コンピューターの中の建物の性能/山口修由(建設省建築研究所第三研究部主任研究員)(1ページ)
 阪神大震災では、数多くの建物が倒壌し、中でも木造住宅の倒壊が多かったことは、大きな特徴であった。木造住宅の被害が多かった原因として、当初、木造住宅は構造計算をされていないからではないかとの指摘を数多く受けた。なるほど、普通の規模の木造住宅では、いわゆる構造計算はされていない。しかし、壁量規定という、木造建築用の簡易で安価なチェック方法は、なぜ今回機能しなかったのであろうか。
 阪神大震災の地震被害調査に参加してみると、構造計算をされている鉄骨造や鉄筋コンクリート造も、構造計算されていない木造も、いずれも大きな被害を受けていた。被害調査の結果、被害を受けた木造建物の大部分では、壁量規程で要求されている必要壁量が不足していたようである。現実の木造住宅では、構造計算どころか、壁量規程による簡易なチェックでさえも十分に活用されていなかったのである。被害の本質は、壁量規程と構造計算の違いよりも、規程が活かされていなかったことであると思われた。

◆特集「20世紀の建築防災-災害と技術(10)」

◇膜構造技術の発展と防災/石井一夫(横浜国立大学名誉教授)(6ページ)
 2000年グリニッチ(イギリス)に、世界最大の膜構造によるミレニアムドームが完成した。スパン320m,8万㎡の空間はイギリスのテクノロジーを世界に示す目的が合まれる多目的の空間で、博覧会・展示会場を一つの屋根のなかに収めた。屋根面は、ふっ素樹脂でコーティングされたガラス繊維織布が構造用膜材料として使われている。
 2002年Wカップサッカーはそのスタジアムが日本で、10棟、韓国で10棟建設されるが、スタンドは屋根を付けなければならない。このスタンド屋根は、両国合わせて11棟が膜構造となる。アメリカでは、デンバー空港のホール4万㎡が、膜構造として完成した。明るい空間をもつ空港アトリウムとなった。
 このように、膜構造が世界的に様々な用途の大空間屋根に使われている状態で、膜構造ゆえの防災面での配慮も、各国でなされるようになっている。
 ここでは、歴史的にまだ新しい建築構造としての膜構造のこれまでの防災上の問題と技術を取り上げ、その課題と今後の展望をみる。

◇同潤会アパートの防災性/大月敏雄(東京理科大学工学部建築学科講師)(6ページ)

 同潤会アパートの中では、東京・青山の表参道沿いに建設された「青山アパート」が恐らく一番有名であろう。このアパートは、現在各所に服飾店が入居する、古ぼけて壁面にツタの生い茂った建物で、よくテレビ・ファッション誌などに登場するのでご存じの方も多かろう。また代官山アパート(再開発済み)や江戸川アパート(現存)も有名でる。同潤会アパートは、関東大震災の復興住宅として東京・横浜に16ヵ所建設され、建設当初から現在に至るまで、様々に評価され続けている。
 ここでは、こうした同潤会アパートの防災性に焦点を当て、これらのアパート群がたどった道のりと、いかに防災性を発揮したか、あるいはしなかったということについて検証してみることにする。

◇東京の消防119年のあゆみを顧みる/白井和雄(元消防博物館館長)(6ページ)

 東京の消防は、昨年の平成11年6月1日に、現在の東京消防庁の前身である「消防本部」が、内務省警視局のもとに創設されてから「119年」という記念すべき年を迎えた。
 この119年に、社会・経済・産業・文化などの発展に伴い、消防が対象としている都市構造や建築様式などは大きく変革し、これにより火災などの発生要因もいろいろと変化している。
 そこで本稿では、社会や災害の変革などに合わせて取入れた消防制度や、関東大震災・空襲火災など、社会的に話題となった火災などについて紹介することとした。

◇建築防災とガラス/吉田倬郎(工学院大学建築学科教授)(6ページ)

 ガラスは、コンクリートと鋼とともに、近代建築を成立させた基幹材料とされている。コンクリートと鋼が主要構造材料であるとともに、構造以外の各部にも多用されているのに対し、ガラスの用途は、主として開口部に限定されている。にもかかわらず、コンクリートと鋼に並びたてられているのは、工業製品として大量生産され、透明で耐久性に優れている点で、他の材料でこれに及ぶものがないことによっているといえる。しかしながらガラスには、割れるという弱点がある。また、割れた状態が、多くの場合鋭利な刃物に近いものとなって、きわめて危険である。これを避けるべく、ガラス自体の開発改良、ガラスの取り付け方の開発改良が盛んに行われてきている。ところがその一方では、建築における、高層化、大開口部や新たなデザインの追及がなされるなかで、ガラスの条件はますます過酷になってきている。本稿では、建築における様々な条件の中でのガラスの安全性確保に関し、基本的な考え方から、地震被害の事例に基づく考察について述べたい。また、従来は、ガラスの弱点のひとつとされていた防火性について、近年防火ガラスが実用化されたことによって、逆に火災時の非難安全性確保にもささやかに貢献できるようになっていることにも触れたい。なお、建築に供されるガラスの種類の中で、本稿ではおもに板ガラスとその加工品を中心に述べたい。

◆行政ニュース

◇地下室の洪水時の危険について/鈴木恵子(建設省住宅局建築物防災対策室)(4ページ)
 都市部では、地下鉄、地下街、ビルの地下階などの地下空間は日常に欠かせない生活の場となっている。また戸建住宅でも時折地下階や半地下階をもつものを見かけることもあるし、ドライエリアを掘って地下室を設けた分譲マンションの折り込みチラシを見ることもある。地下室は確かに魅力的であるが、メリットばかりが1人歩きしすぎて、地下室は浸水するということが忘れられてはいないだろうか。
 昨年(平成11年)の梅雨期の豪雨で、福岡駅前のオフィス街と東京都新宿区という普段は洪水被害とは無縁と思われるような都市部において、建築物の地下階に洪水が流入したことにより、それぞれ1名の方が亡くなるという事故が相次いで発生した。洪水により地下室で死者が発生するという事故は、少なくとも建設省が把握している範囲では初めてのケースであり、対策の必要性を強く認識した。このため、建設省では地下室の洪水時の危険性について啓発を目的としたチラシを緊急に作成し配布するとともに、洪水が建築物の地下に流入した場合に起きる現象について検討を行った。
 また、昨年8月末には、国土庁、運輸省、消防庁、建設省の4省庁が合同で対策を取りまとめ、「地下空間における緊急的な浸水対策の実施について」を発表した(http://www.moc.go.jp/river/press/99083_k.html)。
ここでは、これらの経緯と検討の緒果明らかになった地下室の洪水時の危険と対策についてご紹介する。

◆全国ネットワーク委員会ニュース

◇既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会平成11年度第2回全体委員会開催報告(8ページ)

◆建築防火材料コーナー

◇防火壁装材料/芦田恵袈雄(壁装材料協会事務局長)(5ページ)
 防火壁装材料は、紙、織物、ビニル、その他鉱物質や木などを素材にして作られた各種の壁紙が、不燃・準不燃材料の下地基材と張り合わせた状態で防火材料に認定されているもので、品目名、認定番号、防火性能は次のとおりです。

◆定期調査報告関係地域法人紹介コーナー

◇(財)兵庫県住宅建築総合センター(4ページ)
 財団法人兵庫県住宅建築総合センター(以下、「住建センター」という。)は、良好な住宅の建設を推進するとともに建設業界及び関係業界の健全な振興を図り、県民の福祉の向上に寄与することを目的として昭和50年に設立され、その後、時代の要請に応えて事業の拡充を図りつつ、今年25周年を迎えました。
 住建センターの事業は、住宅性能保証、住宅展示、阪神・淡路大震災被災住宅再建のための利子補給事業や総合住宅相談などの住宅に関する事業と特殊建築物等の定期報告、既存建築物の耐震診断改修計画評価、県営住宅の工事監理、建築基準法に基づく確認検査などの建築に関する事業の2本柱となっています。

◆「建築防災」総目次(1983年1月~1984年12月)(6ページ)


その他詳細につきましては、下記事務局までお問い合わせ下さい。

財団法人 日本建築防災協会 機関誌係
東京都港区虎ノ門2-3-20 虎ノ門YHKビル8階
電話:03-5512-6451 FAX:03-5512-6455
mail:kenbokyo@kenchiku-bosai.or.jp

バックナンバー